フレンチのコースより、居酒屋の唐揚げがスキ
先日、友達がSNSにアップしていたフレンチのコース料理の写真を見たのだ。前菜のカルパッチョ、スープ、魚料理、肉料理、デザートまで、どれもこれも美しく盛り付けられていて、もう、ため息が出るほど素敵なものだった。
「ああ、たまにはこういうところで優雅に食事をするのもいいなぁ…」
そう思ったのも束の間、私の頭の中に浮かんだのは、なぜかキラキラしたフレンチレストラン… ではなく、いつもの居酒屋の、カリッカリに揚がった唐揚げだったのだ。
正直に言えば、私は「映え」とか「高級感」にそれほど興味がない。むしろフレンチの店に入るときは、妙に緊張してしまうタイプなのだ。ナプキンの使い方はこれでいいのか、このワイングラスを手に取っていいのか、そもそもメニューが読めない…など、食事そのもの以外のことに神経をすり減らしてしまうのだ。そして、気付けば「帰りに唐揚げ食べたいな…」と思ってしまう自分がいるのだ。
唐揚げが好きな理由はいくつもある。まず、香ばしい衣のカリカリ感。そして、中からじゅわっと溢れるジューシーな肉汁。この2つが合わさった瞬間の幸福感は、どんな高級料理にも負けないのだ。
それに、あの「罪悪感」も、私にとっては魅力の一つ。
「ダイエット中なのに…」「カロリー高そう…」
そう思いながらも、一口食べたら最後。
「もう、どうにでもなれ!」
という気持ちで、箸が止まらなくなってしまう。
そして、何より居酒屋で仲間と一緒に「熱っ!でもうまっ!」と言いながら食べる唐揚げは、心の底からリラックスできるのだ。フォークやナイフなんて必要なく、手で豪快に掴んで頬張れるのも魅力なのだ。
以前、当時付き合っていた恋人とフレンチのディナーに行ったときのことだ。私はドレスアップしながら内心「居酒屋デートがいいな」と思っていたのだ。もちろん、その場では「すごく素敵だね」とにっこり笑ってみせたけれど、帰り道に彼が「なんか唐揚げ食べたくない?」と言った瞬間、心の中で結婚を決めかけたのは秘密だ。結局、その日は二人で駅前の居酒屋に寄り、並んで唐揚げを食べた。あのときの唐揚げの美味しさは、どんなミシュラン星付きの店でも再現できないだろう。
…って、あれ? 結局私は今も独身を謳歌してるけど。
もしかして、私、唐揚げに夢中になりすぎて、彼氏のこと、放置してた…?
…まあ、いっか。唐揚げは裏切らないし!
とはいえ、別にフレンチが嫌いなわけではないのだ。あの上品な空間や、美しくデザインされた料理の芸術性は素晴らしいと思うし、特別な日に訪れると確かに気分が上がる。でも、私にとって日常を彩ってくれる「推しグルメ」はやっぱり唐揚げなのだ。仕事終わりの疲れた体で寄る居酒屋で、熱々の唐揚げをかじりながらハイボールを一杯。それだけで「今日も頑張ったな」と自分を褒めたくなるのだ。
もしかすると、フレンチが「特別な日」のごちそうなら、唐揚げは「いつもの日」のごちそうなのかもしれない。どちらも美味しいけれど、私はこれからも唐揚げを推し続けるだろう。だって、その飾らない美味しさこそが、私の日常に一番しっくりくるから。