nanam|なな

障害児ママ歴10余年。発達障害の息子がいます。登場人物は全て仮名。note更新不定期。メッセージはこちらへお願いします→ https://note.com/nana_nananam/message

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「支援級はバカなの?」と聞いてきた君へ

わたしの息子には発達障害があって、そのため小学校は通常級ではなく特別支援学級を選んだ。支援級は通常級と違って授業の進み方もゆっくりで、一クラスの人数も少ないので先生の目が届きやすい。それは発達に凹凸のある息子にとって、過ごしやすい環境だった。世間では通常級に通う子の方が圧倒的に多いわけで、だから周りの目が気にならなかったと言えば嘘になる。けれど、我が子が自分に合う環境に身を置けたことにはやっぱり素直に喜んでいた。 それは小学校3年生のときのこと。わたしは付き添い下校のため息

    • 4歳の伴走と泣き顔

      息子の運動会で泣いた。 先生の肩に斜め掛けされたタスキのような絵カードが、走るたびに宙に舞うのを見て泣いた。   子供の運動会なのに先生が走るのを見て泣く親なんて、どうかしてると思われるかもしれない。生まれて初めての運動会で、息子は息子なりに頑張ってくれた。それは本当に思ってる。けれど先生は、言知れないプレッシャーがあったはずだった。次にどんな行動をするか不可解な子の傍らで、片時も離れずに伴走してくれた先生は、あの日誰よりも輝いて見えた。 ◇ 発語はあるけど単語だけ

      • さようなら、類友のママ友

        息子が未就学児の年長さんだったときに、「この人なら心を開いてもいい」と思える類友に出会った。その人は話し方が穏やかで、構えなくても喋りやすくて、全然気取っていない人だった。そしてそのママの子も、息子と同じく発達に障害を持っていた。 これはきっとそうだという、閃きみたいな自信があって、一瞬のうちに惹きつけられた。同じ匂いがするというのはこのこと。視線を外すことができなかった。その子が猛ダッシュでわたしの脇を横切る背後にはピッタリ張り付くママがいて、子供が右に行けば右へ追いかけ

        • よねのセリフに可哀想な大便が昇華する

          息子の付き添い登校をしていた頃に、近所の年配の方から、どうして班登校しないのかと聞かれたことがあった。息子は支援級に在籍していてそこでは親が付き添うのは必須なので、と伝えると 「そんなところに入れて可哀想に」 と返ってきた。 息子の世話を大変だと思ったことは何億回とあったけど、それは息子が可哀想という理由にはならないと思っていた。不運だなと思ったことはあったけど、それは可哀想な子とは違うと思っていた。 言われた言葉が広がっていって、これまでの道のりが「可哀想の色」に塗

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        「支援級はバカなの?」と聞いてきた君へ

          子供を潰したくなかったから

          不登校ビジネスに心がざわつく。 親は子供より優位に立て 見守っていても良くならない 学校に戻るしかないんだから PRESIDENT Online の記事からはそう読めた。 もがいて足掻いて大粒の涙をこらえても、倒れ込む子供に学校へ行けと追い立てる。 家にいるほうが楽だから。そんな理由で不登校になる子がいるんだろうか。 再登校を急かすやり方を、子供本人が喜んでやりたがっているならそれでいい。でも、そんな子はいないはず。適当にやり過ごすことが出来なかった子が、追い詰めら

          子供を潰したくなかったから

          スダチの不登校ビジネスに反論します

          個人的な体感だけど、少し落ち着いてきたのであの話をしようと思う。 あの話とはスダチのこと。 不登校界隈を震撼させた、3週間で再登校できるをキャッチコピーに掲げる不登校支援のあの会社。その再来とあって、SNSでは批判を集めた。スダチは行政と連携して学校の場で試行を始めたと発表したけれど、その後板橋区が「連携の意識がなく」と撤回したことで収束したとか、しないとか。 あれはスダチが前身の逸高等学院だった時。不登校は親の責任だと言い放って、反論する人達を相手に罵倒していた。不登

          スダチの不登校ビジネスに反論します

          癇癪に負けて本屋へ駆ける

          今年もまたうだるような暑さと、モワッとする熱気と、恒例の宿題を連れてやってきた夏。 夏の宿題の代名詞でもある「読書感想文」は、息子のところにもやってきた。1 ヶ月以上にわたる長期休暇とはいえ、面倒な宿題を後に回すと厄介になるし、できることは先に終わらせておくと楽になる。これはわたしの信条だけれど、やりたくないことは端に追いやって、くり抜いたように忘れるタイプの息子には、宿題は早めにやろうと声をかけるのが常だった。 わずらわしいものほど早々にやっつければ、自分の気がかりを減

          癇癪に負けて本屋へ駆ける

          こだわりの傘穴

          妥協せずにとことん追求するのが、こだわり。 頑なにルールを守って融通が利かないのも、こだわり。 梅雨時の、雨が続いていた傘立てのまえで、絶叫していたあの子が守ろうとしていたものそれも、こだわりだった。 朝から大粒の雨が降っていて、登校してくる児童はみんな傘を広げて歩いていた。わたしは息子と並んで校門をくぐり、昇降口までついていった。上履きに履き替えたら「いってらっしゃい」と見送って、朝の付き添い登校は完了する。 昇降口のところまで来ると、傘立てのまえに立つ男の子が、地団

