なな艸花仕事 6 茶会での植物監修 八畳間の花生け
数寄屋造りの常安軒八畳間は、当初摘み草弁当を召し上がっていただくお部屋になっていましたが、雨のため野点が叶わず、急遽薄茶席に変更となりました。
床の間には「雪乃福」による花器が予定されていて、茶会前日に初めてその花器とご対面。
雪乃福というのは、彫刻・漆芸家の後藤慶大 さんと、金属造型作家、デザイナーの福成三太さんによる工芸作家ユニットで、竹の部分は後藤さんが、落としの部分は福成さんがそれぞれ作られています。
後藤慶大さんは鎌倉彫三代のプロフィールもお持ちで、27日は後藤さんが制作した鎌倉彫茶箱のお披露目の日。ご本人もいらっしゃったので竹の部分の制作方法について伺うと、切り出した竹をまず油抜きしてから漆をかけるとのことでした。油抜きをしないと、虫がついてしまうそうです。
今までどちらかというと女性的な雑貨類に生けることが多かった自分にとって、男性的で力強いこの花器に向かうことはとても刺激的でした。
横長で低いというのもなかなか無いシチュエーション。昔、まだ勉強中だった頃にレッスンしたパラレルを思い出しましたが、それとも違う。
はじめはどう付き合って良いのか戸惑い、遠慮がちに生けていたのですが、だんだんとこの器が楽しくなってきて、あの植物と合わせてみたらどうかな?と庭に採りに走ったり、こんな風にしたら面白いんじゃないかと生け方を工夫してみたり。夕暮れの茶室でワクワクしながら器と対話するひとときを過ごしました。
植物は色々なタイプの新緑を集めました。宝庵の庭でひときわ目を引いた赤茶色のシダの新葉が、お軸の赤、竹や香合の深い茶色と良く合っていました。
因みにこちらが後藤さんの手による鎌倉彫茶箱。今まで私が抱いてきたお土産もの的な鎌倉彫のイメージをガラッと変えたお品でした。写真だと力強さが強調されていますが、実際は、もう少し繊細な印象に感じられます。とても美しかった。薄茶席で回ってきた茶箱を思わずじっくりと見入ってしまいました。