日々こつこつ小説〜わらしべ長者になりたくて 第五話
その日の帰り道。
ゆうは、また少し落ち込んでいた。
『何か自分が励まされてばっかりだ。』
肩を落として歩いていると、どこからかか細い鳴き声が。
頼りない自分と重ね合わせながら、声のする方へ歩いていくとそこには一匹の子猫がいた。
「どうした?君のお母さんはどこへ行ったの?
寒いのか?」
ゆうは子猫を両手で持ち上げると、顔を近づけてじっと見つめた。
『まだ小さいのに一人ぼっちになったのか?かわいい顔して。』とジャケットの中に包み込むように抱えた。
子猫はしばらくすると安心したのかスヤスヤと眠り始めた。
そのまま子猫と一緒に家に向かって歩き始めたゆうだったが、家に着く手前になって
『でも飼えないんだ。どうしよう。ごめん。』
思い出したように子猫を道端に降ろした。
子猫は寝ぼけた顔でゆうを見ると、また眠りについた。
『ここじゃ危ないか』
ゆうは、せめて安全な場所をと思い、近くの小さな休憩所の木のそばまで子猫を抱えて行くと、
「ほんとにごめん」と小さな声でつぶやき猫の元から離れて行った。
子猫はゆうに温められてよほど心地よかったのか、眠りから覚めずにいた。
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