古典系物理についての直感的洞察。パート1
古典力学を生み出した17世紀の巨塔たちは、ラグランジュが用いた最小作用の原理とニュートンのたった三つの規則のみで、万物の運動を記述する方程式を紡ぎ出した。水辺の雨の滴りが巻き起こす波紋の形状、水辺の蒸発が木陰で休む人々に感じさせる心地よい、清涼な空気。ミクロ、マクロに関わりなく、彼らの手によって数学的形式化を得た現象たちは、彼らの深い思考とともに一つの論文となって世に送り出されていたのである。現代では、物理学は、計算機科学によって爆発的で、また難解すぎるほどの抽象性を帯びた変貌を遂げていく。量子力学のエンタングルメント(量子もつれ)や複素数平面上を運動するミクロ・アンサンブル群の相互作用が、系を不可解な励起へと導いていく。
ゲージ場上の絶えざる粒子間相互作用からの励起状態へと遷移には、ほんの少しのエネルギーギャップ、いわゆる質量ギャップが伴う。こうした、量子論関連の、とても少ないとは言えない難解な問題のほとんどは、観測によって効力を失う波動関数の"不可解な性質"から訪れている場合が多いと思われる。そして、古典系についても、現代物理学が抱えているのとおなじ不可解な問題(特に波動関数のせい。)をいまだに解消できていないとも言える。古典力学と量子力学の共通点は、ただ単純な速度論の数式でさえ、まともに記述できていないところにある。