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【円安】ミセス・ワタナベ到来でどうなるのか?【ハイパーインフレとヘッジファンド】



ミセス・ワタナベ (Mrs. Watanabe)、キモノ・トレーダー (Kimono Trader) は、個人の小口外国為替証拠金取引(FX取引)投資家を意味する俗称
wikiより

上記の記事でもある通り、いま現在のところ通貨がマイナス金利となっている国は日本とスイスだけなんですね。

スイスは2015年のスイスフランショック以来の低金利政策で通貨価値を切り下げてきていたんですけど、やはり昨今のインフレ経済の煽りを受けてスイスのインフレ率も3.5%に達しています。

trading economics:スイスインフレ率

一方でスイスの失業率は2%と先進諸国の中でも前代未聞の水準に到達しており、インフレ抑制で金融引き締めするには適した状態だと言えるんです。しかもGDP成長率は2%と安定した水準でもある。

trading economics:スイス失業率

今はそうでなくとも、円が唯一のマイナス金利通貨になる可能性がかなりあるんです。

しかも今年の初めから9月にかけてドル円は30円以上も上昇しており、為替市場では日々『円安だ!!円安だ!!』と叫ばれる様相を呈しています。

では、ここで1つの疑問。

"円が唯一のマイナス金利通貨になると一体どうなるのか?"という疑問。


円が唯一のマイナス金利通貨。いったいどうなる?


上記の記事でも紹介されていますが、まず確実に円キャリー取引が激化するでしょう。

低金利通貨である円で借り入れをして高金利国の金融資産などで運用し、運用益に加えて金利の利ざやを獲得しようとする取引。
SMBC日興証券

少なくとも為替市場ではクラス円通貨が相対的に上昇し、各国の10年国債金利は以下のようになっている。

アメリカ→3.3%
イギリス→3.1%
フランス→2.3%
カナダ→3.1%
スイス→0.9%
日本→0.25%

Bloombergより

この金利状況を見ても分かりますけど、ヘッジファンドが円を借り入れて他国通貨を買う動きが激化する、すなわち円キャリー取引が激化すると言えるのです。

しかも、ここで重要なのがヘッジファンドのポジション量。

ヘッジファンドとは、さまざまな取引手法を駆使して市場が上がっても下がっても利益を追求することを目的としたファンド。

為替市場は基本的に連中の守銭で成り立っていますから、この人たちが持っている金融取引でのポジションを確認することは重要だと言えるのです。

黒線:円ポジション
ピンク線:ドル円レート
オレンジ線:円ショート
青線:円ロング

OANDAの円ポジションの推移なんですけど、21年前半から22年までの長い間ショートポジションが積み重なっていました。

最近、ちょっと円が買い戻される動きがあったことがわかりますが、これは今年の春行われていたヘッジファンドの日本国債売りによる影響。

ヘッジファンドは日銀の金融政策がタカ派(金融引き締め)に転換せざるを得ないことを予測し今年5月ごろから日本国債先物に空売りを仕掛けていたんです。国債が売られる(下がる)ということは金利が買われる(上がる)ということですから、円の下落が国債売りに打ち消されてある程度マシだったこともここから読み取れます。

しかし8〜9月の円ポジションを見ると、また急に円売りが増加しており、それに相関してドル円市場も144円台まで下落したことが読み取れると思います。

ここから『ああ、ヘッジファンドたちが日本国債売りを解消し出したのかな?』なんて考えられるわけですけど、逆に言えばよりもっと円キャリー取引が、つまり円売り・クラス円買いが進んでくると考えられるのです。

と同時に、またヘッジファンドたちが国債売りを仕掛けてくるかもしれない。そうすればまた円は買われてドル円相場は下落するとも言えてしまう。


つまりここで確実に言えるのは、そもそも日本に関連する資産を持つことがナンセンスだということ。なぜならいまの日本はヘッジファンドと日銀の攻防によって成り立っているから。両方の思惑で個人は手のひらで踊らされる。

よって円を売り、日本よりも投資妙味のある別の投資先を見つけましょうとなってくるわけです。


ハイパーインフレにはなるのか?

