ヨシダさんは言っていた
「俺以上に俺のこと好きな奴いないから」
ってヨシダさんは言ってた。
今ならわかる。
私も、きっとそう。
ヨシダさんは面白い人だけど、だらしない人だった。
昔、少しの間、一緒に働いただけの人だけれど、私はヨシダさんは面白くて良い人だと思ってた。
たとえ、突如会社に来なくなる期間があったとしても。
たとえ、自他共に認めるナルシストであったとしても。
ヨシダさんは
「朝起きて、トランクスが頭の上にあったんだよね~」
とか
「みてみて、ワインボトル柄のネクタイ!」
とか自分で言う。
そして、他の人達に
「ヨシダはやばい」
「あいつ麻雀やりてぇとか言って高い雀卓かったよな」
「ヨシダはマジやばい」
「会社急に来なくなるしな…」
とか言われていた。
でも、本気で憎まれてるとか、そういうのがなくて、なんか地に足つかない大人なんだなぁって小娘の私は思ってた。
けれど、ヨシダさんに話しかけるのは楽しかったし、ヨシダさんに助けられた事もある。
でも、今ならわかる気がするけど、飄々としてるようで人一倍繊細な人だったんじゃないかな。
ヨシダさんはすらりとしてて、黙ってればイケメンというか、かっこいいお兄さん。
喋ると面白くって、楽しいお兄さん。
だから、私ともう一人の子で、キャッキャと懐いて
「ヨシダさんかっこいー」
とか
「ヨシダさんすきー」
とか言って絡んでいた。
そう言うとヨシダさんはニコニコわらってサラッと
「だろー?わかるわぁ。俺、魅力的だよね。でもね、俺以上に俺のこと好きな奴いないから。俺が一番俺のことを好きな自信があるっ!!」
って言った。
だから彼女もいらないんだって。
俺が俺を愛しているから、いいんだって。
私達、小娘は最初から相手にされる気もないので
「えぇ~」「ずるい勝てない~」
などと言ってキャッキャと笑う。
小娘のうざ絡みに、割と真面目に、心底真剣に「自分が好きだ」というヨシダさんは、やっぱりかっこよかったなーって今、思い出した。
私も私のこと好き。
ヨシダさんみたいには言えないけど、滲み出る「自分好き」
ヨシダさんの星座は聞いたことなかったというか、聞き出せなかったけど、きっと風星座だろうなってクツクツ笑う。
なりたい私なんてない。
何時だって私で、それが好きだったら続けるし
嫌だったら違う道歩いてみる。
ちょっと生きにくい時が多いけれど
やっぱり、それがいいよねって
そんなことを思う。
休憩終わり。