強制休養

　ずっと楽しみにして仕事してきた年末がやってきた。でも、私はなぜか床に伏している。2年前に発症したメニエール病は、なぜかこうして長期休みに、ひどいめまいを私にもたらす。

　休みだから仕事の休み連絡をする必要もない。しばらく遊ぶつもりだった予定が変わっただけ。初日は目を開けるだけで家中がグルグル回って酔ってしまうから、とにかく目を閉じて布団の中でじっとしていた。トイレに行くこともできないし、食事も出来ないからひたすら目を閉じたまま。寝たり起きたりを繰り返す。

　翌日。相変わらずめまいはあるけれど、初日よりは若干緩やか。トラベルミンを切らさないようにしながら、布団の中で寝たまま家族から支給される巻き寿司を食べる。フルーツが特に嬉しい。トイレにはエチケット袋持参で臨む。完全に一日眠って過ごす。

　3日目。めまいは残っている。ここで気付いた。発症から今まで、こんなに数日に渡ってめまいが続いたことがない。何が悪かったのか。いや、何が悪かったのかを考え過ぎて、もう考えることを止めたんだった。10年前まで難病指定されていた病なのだ。私が解明出来るはずなんてないのだ。ただただ来る発作を無になって受け入れるに限る。何が悪かったのかとかどうしたら良いのか、なんて考えだしても出口のないラビリンス。精神をやられる。それだけは避けたい。
　起き上がって歩くとめまいはするものの、横になっているだけなら辛くなくなった。家族で夜更かしをして紅白を見る毎年の恒例行事に、寝たまま参加。とりあえず楽しみにしていた行事に参加できたことに感謝。

　紅白も終わって、ゆく年くる年。12時を回って家族で新年の挨拶。それと同時に私のSNSにたくさんの「おめでとう」メッセージが溢れ出す。
　1月1日は私の誕生日。すっかり弱りきった私の目には、自分自身のSNSの陽気な笑顔のプロフィール写真さえ眩しい。メッセージも元気な私に向けられているから、まるで他の誰かに宛てられたもののように感じる。

　その内このめまいがおさまったら、また「あれ、めまいってどんな感じだったっけ」っていう日常がやってくる。きっとそれは仕事始めに合わせて来るんだろうな。楽しみにしてた長期休みは、ほぼ寝正月で終わってしまったけれど、仕事が大好きな自分が自分のボス。私にはこんな休み方で強制休養するしかないのかも知れないね。

　エンジンかけて、またポンコツながら走り続けよう。今年はちょっぴりスローダウンしながら。