これからめちゃくちゃインフレになって、日本国債はゴミになって、日本経済は破綻するんじゃないか、と思ってしまいがちなんですけどハイパーインフレになる可能性・日本国債の暴落から日本経済が終わる可能性は共に低いと言えるでしょう。

理由は3つ。
①ハイパーインフレは実体経済ありき
②今のインフレは"通貨によるインフレ"ではなく"世界共通のインフレ"
③レンテンマルクの事例


まず、①ハイパーインフレは実体経済ありきなんですね。

最近で言うとジンバブエ、ちょっと前だとロシア、もっと前だと戦後の日本なんかがハイパーインフレの事例なんですけど、ハイパーインフレになる理由として①需給モデルの崩壊と②市場内での貨幣絶対量の過剰、というのがあります。

例えば戦後の日本は、戦争で外国連中に地場を荒らされて生産がまったく止まってしまうような状況に陥る地域が多かったんです。でも戦後の経済復興での商品需要は下がることを知らず青天井に上がってしまったんですね。

もちろん市場内での商品価格も無限に上がってしまうことは目に見えているわけです、で、結局その通りになってしまった。

②の貨幣絶対量の話は、1991年にロシアがまだソビエトだった頃に行われていた社会主義政策(利潤の否定、貨幣の"市場"への直接供給)によって説明できます。

利潤が否定されて、つまり金を稼ぐことも使うこともできない上に政府が刷った貨幣が市場に大量供給されていて国民はその金を最低必需品に使うしかなかった。

こうなったら当たり前ですけど市場内における貨幣の絶対量は永遠と増えていきます。するとインフレ率が2500%になるようなふざけた状況が生まれてしまったと。

では日本はどうなのでしょうか?

日本は貨幣を大量に刷っていますがその金は政府国債に裏付けられていて、尚且つその8割方が銀行の手にあり大量に市場に供給されるようなことはありません。

さらに『日銀の他銀行への国債利払いが大変だ』と騒がれていますが、そもそもその利払い自体の裏付けには貨幣を発行できる日本銀行があるんですから問題ないし、利払いを受け取るのは銀行ですからその利払い分の貨幣が市場に溢れることもないわけです。ここでもハイパーインフレの根拠がなくなってしまう。

それに今のインフレは日本だけのものではないし(世界的な原材料高)、③のレンテンマルクの事例はちょいと難しいのでここでは避けますが、基本的に通貨に裏打ちがある場合、市場への直接供給以外の例で国の経済がハイパーインフレになった事例は過去に1度もありません。

もちろん過去にないことが起こり得ることもあるかもしれません。しかし、原理的に考えると上記の事例からどう考えたってハイパーインフレにはなりようがないと思うんですけどね。


ただし危機が迫る日本

『ヘッジファンドの円売りが起こってもハイパーインフレにはならないんだ!!じゃあ、日本に投資しよう!!もしくは円を持ち続けよう!!』と思った方はちょっと待ってください、ハイパーインフレにはならないと言いましたが株価が上がるもしくは日本が安全だとは言っていません。

というのも、日本のインフレ率は3%近いことには変わりないし、よりインフレ率が高くなればいつかは金融引き締めに転換しなくてはならなくなります。

今の日本経済に金融引き締めをかけると住宅ローン・企業の利払い・日本株などに破壊的なダメージを与えることは確実だろうし、そうなれば大量の守銭を溜め込んでふんぞり返っているメガバンクたちは、2000年代初頭よろしく不良債権を抱えることになるでしょう。

そんなことになって日本の経済が大丈夫だと思えます? 日本株が上がると思いますか?どう考えたって無理でしょ。

であれば日本には投資しない方がいいのです。日本には投資せず、これから長期で持つなら成長国(東南アジアなど)の株やインフレヘッジ資産(金、銀、小麦)などに振り向けるべき。中短期投資で先進国ベンチャーなどに投資するのもありです。

とにかく日本に投資することはお勧めしません。


まとめ

1.ミセス・ワタナベ到来の可能性大
2.そうなると投機筋による円キャリー取引が激化する
3.ただしハイパーインフレにはならない
4.が、インフレ率が少しずつ高くなっている日本に投資することはお勧めしない
5.やるなら高成長国かインフレヘッジ資産、ベンチャーの株式に!!


ということで今回はここまで。
ありがとうございました。

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