オバケッタに出会ってきた(ゆる座談会その後)
信州松本では2021年10月8日(金)から17日(日)まで「FESTA松本2021」が行われています。コロナ禍の中での演劇的フェスティバル、期間中は30個あるプログラムで音楽、演劇、各種イベントが楽しめます。
「FESTA松本2021」にご縁があったみなさんは、松本のまちなかでアートの気配を感じましたでしょうか❓
そんな10日間続くフェスタの6日目。新国立劇場ダンスCo.山田うん『オバケッタ』の公演を見てきました。
今日はわたしが初めて見た、「コンテンポラリーダンス」の鮮烈な舞台の魅力をお届けします。
新型コロナパニックのさなか、わたしにとって演劇や芸術は不要不急で「なくても生きていけるもの」という認識でした。
しかし、実際に劇場に足を向けプロの舞台を目の当たりにして、その認識は少し変わりました。
『人の心を動かす”舞台芸術”』には、そのコンテンツに触れることによって明日への活力を与える力がある、そしてそれは感染拡大防止への行動につながるのではないかーと。
【公演情報】
【タイトル】「オバケッタ」
【作・演出・振付】山田うん(第8回日本ダンスフォーラム大賞、平成26年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)
【音楽】ヲノサトル
【美術】ザ・キャビンカンパニー
【制作】新国立劇場
【出演】Co.山田うん 川合ロン、飯森沙百合、長谷川暢、西山友貴、山崎眞結、山口将太朗、吉﨑裕哉、山根海音、仁田晶凱、田中朝子、望月寛斗、黒田勇
約1時間15分(第1部 30分 休憩 15分 第2部 30分)
【鑑賞のきっかけーコンテンポラリーって何?】
noteの記事にも上げましたが、信州松本でWeb・デザイン制作ユニットとして活動している「ナナイロ」は、東京を拠点に活動している「一般社団法人未来の会議」代表の宋氏をゲストに、ゆる座談会を行いました。→こちら
そこで「舞台芸術」と社会の関わり、たくさんの方に劇場に足を運んでいただき、さまざまな公演を楽しんでもらいたい、という想いから生まれた「ミラチケ」の活用方法など、舞台芸術の素晴らしさや可能性をご本人の言葉で熱く聞かせてもらう機会をいただきました。
その中でミラチケ対象の『オバケッタ』が大人も子どもも楽しめるダンス作品であること、この世とあの世の間にあるオバケの国が舞台になっていて、コンテンポラリーって何?という超初心者のわたしでも楽しめそうだ、という手ごたえを感じたのです。
(ちなみに コンテンポラリーダンスとは、形式をもたない自由な身体表現のことらしい。バレエ 、 フラメンコ 、ジャズダンスといった 既成 のジャンルに属さないものを指すらしく、定義づけがすでに自由ですね(^^♪)
開演10分前にいきなりまつもと市民芸術館へ足を運び、当日券をゲット。この時点で選べる座席は2枚のみ。平日の昼間でしたが、8割がた席は埋まっているようでした。
単独で来ている中高年の女性や、夫婦で来ているシニア層の方、小学生くらいのお子さん、若い男性の姿も見受けられ、ロビーは活気にあふれています。感染対策もあってか適度に空席もあり、ステージがとても見やすく、数年ぶりに楽しく観劇しました。
【オバケッタの見どころー「超ダイバーシティなオバケの集団が楽しい」】
・ダンサーのネコみたいな身体能力の高さ
・劇場に響くキャッチーでエモーショナルな舞台音楽
・ノンバーバルであることの素晴らしさ、アクセシビリティとの親和性
「ひとりで寝るのはなんだか怖い」そんな詩が映し出されている舞台は、主人公の男の子「ゆめた」の部屋。あの世とこの世の境目であるかのような不思議なセット。場面が暗転して、突然絵本の中から様々なオバケがとびだしてきます。
座敷わらし・トイレの花子さん・河童・電気男・壁男・クモマニヨン(ホコリのおばけ?)・透明人間・メデューサなど、性別も、人種も、国籍もない超ダイバーシティなオバケの集団が楽しい音楽にのせて、ダンスでそれぞれの個性を紹介していきます。もうこの時点でできればみんなで踊りたい気持ちに!
一流ダンサーは人間というより、ネコのイメージです。圧倒的なジャンプ力や舞台に倒れこんでも、すぐに立ち上がり常に姿勢を保つバランス力や、卓越した柔軟性など、日常ではお目にかかれない身体能力のあまりの高さに目が離せなくなっていました。
オバケッタの素晴らしさはキャッチーでエモーショナルな舞台音楽。一度聴いたら覚えてしまうような、耳に残る曲。オバケがテーマの楽しい感じの曲、または怪しい感じの曲。。
コンテンポラリーダンスなので、基本的に役者さんたちにセリフは一切ありません。そのため、ストーリーや場面変換が少しわかりにくかったです。
しかし、補うように物語の進行はリズミカルな音楽で伝わってきました。この不思議な絵本みたいな曲調は、小さなお子さんも楽しめそうです。
新国立劇場で上演した時、客席の子どもたちが一緒に踊ってたという内容を座談会で宋さんにお聞きしましたが、本当に思わず踊ってしまいそうなスウィング感のある音楽に納得でした。
「未来の会議」さんは舞台芸術のアクセシビリティに関する活動にも関わっています。何等かの事情で劇場に足を運びにくい方、聴こえなくても、見えなくても、観劇を楽しみたい方に対してもミラチケの対象範囲を広げていきたいと、座談会で語っていらっしゃいました。
この『オバケッタ』は観劇支援を必要とする方たちにも、マッチした公演だと感じます。
カラフルで楽しい照明や衣装の演出。表情やしぐさで伝えるノンバーバル作品なため、小さなお子さんや外国の方、福祉施設に入所されていて耳が聞こえにくい方などにも、きっと楽しんでいただける公演でしょう。
もちろん福祉施設等で働かれているスタッフの方にも、夢のひとときを心の底から味わっていただけると感じました。
【まとめ】
グランドフィナーレは拍手の嵐。中にはスタンディングオベーションで公演の感動を伝えている人たちもいました。
さらにその拍手のさなか、【作・演出・振付】を担当された山田うんさんが、突如客席方向から現れ、檀上のダンサーたちと並んで立ったことで、場の高揚感はさらにヒートアップしました。
ご本人もソロダンサーだったという山田うんさん、遠目にも姿勢が綺麗でお肌にも張りがあって、内面の魅力がにじみ出ていました。
今までわたしにとって舞台芸術は単に娯楽の一つで、コロナ禍で命と天秤にかけたら劇場へ足を向ける必要はない。公演やイベントの中止は仕方のないことだという認識でした。
しかし、約1時間15分の夢の舞台を見た後、その認識は少し違ってきました。大変な世の中になってしまい、不安な思いを抱え、精神的に苦しくなってしまった時にエンターテイメントのチカラは必要なのではないか❓
舞台芸術を含むエンターテイメントは、もしかしたら不急かも知れませんが、少なくとも「不要ではない」のではないでしょうか。
たとえひと時でも、感情を動かし、心を温められるコンテンツはこんな有事の際だからこそ、多くの人に必要とされているのでないかと個人的に感じます。
一日でも早く誰もが安心してエンターテインメントを楽しめる社会に戻るよう、感染対策をしっかり行っていこうと改めて思いました。
まつもと市民芸術館の感染対策に関する情報はこちら
あと、分散退場もありました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。