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「○○がやりたい!」~HちゃんとRちゃんのコップがあふれる瞬間~
「ミュージックケアがたのしいです。いつもたのしいです。もっとやりたいです」とラブレターをくれたHちゃん。ぐんぐん集中力が高まるRちゃん。実はママがちょっとじれったく思うくらい控えめだった二人が、グイグイセッションを楽しめるようになるまでの様子をまとめました。
今回のお話*****************************
■ オンラインミュージックケアからのスタート
■ Hちゃんからのラブレター
■ 「〇〇がやりたい!」
■ ミュージックケアが育むもの
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■ オンラインミュージックケアからのスタート
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初めて参加してくれたのは、去年の10月のオンラインミュージックケア。ママ曰く、とっても慎重で恥ずかしがりやな二人。画面越しに見ている私にとっては、二人が「とっても慎重で恥ずかしがりや」かどうかは正直わかりませんでした。それよりも、お姉ちゃんのHちゃんは初めから終わりまで画面から離れることなくいつも集中して楽しんでくれて、オンラインでのミュージックケアに試行錯誤していた私にとって、とても心強く、うれしい存在でした。妹のRちゃんは回を重ねることで、画面から離れても好きな曲になるとちゃんと戻ってきてくれるようになりました。Rちゃんのお気に入りは新聞紙びりびり。ママ曰く、「超慎重派な」Rちゃんは、ママが切れ目をいれないと新聞紙をビリっとできなかったのに、回を重ねることで、音楽に合わせて自分でびりびりできるようになったそうです。
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二人のママは当時3人目を出産したばかり。いつも赤ちゃんと一緒に参加してくれました。赤ちゃんがいることで、Hちゃんが赤ちゃんの手を取って一緒に楽しんだり、Rちゃんが赤ちゃんの腕をタッピングしたり。二人がリラックスして楽しめていたのは、産後大変な時期にも関わらず、毎回オンラインをつないでくれたママのおかげです。この頃の様子についてママは、「子どもたちは自分のペースで、自分の楽しみ方で参加できていた。画面から離れることがあっても、やりたくなると戻ってくるので、見守りつつ待つことができた」と話してくれました。後から思ったことですが、慎重派で恥ずかしがりやな二人にとって、リラックスできる自宅でのオンラインミュージックケアでのスタートは、ぴったりだったのかもしれません。
■ Hちゃんからのラブレター
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オンラインミュージックケアを毎回楽しみにしてくれるようになったHちゃん。なんと、私にラブレターを送ってくれました♡この時のHちゃんについてママは、「このラブレターはHちゃんの心の変化。もっとやりたい!という気持ちが出始めた頃なんだと思います」と話してくれました。とっても控え目で恥ずかしがり屋のHちゃんに芽生えた「もっとやりたい」という積極的な気持ち。その気持ちを私に伝えてくれたのがとてもうれしいです。
■ 「○○がやりたい!」
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今年の4月から再開したオフラインでのミュージックケア。HちゃんとRちゃんもオフラインでのミュージックケアに参加してくれています。オフライン2回目、Hちゃんは自由に動き回り、誰よりも先に私の近くにグイグイ来てくれました。この様子についてママは「普段にはない動き!ミュージックケア後は「○○が楽しかった!」と具体的な感想も言えるようになった」と成長を感じてくれました。妹のRちゃんは、初めてのオフラインミュージックケアでは、ママにくっついている場面があったり、フラップバルーンはちょっと怖かったりしましたが、2回目のオフラインミュージックケアからはママから離れてお友達と楽しめました。また、Rちゃんが曲の最後まで楽しめるようになったのもこの頃。「最後の、カックン、までできた!」とママが嬉しそうに話してくれました。
■ ミュージックケアでの変化が日常でも
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妹のRちゃんは2回目のオフラインミュージックケアでお友達と楽しめた頃から、日常生活でもママから離れ、同じくらいの年齢のお友達と一緒に遊べるようになったそうです。一方Hちゃんも、ママと一緒に音楽遊びのボランティアに行った際、初めて会った方々に動じることも、不安な様子もなく、音楽遊びを自由に楽しめたそうです。ママは「ミュージックケアでありのままの姿を認めてもらい、他者との心地よい空間を感じさせてもらったおかげで、その場の状況をありのまま受け入れる力がすごく伸びたような感じがする」をお話してくれました。
今回ママから二人の成長を伺って、最もうれしかったことがこの「日常生活での変化」です。ミュージックケアは、「その人が、その人らしく生きるための援助活動」。今回のHちゃんとRちゃんのお話はまさに、「二人が自分らしく生きるための援助」につながったのではないか、と感じています。
■ ミュージックケアが育むもの
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ミュージックケアは、「自分から何かしてみようと思う心を育む」。そんなお話を今年の全国セミナーの中で聞きました。「ダメと言わない、無理にさせない、したくなるまで待つ」ミュージックケアの場では、子どもたちが「自分で選び、決め、行動する」ことができます。そして、活動する中ではインスタントサクセス(即席的成功感)を味わうことができます。たとえば、初めてでもタイミングよく動いたり鳴らしたりできるよう、合図を前のフレーズの最後にかけます。曲の終わりに「ジャン!」とみんなが一斉に止まることができれば、その瞬間、できた!と達成感を感じることができます。このようにインスタントサクセスは「すごく楽しかった。これなら自分でもできる!」を感じることができ、またやりたい、次もやってみようという「何かしてみようと思う心」を育てます。
また、ミュージックケアは「蓄えと待ちのセラピー」です。「待つ」というのは、子どもたちの成長しようとする力を信じること。HちゃんとRちゃんの心のコップに、少しずつ楽しい経験を注ぎ込む。二人が自分で選び、決め、行動し、そこで得たインスタントサクセスがコップにたまっていく。そのコップが満タンになって一滴あふれだしたときが「自ら何かをしてみたい!」の瞬間です。二人にとってのその瞬間が、Hちゃんが私にくれたラブレターであり、オフラインでのグイグイ私の近くに来てくれた姿であり、Rちゃんがママから離れてお友達と楽しめた姿なんだろうと思います。
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私は、二人のコップが満タンになり、あふれる瞬間をママと一緒に見ることができて、ミュージックケアトレーナーとしてすごく幸せだなと感じます。でも、この瞬間を見ることができたのって、やっぱり一番身近にいるママが「無理にさせない、したくなるまで待つ」を常に意識して見守り、二人が安心できる環境を整えてくれていたおがげだなって思うんです。ママには本当に感謝です。「見守る」ってすごく難しい。コップが満タンになるまで待つって結構大変。でもとっても大事なことだって、今回HちゃんとRちゃんに改めて教えてもらいました。私はミュージックケアトレーナーとして、また母としても見守る大切さを忘れず、参加してくれる子どもたち、わが子の「自ら何かしてみよう」を応援したいなと思います。