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小休止

 プチ秋休み。休日らしく(?!)せっせと自転車の錆び取りをしていたら、ご近所の方がスーパーの袋を抱えてやって来て、私のそばに腰掛けられた。普段なら話しかけたりするのだけれど、とても疲れている様子だったので、私は黙々と自転車を磨いていた。沈黙でもそばに誰かがいることが安心につながることもありそう。

 しばらくすると「あの〜、これ、30分後くらいに取りに来るからここに置いておいていいですか」と言われたので、一緒に家に運ぶことにした。どれだけ重いのかと思ったら、軽すぎて拍子抜けしそうだった。それでもこの方にとってはとても重いのだ。

 その方の家はすぐ近く。私が越してきたばかりの頃、60代くらいだったのかな、小さな子どもたちを遊ばせていたら結構勢いよく話しかけてこられる方で、若い私は最初ちょっと怖いな、って思っていた。でもフレンドリーで突然自然に声をかけてこられるから、なんとなくこのコミュニティーの一員として認められてるのかな、と嬉しくも思ったもの。

 その方の歩幅に合わせて軽い買い物袋をブラブラさせながら、私はその方の声に耳を傾けていた。
「この間まで背骨を骨折していてね。自転車に乗れなくなっちゃったの。」
「歯医者に出かけたついでに買物したんだけど、ついつい自転車乗ってた頃の感覚で買っちゃって。こんなに重くなるなんて...」
「骨折してたせいで歯医者に行けなくてね。歯医者も往診があると助かるのにね」

 随分と弱々しく語るその方に、昔の面影はない。でも「骨折されたのに、こんなに歩けるほど回復するなんて、すごいじゃないですか。頑張られたんですね」と言うと嬉しそうに笑った笑顔が素敵だった。

 「自分では出来ると思っても、体がついてこないね」と語るその方は、私の数十年後の姿。いや、私はもう今既にそれを感じている。あの頃の様には出来ない。

 それは悲しみや淋しさを帯びた言葉にも聞こえるけれど、老いも死も良いも悪いもなくて、自然なこと。そしてそれをどう捉えるかは、自分次第。

 そんなことを考えた。小休止の一日。

 自転車のサビは酷すぎて取れなかった。このまま使う。

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なみお
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