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長編小説「ひだまり~追憶の章~」Vol.6‐②

~初秋のスキーヤー@Halloween前の神戸~

Vol.6‐②

 ナカサンはマルボロ・ライトを1本くわえ、また淡々と語り続ける。

「ミュージシャンの仲間にはさぁ、すっごい嫉妬心の深い奴と、全然我関せずって奴と、極端に二通り居るんだよね。
 ヤキモチ焼きの奴になると、毎日何度も電話して『今は何してた❓』とかしつこく訊いてるの居るわけ。俺、解かんないんだよな、感覚的に。
 それまで別々の人生送って来た同士が出逢うんだから、重なり合わない部分が有って当然だと思うわけ。一人一人違う考え方や感じ方が有るから、面白いんだよな。
 だったら、無理して合わせなくたって、互いに気分好く居られる時に一緒に居たら良いじゃないかって、思うんだ。気分好く居られる方法で。
 我慢する事も出来ないし、我慢されてるのも嫌なんだ。束縛しきってしまう事なんて、出来ないよ。俺はね」

 それはその通りだ。私にもそれは理想的な関係だし、ずっと続けられたら素敵な事だと思う。独りで何かに没頭出来る時間も欲しいし。
 が、誰とでもそんな関係が構築出来て継続出来るわけではない。大切なヒトだったとしても、すれ違いや、逆に窮屈な拘束だって起こるのだ。

「私もそう思う。そんな風通しの良い関係は、長い付き合いに成り易いし。
 でもね。自分の世界観が『これ一つだけなんだ!』って思い込んでる人は、その関係に安定してしがみついてる事で幸せを感じてる人は、少しでも離れていると、不安に成るみたい。。。」
「信じれば良いんだよ。必要以上に不安がる事なんかないよ。
 相手に魅力を感じて付き合い始めたんなら、その好きな部分を信じれば善いじゃん。何を不安がるの❓」

 私が今まで言葉に出来ないで居た想いそのものを、ナカサンは淡々と語ってくれている。いつだって、私はそういう想いを大切な人達に向けて来たつもり。けれど、他の世界も求めるうちに、戻って来ると失っている。決して私が捨てたわけではないけど。

「それはナカサンが自分だけの、自分と向き合う世界観も持ってる人やから、信じる事が出来るんやと思う。
 誰かて、唯一の大切なモノが壊れて行きそうに成ったら、信じるのが怖く成るんじゃないのかな。」
「それは、、、何かを得ようとすれば、何か失うモノがあるんだよ❓何を選び採るかだよ。。。」

 不意に、遠くを見つめる眼差しを、ナカサンは横顔で見せた。


『ブロンドTERRY』
フェンダーのテレキャスター

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