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人間って、案外カンタンには死なないんだな~オストメイト編~
手術が終わって、私は人工肛門になってしまった。私の衆院していたWOC(ウォック)ナースさんと呼ばれる、皮膚や排泄ケアの認定看護師さんがいる。
術後の集中治療室にも来てくれて、人工肛門(ストーマ)があると身体障がい者になるため、その区役所での手続きや、ストーマ装具を購入するための給付券と、購入する薬局を決めるのにも、出来ない私に変わって、母にも丁寧に教えてくれた。
まず初めに使うストーマのフランジ(便が溜る袋のようなもの)と、術後のストーマの状態を観察してくれて、自分で管理が出来る様になるまでは、フランジ交換もしてくれていた。
ストーマ装具が病院に到着して、その届いた新しいフランジに交換してくれている最中も、WOCナースさんはフランクに色々と話してくれる。
術後すぐの時には、左右には術後用パウチが付けられていたが、左のパウチは術後10日くらいで外れた。左側は粘液瘻と呼ばれるものである。
粘液瘻とは、特殊なものらしく、ネットにもなかなか情報が見つからない。
裂けたS状結腸のために周りの大腸で作られた、粘液を排出するためのものだが、不思議なものでS状結腸を摘出しても、ちゃんと粘液が排出される様になっているらしい。
手術後はお腹の中に残っていた泥状の便が出ていたが、その便が出なくなると、粘液という名の白いベタベタしたものが排出される。
粘液瘻から出てくる粘液は、匂いが結構な強烈具合だった。微かな便の匂いと体液が混ざった、据えた匂いがする。
粘液瘻には、生理用のナプキンをサージカルテープで留めて、外して洗ってから、皮膚を保護するパウダーをかけてから、ナプキンを貼って終わり。
剥がした生理用ナプキンからは、殺人的な匂いがする。小動物くらいは、天に召されそうな匂いだが、そんな匂いだと分かっていても、いつも匂いを嗅いでしまう。
WOCナースさんには、「臭いから匂うのやめなよ」と言われても、「いや、なんだか癖になっちゃう匂いなんだよね」と言ってしまう。
母親がWOCナースさんの指示通りに、ビオレのボディーソープと、リードのクッキングペーパーを買ってきてくれて、それでストーマの周りを洗浄する。
ビオレのボディーソープは肌に優しい弱酸性で、リードのクッキングペーパーは、皮膚への摩擦が少ないらしい。足りなくなっても、病院の売店で売っているから、とても便利だと思う。
フランジは1週間に、月曜日と木曜日の2回のペースで取り替えて、フランジの先は尿を溜める袋に繋げて、どのくらいの便が出ているのか、様子の観察をしていた。
WOCナースさんがフランジ交換する度に、興味津々で手技を見ていると、「次から自分で変えてみる?」と聞かれたが、気持ち悪くて痛そうというイメージが強かった。
それでも、いずれは自分で管理をしなくちゃいけない。「試しにやってみようかな」と、次の木曜日には入浴した後に、WOCナースさんが見守ってくれながら、自分でのフランジ交換が決まった。