心が軽くなるかも知れない、80代マダムの言葉
私は小学5年〜高校2年まで、母と同じピアノの先生に師事しました。
今日は小さな南の島の中の、これまた狭いピアノ講師の世界の少しおもしろいマダムをご紹介します。
私が師事した先生は県外出身の方で、小学5年当時でもう60代ではいらっしゃったかと思う女性。いわゆる【島のオバア】ではなく【マダム】という言葉が大層よく似合うとても優雅な女性だった。仮にA先生とする。
教室は先生のご自宅の中にあったのだけれど、南の島によくある雰囲気の住宅ではなく、どことなくヨーロッパの雰囲気漂う感じ。クリーム色の壁紙とか、コンクリの感じではなく【土】の雰囲気。和風ではなく洋風。絵画も壁に飾られたりなんかして。家具なんかも猫脚の椅子があったり。
ただ先生片付けはあまり得意ではなかったのか、2台あるグランドピアノの上にはいつも楽譜が山積み、または散乱していた。
うちの母もいちおう細々とピアノ講師をしているのもあり、先生とは今でもお付き合いがあるらしい。
先生はもちろん今でもピアノに情熱を注がれているとは思うが、
ご主人を何年か前に亡くされてからは何の方向転換があったのか分からないが卓球にも情熱を注がれているそうだ。(元々経験者だったとか)
母はたまに突然会うことになることも度々あるが、あの優雅な先生のままジャージで会いにくるとのこと。
元生徒としては、A先生がジャージでスマッシュを決める姿が浮かぶような浮かばないような。まあレッスン中の熱量の高い時のお姿を思えば決めそうなような・・・
もちろん先生がお元気ならそれにこした事はないのだけれど。
話は変わって、私が母にママ友?のランチのスケジュール変更の多さに辟易しているとこぼした時のこと。
去年くらいからお話しするようになり、今年に入って一緒にランチしたりする仲になれたとても明るく可愛いキャラの同い年ママ。
大好きだが、いかんせんリスケジュールが多い。
先方がランチに誘ってくれたのだが、3週連続で延期になったので流石になんだかなと思う、と母に愚痴った。すると母は
『こんな時はドタキャン女王のB先生のことを思い出して!あの人に比べたら大体の事は許せるようになると思う』と言われた。
B先生はA先生よりもまた少し年上の、これまたおっとりした感じのマダムである。
私は直接師事しなかったけれど、お教室にお邪魔したこともあるし母が関わりのある方なのでお名前は存じている。
空港時代に偶然接客したことがあるけれど、その時もかなーりおっとりされていて同じことを何回か聞くので困惑した思い出がある。
B先生、ドタキャン多いの?と母に聞くと
『多いのよ〜 委員会とかランチとか演奏会とか直前でドタキャンしてくるのよね・・・』とお困りのご様子。チケットやら何やら少なからず迷惑がかかっているようだ。
で、そのB先生のことをA先生に相談したところ
『もうね・・・あの人(B先生)のドタキャンはね、許してあげて!!!もう90近いんだから!!90歳近い人が外出するって大変でしょう?調子が悪いなんてことはしょちゅうあるのよ!もうしょうがないわよ!あ、でも82歳はまだ大丈夫よ!!!』
と、ジャージ姿のA先生にマダム口調で捲し立てられたのだという。
82歳は大丈夫、というのはおそらくご自身のことであろう。
それを聞いた私は爆笑し、【んもう・・・許してあげて!】とは魔法の言葉だな、これ聞いちゃったら力が抜けて許すしかないなと思ったのだった。
母は
『そうでしょう〜! もうそのママ友さんも、お子さんは小さいしお仕事はあるしで大変よ!許してあげて!笑』と続けたので私たちはまた爆笑した。
やっぱりA先生は偉大だな。
ピアノ続けられなくてごめんなさい。いつまでもお元気で、ジャージ姿でショパンを熱く演奏してほしいものだなと思う。
ただ、愛すべきママ友のスケジュール変更は4回目が来たらもうしばらく放っておこうと思ったのであった。