日々こつこつ小説〜わらしべ長者になりたくて 第十二話
その人は、にこっと微笑むとそばへ近付いて来て
「急な雨で、困りましたね。」
「良かったら、これ使って下さい」
と言って傘を差し出した。
「え?!でもこれまだ新しいし、あなたが濡れてしまいませんか?」
ゆうは慌てて、答えた。
「いえいえ、以前あなたには助けて頂いたし、
実は、これは娘の分に買ってきたのに、自分で好きな傘を買ってしまったからいらないって、今LINEが入って。自分の傘と二本も持つの、この雨の中大変だと思っていたところで。
困っている私を助けるということで、ね。」
ゆうは、どうしようかともじもじしながら傘をみた。
その人は、以前ゆうがかさをする手渡し差し上げた人だ。だからといって、あれはわらしべ長者になりたい邪な行動が失敗してのことだったから、何となく素直に受け取れなかった。
『本当の親切心ではなかったのに、こんな風に。』
ゆうは、また自分が恥ずかしくなった。
「はい。何も気にせず、受け取って。
恩人が濡れてしまうのは嫌だから。」
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「あ、ありがとうございます!それでは遠慮なく。」
ゆうは少し考えた後、お言葉に甘えることにした。
「本当にありがとうございます。」
ゆうは、お辞儀をすると頂いた傘を広げ、濡れないように身を縮め、荷物をしっかり抱えて店を出た。
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