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リモートワークでできた隙間をうめる大切さ


すでに私の職場でもリモートワークを100%として数ヶ月経つ。従業員調査をしたところ、リモートワークの満足度は極めて高く、ほとんど問題が無さそうだった。

とはいえ、これが長期化・定常化したときに想定外の副作用が無いかというと、そんなことはないだろう。想像力を膨らませて、リモートワークをうまく活かせるコツをリストアップしてみる。

この記事は日経COMEMO企画に投稿して、日経新聞本紙に採用されました。

日経コメモ本誌写真202007


「習うより慣れろ」を捨てる

うちの会社は中途入社メインだが、他業種から入ってきた方がなかなかキャッチアップできずに苦しむケースが多かった。特に、周りを巻き向む仕事が多いケースに顕著だ。依頼側・受注側の立ち位置が変わったり、他部門と横の調整をする仕事に慣れていない方は、業界特有かつ社内用語の壁もあって、うまく間合いが取れずに痛々しい場面をよく見かけたものだ。

それでも顔を合わせたりすると、相手も顔色を見てくれたり配慮してくれる。そうこうしているうちに、なんとかなっていた部分は大きいと思う。

間合いをとる器用さや、少ない業務知識でも点と点を結びつけて質問できるスキルがあればいいが、慣れる前に心が折れたり閉じこもってしまうリスクは高い。そういうケースは、本人も萎縮してうまく助けを求められない可能性を疑った方がいいので、「慣れれば大丈夫」と周りが放任していると問題が大きくなってしまう。

そうなる前に、振る舞い方の指南や、相手のリアクションのパターンによってどうリアクションすべきか、上司が事細かに指示した方がいいと思う。マイクロマネジメントを恐れずに、丁寧に事前の背景説明やシミュレーションをした方がいいだろう。


声の表情を意識する

リモートワークだと、ついつい横着して、メールやチャットに頼りがちになる。ただ、テキストだけのコミュニケーションだと冷たくなりがちだし、書き手の感情が伝わりづらく、読み手がネガティブなイメージを膨らませてしまう可能性が高まる。一度、被害者意識ができると、テキストだけで解消するのは難しいだろう。

ここで大事なのが、声のコミュニケーションだ。コールセンターのオペレーターはデスクに手鏡を置いて笑顔を作ってから応対するという。これは表情により声のトーンが明るくなるのと、笑顔を作ると実際明るい気持ちになる、という二つの効果がある。

これを真似して、意図的に笑顔を作って話すと、音声だけでも明るい雰囲気になるので、カメラを付けない職場ではおすすめしたいテクニックだ。


業務に余裕を作る

コミュニケーションにおいてちょっとした違和感や行き違いがあった時に、大人な対応ができるかどうかは余裕の有無に左右される。そもそも業務に余裕がないと、リモートでなくてもピリピリしやすいものだ。

リモートワークで生まれた隙間や溝、見落としをうめるには、チーム全体を観察する役割が必要だ。一人一人は仕事に没頭していると、そうした隙間は見つけづらいので、全体に目配りする役割は明確に決めた方がいい。チームリーダーがいれば、目配り業務も役割として定義したほうがいいだろう。

実際、その役割をメインでやってみると、意外と時間が取られるものだ。「何か違和感あるな」と思って事情を聞いてみると、そこから別の問題が見つかったり…というのが当たり前だ。そうした業務は目に見えづらいが、長い目でみるとチームのアウトプットの総量を左右する。

とはいえ、こういう役割を作るには業務に余裕を作る必要がある。働き方を変える名目で、これまでやっていた業務をどれだけ削ることができるか、これが最終的には一番大事な要素だと思う。


リモートワークから逃れられないとしたら

いまや、リモートワークのメリットを体感してしまった以上、元の働き方に戻れないのは明らかだ。とはいえ、何事にもデメリットはあるので、デメリットが顕在化する前に押さえ込む意識が欠かせない。

こうなると、組織をメンテナンスするリーダーの役割が重要になってくる。リモートワークで出来た隙間を埋める必要があるのだ。これまでも対面ワークでの隙間をうめる仕事があったわけだが、過去の知見が生かせないまま放置していると、気づかないうちに隙間が広がってしまうだろう。

逆説的だが、隙間を埋めるために、業務に余裕を作る必要がある。これは対面ワークでも本質的には同じだったのだが。リモートワークは新しいゆえに手探りになるので、リーダーが余裕を持てる環境整備がますます必要になってくると思う。


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小原ナナエ(奈名絵)
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