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プーチンは旧約聖書の世界に住んでいる。


2014年にロシアがクリミアを併合する暴挙に出ていた時に、ドイツのメルケル首相(当時)がロシアを訪問して、プーチン大統領と長時間話し合って事態の平和的収束を図ろうとしました。しかし、メルケル・プーチン会談は平行線をたどり交わることなく、以来欧米とロシアは対立してゆくことになります。

なぜ、話し合いで互いに歩み寄れなかったのか?
その理由は、メルケル首相(当時)がオバマ米国大統領(当時)に、電話で語ったこの言葉に要約されています。

メルケル曰く「彼(プーチン)は、別の世界に住んでいる」

成程、「別の世界に住んでいるから、一緒に仲良く共生することはできない」というわけです。
では、プーチン大統領は、どこの世界に住んでいるのか?

私は、「プーチン大統領とプーチン大統領を支持するロシア人は、(唯一絶対神=神に選ばれた最高権力者プーチン露大統領に従わないものは抹殺すべき)という 旧約聖書の世界に住んでいる」と考えます。

一方で、「(自由・平等・博愛を掲げる)、現在の欧米社会の人々は、新約聖書の世界に住んでいる」ので、別の世界に住んでいるのです。だから、「最高権力者プーチン露大統領の意向に従わねばならない」とはだれも考えません。

しかし、プーチン露大統領は「誰もが自分に従うべきだと信じてしまうので、従わない者は武力でしたがわせよう」として、戦争を選んでしまうのです。
 
1、宗教改革がなかったキリスト教の正教を信じる地域では、今でも古代ローマ皇帝が、民衆に自由な心を封印させて皇帝統治に従わせる統治するために作り出した「統治者の為のキリスト教理論=正教」の影響下にある。

古代ローマ帝国で、「旧約聖書の神の息子が、精霊でつながる、のイエス・キリストだという、三位一体説が正しいキリスト教理論とされて、ローマの国教となりローマ人全員に信じることが推奨されました」

4世紀の帝政ローマ末期の頃は反乱が多発してローマ皇帝の支配が揺らいできていました。つまり皇帝の治安維持能力が減退して、盗賊集団による略奪・殺人事件が多発して、人々が安心して暮らせなくなっていました。

こうした世相の中で、新約聖書に書かれたイエス・キリストの優しい愛の言葉におおくの人々が引き付けられるようになり、2~3世紀の五賢帝の時代に古代ローマ帝政が安定しているころには1パーセント程度だったキリスト教信者が、帝国が荒れ始めた軍人皇帝時代には10%を超えました。
私は、この一般大衆を引き付ける「イエスキリストの愛の言葉に目を付けた」ローマ皇帝が、帝国の治安維持・安定した統治のためにキリスト教を利用しようとしたと考えます。

つまり、本来は一元論と多元化論で根本的な世界観が違っている、旧約聖書と新約聖書を三位一体説で接着させて、「皇帝支配を正当化させる政教一致の統治理論として、古いキリスト教理論を作り上げて、人々を洗脳して支配した」ような気がします。言葉を変えれば、「イエス・キリストの残した言葉」で人を集めて、「教会と皇帝に、服従しなさい」という理論にすり替えて人々を支配したのです。

●ローマ帝国は、「キリストの言葉」を、支配の論理に取りこんだ。

「旧約聖書の神」は、人々に絶対の服従を求めて、従わない人間は殲滅させる神様です。「新約聖書のイエス・キリスト」は、「汝の敵を愛せ」と隣人愛を説いて、いわれなき罪で十字架にかけられました。

本来「旧約聖書」と「新約聖書」は、本来全くの別物です。

ただ、ローマ皇帝が求めるのは「服従」ですから、どうしても「旧約聖書の神」が必要です。
また「イエス・キリストの言葉」は民衆の耳に優しく響くので、これも欲しいものです。

ローマ皇帝は「本来全くの別物だけれど、両方欲しい。」ので、どうしたかといえば、イエス・キリストを旧約聖書の神の息子にしたのです。

だからこそ、ローマ皇帝が招集した二ケーア公会議で「キリストは、人間だ」と主張する アリウス派が(それまで 三百年まったく問題とされていなかったのに、ローマ皇帝が口出ししてきたら、途端に) 異端とされました。

キリストが人間であっては、「旧約聖書」とつなげることが出来ないので、キリスト教が「支配者であるローマ皇帝を利する『宗教』になれない」からだと推測します。
 
二ケーア公会議で、「神」と、「キリスト」が「三位一体説」で一体になったので、キリスト教会は『殺せという旧約聖書の神と、愛せというイエスキリストの正反対の主張をする両方の「神」』の代理人となりました。 

「服従せよ。逆らえば殺す」という神と、「愛しなさい」という神・正反対の主張の神が、ひとつの神である。即ち、「ジキル氏とハイド氏は同一人物で、私はその代理人です」。というような主張です。

新約聖書に記されたイエス・キリストの言葉は、弱肉強食の世界で、虐げられる立場にいた人々も同じ人間であり、「富める人も貧しき人も、互いに博愛の精神をもって心の平安を得よう。」とまとめることが出来ると思います。

それが、「服従せよ」という神と合体して「キリスト教理論」になった結果、「キリスト教会のトップであるローマ皇帝に従えば、キリストの愛によって救われる」という「理論」になったのです。

