虫達と私の小さな話
虫の話をしよう。
苦手なあなたも読めるように、優しく書くよ。読んでくれたら嬉しいな。
私は何故か人より虫を見つけるのが早い。
地面ばかり見ているからかもしれない。
『渡りたい芋虫』
自転車で職場に向かっていた私が大きな交差点で信号待ちをしていた時のことだ。
何気なく灰色のアスファルトを見ると、小さな芋虫が、私のそばから横断歩道を渡ろうとしていた。(実際は横断歩道の場所で進行方向がそうだっただけだが、そう見えた。)
しかし、信号は赤になったばかり。
あと数秒もすれば、小さな芋虫が進む先には恐ろしい程のスピードでタイヤが通るだろう。
一瞬かたまる。ここで自転車を降りてスタンドを止めることは交差点の車の中の人の注目の的になる。嫌だな。
でも、一生懸命進む芋虫が目の前で死ぬのも嫌だな………
仕方ない。これも何かの縁だろう。
そして、私は自転車から降り、素早くティッシュを敷いた手の中に芋虫をしまった。手の中で、慌てる芋虫に「ごめんね。でも、轢かれちゃうから。信号青になったら土のあるところに連れてくね…」と声をかけた。
ティッシュはしなくてもいいタイプの芋虫だったけれど、人間の油がつくより良いかと思った。
青になって、自転車をおして横断歩道を渡り、近くの土に離してやった。
芋虫はせっせと土を掘り出す。
ホッとして、私は職場に向かった。
『降りたい甲虫(コウチュウ)』
仕事帰り。3両編成のワンマン電車には私と数人の客しかいない。のんびりした空気が漂っている。
私は窓の大きいところに座って景色を楽しもうと真ん中あたりに腰掛けた。
すると、窓枠に先客が居る事に気がついた。
小さな甲虫類である。
黒くて、どこにでもいるような甲虫は窓に向かって飛び続けていた。
しかし、どう考えても外にはいけない。
窓に跳ね返され、コテンッと落下する。
何度も、挑戦する。
何度も、跳ね返される。
疲れきった顔で、羽をしまうことも忘れた虫をどうしたものかと観察していた。
その後も2駅ほどは挑戦していたが、ほとほと疲れ果てたのか、触覚の手入れを細々するばかりだ。
なんだか、とても寂しそうに感じた。
ここまで真剣に外に出ようとする虫はあまりみない。だいたい諦めて、車内を飛びはじめるのに…。
窓の外を見つめているような向きでとまる虫に何ともいえない気持ちになる。
高校生たちがホームに沢山見えた。
私は、本来なら端によるべきをじっと真ん中で過ごした。虫がいるからだ。
私は、虫と一緒に電車を降りようと決めたのだった。沢山席は空いている。あと一駅だ…ゆるしておくれ。
そして、怪訝な顔をした男子高校生が少し空けて横に座る。虫を見るとジッと窓の方を見て動かない。…お前さんも、お願いだからじっとしてて。
あと少しだ。私が降りるべき駅のホームに私の乗る場所が入る。同時に私はティッシュをサッと取り出し手にひいて、指でチョイっと窓枠の虫を落とした。少しだけモゾっと動いたが後はジッとしていた。
風圧で飛ばされないように、そっとティッシュをとじ、電車を降りた。周りの高校生たちの顔は見ていない。きっと、変なおばさんだと思ったに違いない。
そして、線路脇の土の道。畑の横でティッシュを広げた。
電車内であんなに弱っていたから、飛べないかなと心配したが…
夕日が虫を染めた途端、電車内でくすんだ色をしていた体は、命が吹きこまれたようにツヤツヤとしてた。
よじ登ったティッシュのてっぺんで、パッと背中が開かれた。瞳がキラキラと輝いているのを見た。
さっきまでのショボくれた感じが嘘のように、小さな虫は飛んでいった。
私はしゃがんでいて、開いたティッシュには何もなくて、夕日だけが後ろから降り注いで、なんだか凄く生きる気力が湧いた。
あの瞳の輝きは、とても、とても美しい命の輝きだった。
『虫と私の小さな話』
小さい頃から虫が好きでした。
大人になっても苦手意識が生まれず、虫達と上手にやっています。
本当に小さな話だと、スズメバチに網戸越しにアゴを鳴らされた(威嚇)だとか、
自転車こいでたら、ゴマダラカミキリが太もも辺りに体当たりして居着いただとか(痛かった)……色々あります。
人が気が付かない、見ないような虫の動きもじっと見てしまうため、電柱にぶつかった事もあります。(その時は蟻を目で追っていた)
信号待ちで、蜜蜂の花粉団子に目を奪われた時は、青信号を3回ほどスルーしてしまいました。
小さな虫達は何故か私を魅了し続けます。
あなたは虫が苦手、もしくは嫌いかもしれない。
しかし、相手を知ると、ちょっと笑えたり、可愛かったり、健気さに泣けたり……
虫も案外いいじゃん?ってなるかもしれません。
そうやって、お互いの事を知って、上手に棲み分けて、仲良く地球で暮らしていきたいなと私はおもいます。
ここまで読んでくれて『蟻が10匹、アリガトウ!』ございます。笑
いつも書きたいこと書いています。
色々な事を書きますので、気が向いたらまた遊びに来てください。
スキやコメントもお気軽に!
それでは、また、何処かで。
サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。