気がついたら朝になる。
カーテンを開けて本当に朝になっているのを知った時、私は多分心の底から満足していたんだと思う。
私という人間は、フォロワーの皆さんは知っての通り文字を凄い量生産する。
自由気ままなな電子の海。
書いても書いても、書いても書いても飽き足らず……
昔からそうだった。
しかし、そんな私だって言葉を書いていない時もあったよ。
じゃあ電子の海にいなかったのかって?
いや。いた。
「声」を使って言葉を凄い量生産していた。
これはそんな「声」で電子の海を泳いだ短くも濃ゆい思い出話だ。
声を頼りに電子の海を泳いでいた時。
毎日、毎日飽きもせず知らない誰かを捕まえてお喋りをした。
口下手だからと言う人も、最終的に
「今までで1番喋れたよ!!こんなに長く通話したの初めて!!」と喜んでくれる。(はじめましての人と2時間も顔無しで話したりしないのでしょうか?ちなみに2時間は短いですね。)
私もそれなりに楽しい。
それに喜んでもらえるのは嬉しい。
たとえ「まったり」だったとしても。
でも……もし、許されるのなら……
私はもっともっともっともっと吹き荒れるような会話がしたい!!もっともっと沢山あーだこーだ話したい!!
と思っていた。
そんな時、とあるゲーム実況主を見つけた。
あまりの語彙力に度肝をぬかれた。
声は優しく、言葉は丁寧なのに…
その人の口から多く発せられるのは小学生の喜びそうなシモネタ。(まぁゲームジャンルがそっち系だから)
でも…な、なんて!!なんて面白いんだっ!!(私はエロ系大丈夫なんだよね。)
アイドルにも、俳優にもハマらない。
生身の人間に入れこむ事の無い私が、ドハマりした人間だった。
とにかく、その人の実況動画を見るだけで楽しかった。推し活と言えよう。
「推しが元気だと生きていられる…」
というのは当時無かった言葉だが、まさにそれにあたるだろう。
たまにやるラジオ的なものは、なるべく聴き、コメントをし、運良く読まれれば一週間は元気が持続する。
新しい動画が出るたびに喜びつつ、どうやら学生であるその人の学業は大丈夫なのかと勝手に心配した。
そうそう。ドハマりしたけど恋ではなさそうだった。
あぁ、この人面白い…最高すぎる…と電子の海で付き合いの長いメンツには勧めた。
「いい声だね」と言われると自分の事のように誇らしかった。
とにかく1ファンである事を心がけた。
推しが好きに活動してくれるのが1番嬉しい。
だから、あまりに酷い言葉を投げる人にはヒヤヒヤした。
嫌いなら、見ないであげてよ……。
そんなある日。
彼は何を思ったか、生放送中限定でスカイプIDを晒した。
登録してくれていいですよと。
こ、、、これは、、いいのか??
私は戸惑った。
チャットでいいから、直接何時も有り難うと伝えたい。なんなら、喋って…………凄く凄く喋りたい。
でも、彼のリスナーは男性が多い。
女性である私とは話したくないかもしれない。
罠かもしれない。
悪い人じゃない保証はない。
でもとにかくこのトーク力は本物。
トーク力は本物。
少し葛藤した。
誘惑が勝った。
返ってこなくてもいい。
何時も応援している事を本人に直接伝えられるなんて幸せな機会早々ない。
私はスカイプを開いて彼のIDを打ち込んだ。嘘かもしれないと思いながら。
本当に…あったー!
その危うさに乾杯しつつメッセージを打ち込んだ。
丁寧に。
出来るだけ簡潔に。
数日放置の後で、返事が来た。
他愛もない「いつも見てます」「有り難うございます」がはじめのやりとりだったはず。
私はそれでも、だいぶ満足していた。
だってそういうものだろ?
ノリの良いリスナー達のことだ。
わんさかスカイプにメッセージを送っているだろう。
私ごときにかける時間は彼にはないだろう。
『私はその人が楽しければ楽しいんだもの。』
しかし、そんな私を部屋で叫ばせる破壊的な一文が届く。
「もしよかったら、通話しませんか?」
✽✽✽✽✽長くなるので次回に続く(そんなたいした内容ではありませんが続きます。)