『マイ・ブロークン・マリコ』
最近読んだ漫画の中で最も心に残っている作品『マイ・ブロークン・マリコ』
幼いときから父親に性的な暴力を受けていたマリコが亡くなったことをニュースで知った友人シイノは、マリコの骨を父親から奪い、最後の2人旅に出ることを決意します。
遺骨と旅をしていく中で、マリコとシイノの過去が断片的に回想されてゆきます。
子どものときのトラウマから破滅的な恋愛や自傷行為を繰り返してしまうマリコを、シイノは彼女と一緒にいるただ1人の友人として支えようとしますが、マリコは自ら命を絶ってしまいます。
感情を揺さぶるシーンや言葉が、金切り声となって響いてくるような作品でした。
印象的だったのが、マリコがシイノに向かって
「シイちゃんが、わたしより
そのひとのことだいじになって
わたしのこと放ったらかしにして
どっかいったら、わたしから離れていったら
一生
許さないからね
シイちゃんがわたしのこと嫌いになったら
わたし、死ぬから!
死んでやるから!」
と、泣きながら脅迫めいたことを言うシーンです。
マリコはこのような脅迫でもしないと、自分のような人間から人は離れていってしまうという先入観も持っています。
ましてやシイノはマリコにとって、唯一の友人ですから、離れていく恐怖は凄まじいものでしょう。
そしてこの関係の作り方は、マリコの父親(と母親)のそれと同じです。
マリコは父親と同じような関係の作り方を反復してしまう存在として描かれており、また彼女はその事実に抗うことができません。
でも強いていえば、旅から帰ってきた最後のシーンでマリコから届く手紙がその抵抗だとする読みはありうると思います。
手紙の内容は出てきませんが、読んだシイノが泣いて「・・・うん」と言うのから想像するに、シイノを自分の脅迫や呪縛から解放する言葉が書いてあったと考えることができるかもしれません。
全体として、マリコがあまりにもか弱い存在として描かれすぎている節はあるかもしれませんが、
読者に訴えかけてくる力のある作品だと思いました。
最後に
父親による性的な虐待の過去を「一応の悲惨」と言い捨てて、
成人になってもそのトラウマを引きずっているマリコを「メンヘラなクズ」と言い切るレビューが、他のレビューと桁違いの人達に「役に立った」と評価されていました。
作品をどう評価するのかは個人の自由ですが、非常に悲しい気持ちになります・・・
作者のストーリー構成やキャラクター造形への不満を指摘しての事のようでしたが、
技術的なものと、語られている題材へのご自身の考えを混同しているように思えてなりません。
そしてこのレビューは、シイノを「ストレスの溜まっていたヒステリー女」とするのですが、「ヒステリー」という言葉にある差別的な意味合いを知った上で連呼しているのでしょうか・・・
あまり批判はしたくないのですが、黙っていられず・・・