早い話、弱肉強食の世界のトップに立つ、「皇帝と法王に、従おう」という「教義」になったのです。

 私は、現実だけで「ローマ皇帝に従った方がいい」と考える人々の割合が減少して、「ローマ皇帝に従う必要がない」ので、独立や反乱を起こす人々を、従順にさせる為の理論として、「キリスト教理論」が考え出されて、終にはローマ帝国の「国教」と認定されたのではないかと考えます。
「キリスト教理論」によれば、神に選ばれたローマ皇帝は、天国の門の鍵を手中にしたので、ローマ皇帝・教会が逆らう人間を殺せと命令しても、(旧約聖書の神は、逆らう人間を殺しているので)、正義の業です。に殺される人間は「原罪がある上に、罪を重ねる悪い人間」なのです。更に、ローマ皇帝・教会に逆らったら、「死んでからも救いは無い、地獄行き」です。

こうして、これ以降、キリスト教会と「神が選んだローマ皇帝だ」と認定された皇帝は
「人間を虐殺しても、素晴らしき神の僕」
「人間を救っても、素晴らしき神の僕」と、称賛されることになったのです。誰が考え出したか知りませんが、すごい理論です。

この「統治のためのキリスト教理論」に守られていたためか、東に移りコンスタンチノープルを首都とした東ローマ帝国(ビザンツ帝国)は、西ローマ帝国が滅んだのちも千年もの間帝国であり続けました。

ビザンツ帝国が滅んだあとで、ビザンツ正教はそれぞれの国に分かれて、ギリシア正教・ロシア正教・ウクライナ正教など国ごとに分立しました。これは「旧約聖書の神に選ばれた国王が、国を統治する」という政教一致の宗教理論だからです。
つまり、キリスト教正教信仰地域では、古いキリスト教がそのまま信仰されていて、「旧約聖書の神とイエスキリストの両方を信じなさい」と強制され続けていたことになります。 

だから、今もってプーチン露大統領と、プーチンロシアを支持するロシア人が、旧約聖書の世界に住んでいても、不思議はないのです。

2、西欧は宗教改革・宗教戦争によって、新約聖書の精神世界になっている。

ヨーロッパの西の地では、16世紀に宗教改革が起こり、新旧キリスト教徒の間で宗教戦争が勃発しました。ドイツでは人口が半分になったというまで殺しあいました。その結果、「戦争で人の心を変えることはできない」という了解事項ができて、互いの国の主権を尊重する(隣の国・隣の人の信仰が気に入らなくても、戦わない)というウェストファリア条約が締結されました。

このウェストファリア条約に、ローマ教皇は大反対しました。ウェストファリア条約に各国が従えば、ローマ教皇が「異端信仰の新教徒は敵であるからを攻撃しろ・追放しろ・抹殺しろ」と、ローマカトリックの国王・諸侯たちに命令できなくなるからです。

しかし、ヨーロッパの西の地では政教不一致でしたので、実際の軍事力を持っている国王・諸侯が軍事力を使おうと決心しなければ、戦争は起こらないので、ウェストファリア条約締結以後は、国同士の宗教戦争はなくなりました。

そして、350年が過ぎた今では、ローマ・カトリック教会は表面上は三位一体説をとっていても、新約聖書の教えの(博愛精神)を前面に出して宗教活動をするようになりました。「旧約聖書の神の教えの通りに、神の代理人(ローマ教皇)に従わない者は抹殺せよ」と信者に命令していたら、信者が離れて行ってしまうからです。

このために、西側先進国の人たちは、今現在の欧米のキリスト教文明圏の人たちは、カトリック信者もプロテスタント信者も「新約聖書の精神世界」に住んでいます。

3、キリスト教文明圏での、旧約聖書からの脱皮。

旧世界のキリスト教文明圏では、この不可思議な古いキリスト教理論のもとに、「我々は隣人を愛する。敵をも愛する、最も神聖なるイエス・キリストの信仰者だ」という、「自分たちは素晴らしいという自画像を抱いて、自分たちは正義を行っていると信じて他宗教の人たちや異民族を虐殺したのです」。我々は敵をも愛すと言いながら、南米のインカ帝国もアスティカ帝国も残酷な虐殺で滅亡させて、北米のネイティブアメリカ人も豪州のアボリジニも虐殺してきたのです。

本当に、言ってる事とやってる事が違います。
ただ、この二重人格的な「キリスト教徒の 歴史上の自画像と行動の相違」は、「我に従わない者をせん滅せよ」という旧約聖書の神と、「汝の敵を愛せ」説いたイエスキリスト(新約聖書)を両方信じるように生まれた時から強制されていたためだと、私は推測しています。

このために、市民革命を経て旧約聖書の影響から脱皮して、新約聖書の世界になりつつある現在の欧米社会では、過去のアフリカでの奴隷貿易や南北アメリカ大陸での虐殺行為に対して、悔恨の情が広がり謝罪されるようになってきています。
ただ、今もってロシアとその周辺では、「旧約聖書と新約聖書が合体した、古いキリスト教理論」が息づいています。

だからこそプーチン大統領は「自分たちロシア人は素晴らしいという自画像を抱いて、ロシア人は正義を行っていると信じてロシアに従わないウクライナ人を虐殺する」のだと思います。

つまり、プーチン大統領は「旧約聖書」の世界に生きている。だから「ウクライナ戦争は、古いロシア正教と現代的に新約聖書を信仰するキリスト教各派との間の、宗教戦争だ」と私は考えます。故に「新約聖書を信仰するキリスト教各派」を信仰するキリスト教文明圏の人たちの心を動かして、ウクライナ援助に結集させるのだと思います。

その一方で、他のイスラム文明圏・ヒンズー文明圏・中華文明圏の人たちの心にはさほど響いてこないのだと思います。

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