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発達障がいを抱える芸人の卵が殻を破る物語#2 「ADHDとルームシェア」
現在、自分は同じ養成所生の相方と同居している。
同居することでの費用面でのメリット、ネタ合わせがしやすいというメリットで住み始めたが、甘かった。
相方は自分から見たら出来すぎている人間だ。生活面も考え方も。几帳面だし、細かいし一般常識や倫理観も真っ当に持ち合わせている人間に見える。
大雑把、忘れ物が多い、気が遣えない、物を雑に扱う、非常識な行動、言動が多い。
こんな自分とは人間的に真反対だ。
同居し始めてすぐの頃は、生活面に対して細かく直してほしいところを伝えられた。俺は俺で、同居するということは、自分だけの空間じゃないということで気を配ろうと意識はしていた。
どれだけ気を配ろうと俺は同じことを言われ続けた。
でも最近、生活面への注意はめっきり言われなくなった。
諦められたのだ。
向こうからしたら、できてないことを注意することもストレスだし、そこが改善することに期待するのもストレスだ。
そういう行動が目に入るだけで不快、ストレスとまで言われた。
自分はどれだけ気を配って意識しようと抜けるところは抜けるし、忘れるときは忘れる。
そういう性質だから。ADHDだから。
発達障がいと診断されたことを今日(昨日)伝えた。
自分の気持ちが整理できないまま、いつもの如く、言葉が頭に思い浮かびすぎて何を言ったら分からなくなり、言葉選びを間違い、自分の気持ちと違ったニュアンスで言葉を受け取られまくりと散々だった。
そして、ついに言われた。
直らないものなら一緒に住むことは厳しいと。
そりゃそうだ。相方は保護者でもなければ、恋人でもない。そんなパーソナルなメンタルの問題までケアする必要はない。
事実、俺も迷惑を常にかけているという自覚を持って家で過ごす訳だから、リラックスできる空間は皆無だ。
正直、言われる前から限界ではあった。
だが、自分はやはり悲しかった。
障がいについて、理解はしてくれど寄り添ってはくれなかった。
「結局努力してないだけだろ」
「言い訳にしたいだけだろ」
「考えてないだけ」
「本当に反省している奴はそんな行動にならない」
全て自分が今まで相方に言われたことだ。
苦しいよ本当に。そんなこと自分が1番分かってんだよ。分かった上でできる努力をして、それでもできないから余計自分が嫌になるんだよ。
ネタ合わせも全く楽しくないし、ネタをやっている時も全く楽しくない。
人間的に合わないし、向こうは俺のことを面白いとも思ってない。
俺は向こうをおもしろいと思ってるけど。あいつの書くネタが面白くてやりたいと思ったから、俺は芸人になりたいと思った。
その衝動に従って、ここまで来た。来てしまった。
自分を信じて決断したが、結局動機が他人軸過ぎたので、今まさに自分が苦しんでいる。
他人が考えたことをやりたいという軸が1つあるから、いざ「お前はどう思う?」と聞かれた時に何も答えられない。
そんな状態が続いたら、相手からしたら「こいつ何考えてんだよ」となり、最終的に見放されるだろう。
今自分は見放される寸前だと思う。
かといって思考を明日から180度切り替えますとはいかない。切り替えるも何も、180度回転した先が”無”なのだから。
過去の選択の積み重ねが今の自分を作り上げているということを痛感している。
俺は選択を間違えたのか?いいや違う
その選択を間違いにするも正解にするも今の自分次第だと思うから、目の前のことをとりあえず片付けて行く。
とりあえず漫才のセリフ覚えないとな。