          こだわりの傘穴

          『黄色い家』そして黄美子と障害

          『黄色い家』すさまじい話だった。  心がえぐられるって、こういうことなのかもしれない。暗くて、どこまでも暗くて気が滅入りそうなのに、とにかく切ない。必死に生きようとする登場人物とそこに絡みつく生まれながらの境遇が、犯罪を誘発する自然の流れのように迫ってきて目が離せなかった。 書き出しにある抜粋した文章は、この本の核心をつく部分だと思いました。「その資格がない者」は、最初から決められている境涯を背負うしかなく、抗ってもそこから出られないようになっている。その「資格がない者」

          『黄色い家』そして黄美子と障害

          飛騨市じゃない方の人間

          「薬を服用してるのに、環境設定も必要なんですか?」 クールダウンできる静かな場所を確保してもらいたいと頼んだら、そう言って首をかしげた支援級の先生。 「きのうは落ち着いて過ごせていましたよ」 そう言ってわたしの方へ顔を向けた。 見えないものを想像することは、口で言うより難しい。 どんな不安もどんな騒音も、へっちゃらになる魔法の薬があればいいのにと思う。だけどそんなものはこの世になくて、薬は薬の範囲を超えない。息子が毎日服用している錠剤も気持ちを落ち着かせる類のもので、

          飛騨市じゃない方の人間

          斜線の通知表

          先生が伏目がちに手渡してきた通知表には、縦にずらりと並んだ斜線が記されていた。金縛りにでもあったのだろうわたしはそこから目が離せなくなって、けれどもこんな通知表もあるんだなあと、どこか他人の成績を見せられているようでもあった。 来月から息子は小学生になるという3月の日に、期待よりもこれから飛び込む学校生活に浮足立っていた。「大丈夫、なんとかなるよ」そう誰かに言ってほしい心とは裏腹に、恐らくこの子は支援から漏れやすい子でしょうから小さな変化も見逃さないようにねお母さん、と釘を

          斜線の通知表

          桃鉄で癇癪、罪深き桃鉄

          夫が新しい桃鉄を買ってきた。 それは息子が1ヶ月も前から「やりたいやりたい!」と懇願していたあの桃鉄だった。発売日当日に、「そりゃあ買うでしょ」と当然のように買ってきてくれた夫、天才。 夫からソフトを受け取ると、すぐさま無駄のない動きを見せる息子。脇目も振らずにハサミを手にし、手慣れた様子でパッケージに貼り付いているフィルムをペロリと剥がした。夫から手渡され、中身を確認するまでのタイム、私調べでジャスト10秒。その無駄のない動きに、桃鉄への情熱を感じずにはいられない。これ

          桃鉄で癇癪、罪深き桃鉄

          挨拶をありがとうへ告白「興味関心」

          あれはプラスチックゴミの収集日で、これから始まる猛暑を予感させるような初夏の日だった。朝からとにかく蒸し暑くて、人に会えば「暑いですね」と、それを挨拶代わりにして交わしていたのが今年の夏の始まり。今更ここで振り返るまでもなく、この夏はとにかく酷暑でした。 それはまだ朝のごみ捨ての時間だと言うのに、既に太陽は燦々と照りつけていた日。わたしは45リットルの透明ゴミ袋いっぱいに詰め込んだプラごみを片手に、ゴミ捨て場へ向かった。おはようございますと声をかけたのは、顔見知りの近所の方

          挨拶をありがとうへ告白「興味関心」

          就学相談と決めつけ厄介

          発達障害は外からは見えづらい障害だというそれは、そういう子をこれまで育ててきた親にとってはとても鮮明に見えたりする。幼いときほど特性が表に出ると言われるけれど、努めて理解しようとしなければ「周りを困らせる子」という嬉しくないレッテルを貼られてしまうことがある。それは就学相談の場面でも起こる。青い空が澄み渡る、初秋9月のあの日のこと。 小学校に入学する前の年、わたしは息子を連れて就学相談を受けていた。相談員の女性が二人いて、わたしと息子はそれぞれ別室に通された。一人は息子の付

          就学相談と決めつけ厄介

          サポートをありがとう

          昨日のこと、生まれて初めてサポートしていただきました。 突然のことに驚き、そしてそこへ添えられていた嬉しい言葉に舞い上がりました。感謝の気持ちでいっぱいです。 2022年12月から始めたnoteですが、執筆でお金をいただく経験は初めてです。収益はもちろんですが、それ以上にわたしの執筆にサポートしたいと言ってくださったことに感無量です。お礼の返信はすでに送らせて頂きましたが、嬉しさ大爆発の思いをこちらでもお伝えさせてください。 自分の書いた記事がどんなふうに伝わるのか、い

          サポートをありがとう

          8月の酔っぱらい

          「酔っぱらいって、こういうこと?」 ふわふわした頭に届いた息子の声。 今年の夏は過去最高の暑さと言われたが、八月下旬の夜道は日中のベトつく煩わしさから解放されて少しだけ秋の訪れを予感させた。昼間は相変わらずウンザリする暑さだったが、夜の晩夏は夢見心地で歩くことができた。それは酔いが回って陽気になっていただけではなかった。わたしの手を引く息子の右手が、思っていたよりも大きくなっていたことに感激する自分がいた。 夏の終わりに、家族でお酒でも飲みに行こうかという話になった。夕方

          8月の酔っぱらい