人間って、案外カンタンには死なないんだな~色々と始まる編~

次々と災難祭り

その2日後には、外科病棟のベッドに空きが出て、外科病棟のまたまたナースステーションの近くの個室に移ることが出来た。

だが、そこでも色々と、問題の多い開腹手術患者は、次から次へと先生を悩ませる種を作り続ける。

何も食べていないのに、お腹が張って痛いし、吐き気がする。外科の主治医に言うと、緊急でCT検査をしみたら腸閉塞|ちょうへいそくだった。

腸が動いていないのが、諸悪の根源と術後の経過も悪かったんだが、すぐに鼻の穴にはイレウスチューブが入れられてしまった。

この鼻から入れるイレウスチューブは、太さが3ミリくらいだが、とても長くて入れるのも苦しくて、気持ちが悪いとしか言いようがない。

そのチューブを入れるだけで、鼻水と涙とヨダレと逆流した胃酸で、とんでもなくブサイクな顔になって、イレウスチューブが入ったところで、温かいおしぼりで顔を拭いてくれた。

外科の主治医は、最初は大きな注射器を使って、お腹に溜った腹水を出していたが、「間に合わない」といって、チューブの先を大きな機械に繋げた。

サクションと呼ばれる機械で、強力に吸い取ってくれて、下には腹水が溜るように、容器が付いている代物だ。

サクションに繋げると、一気に廃液が容器の半分以上溜った。容器に溜った緑色の腹水を見て、「自分はエイリアンだったのかな…」と、そこでも他人事だった。

結局腸閉塞になってしまって、安静と絶食になってしまった。

激痛に負けてたまるもんか!

大きく開腹手術をした私にとって、起き上がるだけでも、かなりの痛みを伴う作業だったが、術後の腸閉塞や癒着を防ぐために、毎日歩行器にガッツリ捕まって、短距離を歩く練習が日課になった。

歩行訓練と言っても、部屋の中と部屋から少し出るだけの子供のおつかいに、毛が生えたようなもの。

だけど、担当の看護師さんが毎日、1日2回の歩行訓練に付き添ってくれて、歩行器にガッチリと掴まって、ドレーンの袋が入るポシェットをぶら下げて、病棟を半周する練習。

個室の病室の中を歩いて、個室に付いている洗面所とトイレを言ったり来たりするだけの毎日だった私には、刺激的でもある歩行訓練だった。

ステロイドの副作用で、体力だけじゃなく、筋力が完全に落ちてしまって、締まりのない脚は、骨と皮しか付いていない。

ベッドに腰掛けたときに、自分の脚をまじまじと見ていると、今までお目に掛かったことのない、骨に付いただけの皮。

脚をちゃんと閉じて膝をくっつけても、太股の間には三角形の隙間が出来ていて、余裕で自分の拳も突き抜ける程になってしまった。

不健康ダイエットで奇跡の宇宙人体系(笑)

脚だけではなく、腕もガリガリで、胸も洗濯板の様になったが、その奇跡の宇宙人体系を目の当たりにしても、「ガッカリ」というネガティブな感情よりは、面白くて笑ってしまったくらいだった。

入院し始めた頃から比べたら、不健康ながらもダイエットに成功したと考えた。「Mサイズのレディースが着られるわ!!!」とも思ったのは事実である。

痩せて一番ビックリしたのは、指輪のサイズまで小さくなってしまったことだ。私はお守り代わりとして、7色のアミュレットの指輪を、右手の薬指に嵌めていた。

2年前に亡くなった妹が、買ってくれたものでもあったが、左手の薬指に嵌めていると、ブカブカですぐに外れそうになってしまうから、右手の中指に落ち着いたのだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?