「シャポシュニコワは、いつも哀しい瞳をしていた」Vol.2
~ラジオドラマ風、ボーダーレスなSTORY~
Vol.2 @SAIPAN ISLAND
「Why❔ he looks in lovers mode.」
(なぜ❔彼はとっても好き好きモードだったわよ?)
クヒナさんが、同じ事を尋ねた。
「 Sure. But now…..that happened at once.」
(そうね。けど今は、、、あれから二人の仲は変わってしまったの。)
「…..I realize.」
(お察しするわ。。。)
ベンさんがまた、口をはさむ。
「But another guy someone else had stayed in the motel,
at that time.」
(しかしね、君の知り合いの違う男があの時、近くのモーターホテルに泊っていたんだよ。)
「who❓」
(だれ❓ )
「His name?」
(かれの名前か?)
私は頷いて、誰の名前を告げるのか、少し構えていた。
「TSUTOMU」
(つとむ。)
「….. つとむ。。。What spell the word ”つとむ” ❓ 」
(、、、つとむ。って、どんなスペルで書くの❓ )
「spell?」
("spell”?)
「 Yes.」
(そう。)
「t・s・u・ t・o・ m・u」
(T・S・U・T・O・M・U)
「Japanese❓」
(日本人❓)
「No.」
(ちがう。)
私の頭の中が混乱して来た。
「He sometimes stayed at this beach. And he knew yours.」
(彼は時々、この浜辺に滞在してたんだ。知ってたよ、君の事。)
「What's his family's name❓」
(その人の苗字は何て言うの❓ )
「….. arm …..he was called ”Uncle Taylor ”」
(えっとぉ、、、彼は〈アンクル・テイラー〉って呼ばれてた)
「Uncle Taylor……」
(〈テイラーおじさん〉。。。)
テイラーつとむ❓ (tailor‐made❓)
まさかオーダーメイド紳士服店では、あるまいし。
なんだか知らないけど、私を知ってると云ってるらしい。
「Pure American?」
(北米産まれ❓)
「No. Brazileira.」
(いいや。ブラジル人)
「ブラジル❓どうしてそんな名前❓」
「ブラジル移民なんだよ」
ベンさんが、日本語で答えてくれた。
「 I can't see. For me, it's so hard.」
(私には話が見えない。とっても難しい。)
「Heavy question?」
(難解な質問?)
「Yes. I don't know that guy.」
(はい。私その人知らないわ。)
私は、ウソをついた。
「But he's better than your husband 」
(しかし、彼は君の元夫より合うってば。)
「Please wait a moment…..he's my boyfriend's uncle.」
(ちょっと待って。彼はBFの伯父さんよ?)
「Boyfriend❔」
(カレシ❔)
「はい。BFの伯父さんが〈つとむおじさん〉」
「messageがあるんだ。手紙」
ベンさんがクヒナさんに預かり物を取って来るよう頼み、1通の封筒の中味を差し出した。
クヒナさんが、ゆっくりとうなづき、告げる。
「It’s a tight situation…..」
(それは一大事だわ。)
「部屋に戻ってから、読んでくれ」
ベンさんの言葉に、私はうなづき返した。
『つとむおじさん』は確か、亡くなられたはずだ。
彼が13歳の時に。
私は、封筒裏面の宛名を視てすぐ、5年前、川崎の〈仲見世通り〉を歩いていた時の事を、フラッシュバックしていた。
私は、気がついていた。元カレも、気づいていた。だけどそのまま、すれ違っていった。お互いに。
そしてその時、元カレは日系ブラジル人の初老の男性を連れていた。
その人物が「つとむおじさん」だと知っていたのは、結婚前に出逢っていた義治くんの伯父さんだったからだ。
なぜ、川崎の街を歩いていて、なぜ、義治くんの伯父さんが元カレと親しいのか、解らなかった。
彼らは、ショッピング・アーケードの店頭で、Nikeのスニーカーを買ったようだった。
そういえば、元カレも私も、バスケットボールの部活を高校時代に続けていた、過去がある。
別々の土地で産まれて、別々の地域に育った私たちが、付き合ったきっかけも、『バスケの部活女子』の話題からだったのだ。
ーーー to be continued.
ーーー梗概ーーー
ラジオドラマのシナリオ風に、綴ってみました。サイパン現地での会話は、同時通訳的に和訳も付記しています。
街中では多言語が氾濫。宗教や民族文化でも、男女間でも年齢や環境でも、個々に多種多様でボーダーレスな社会性。
現地滞在生活の中で回想を繰り返し、恋愛観結婚観や家族の在り方が嚙み合わない婚姻によって、真実の人生のパートナーを見失っていたと気づく。
ラストに『謎のMESSAGE』が腑に落ち、永らくの呪縛『シャポシュニコワ』も思い出さなくなっていた。
二人きりのSWEETS物語ではなく、社会とは切り離せない生活の現実として、読後に何か葛藤や思索が解ければ清々しくって嬉しいです。
ーーー梗概 了 ーーー
Vol.1➡ https://note.com/namorada0707/n/nd32fd6393900
Vol.3➡ https://note.com/namorada0707/n/n017ed645caa8
Vol.4➡ https://note.com/namorada0707/n/n0b0b17845d9d
Vol.5➡ https://note.com/namorada0707/n/n589900b4fe22
Vol.6➡ https://note.com/namorada0707/n/nb99c3e44241c