展示会記録『さくらももこ展』
お正月休みは、昨年中に行けなかった二つの展覧会に足を運んだ。
一つは、森アーツセンターギャラリーで開催された『さくらももこ展』。
小学生の頃、私は少女漫画の月刊誌「りぼん」の読者で、「ちびまる子ちゃん」の漫画も読んでいたし、アニメも見て親しんでいた。
さくらももこのイラストも好きで、その独特な色づかいや世界感に心惹かれていた。
会場に入り口に、息子さんのあいさつ文が掲げられていた。あまりにも若くして逝ってしまった母・さくらももこへの深い愛情を感じる文章だった。
その先には、『ちびまる子ちゃん』の原画が、壁にずらり。
原画で作品を読めるという、贅沢な展示。お腹を抱えながら、目に涙が溜まるほど笑いながら読み進めた。
たまちゃん、はまじ、花輪クン、丸尾くん
永沢君、藤木、野口さん…。
父親のひろし、祖父の友蔵、お母さん、お姉ちゃん。
みんなおバカで愉快でくだらない、でもそれぞれがいたって真剣なので、なおおかしい。
みんなどうしようもないおばかなのに、どうしてだか憎めない。それどころか、親しみを覚えてしまうちびまる子と仲間たち。
次の部屋では、エッセイの原稿が印刷された大きなパネルが展示され、その内容がたっぷり読むことができる。
水虫になって治るまでのことを、ひたすら書き綴っているエッセイをはじめ、さくらももこのシニカルな世界観が堪能できる。
水虫のことだけでこんなに文章を面白くかけるのはさくらももこだけではないか。
息子さんとのやりとりを紹介した展示では、笑いながらもほろりとするエピソードが並べられ、息子さんがペンネーム・さくらめろんで書いた絵本も、発想豊かな作品で驚かされた。
後半は、私が全然知らなかったギャグ漫画や代表作「コジコジ」の展示が続いた。
「ちびまる子ちゃん」以上に、皮肉屋でシュールなさくらももこの一面が見える。
2000年代も、新聞に四コマ漫画の連載をしていたらしい。時事問題も扱っていて、生きていたらどんな漫画を描いていたのかと思うと、早すぎる死を惜しまずにいられない。
図録には、たまちゃんのモデルになったという穂波珠絵さんのお話が掲載されていた。
まるちゃんことももちゃんとは、中学校が別々になっても、たまちゃんがアメリカに留学しても、お互い結婚して子どもができても、ずっとずっと続いて、本当に大の仲良し、親友だったのだそうだ。
そんなあたたかい友情を築けるさくらももこの人間性を味わえる、貴重な展示だった。
お正月早々、いい時間を過ごせてうれしかった。
娘の受験の行方に不安を抱えながらも、こういう時間は気持ちを豊かにしてくれるなと、つくづく思うのだった。