見出し画像

ディクテーションにはワナがある!やり方と効果、そして注意点。

この記事では、ディクテーションのやり方と効果、そしてその落とし穴についてお伝えしていきます。

一般に、「ディクテーションはリスニング学習に効果的」と言われています。それはある程度、事実です。でも個人的に私がお伝えしたいのは、ディクテーションだけではリスニング力は伸びないことも多いということ。

スポーツと同じように考えるといいと思います。例えば、腹筋ばかり鍛えていても、スポーツはできるようにならないですよね。様々なメニューを効果的に組むことで、実力は伸びていくものです。英語も同じで、ひとつの練習ばかりをやると逆効果になってしまうこともあります。

もちろん、うまく使えばディクテーションはリスニング学習のいいツールになってくれます!

大事なことは、ディクテーションのメリットとデメリット、そしてディクテーションをすることの目的を知っておくことです。それらを知った上で、英語学習にうまく取り入れていきましょう。

この記事では、これらについてお伝えしていきます。

目次

1. ディクテーションが効果的と言われている理由
2. ディクテーションをやることのメリット・効果
3. ディクテーションのタイプ
4. 効果的なディクテーションのやり方
4-1. やさしい素材を選ぼう
4-2. 自分にとってやりやすいタイプを選ぼう
4-3. 実際の練習の仕方
5.ディクテーションばかりをやるのはNG!
5-1. ディクテーションのデメリット
5-2. ディクテーションの伸び悩みを解決するカギは?
6. 様々な学習法を組み合わせ、リスニング学習をより効果的にしよう!
7. 聞き取り力をグーンと伸ばすために
まとめ

1. ディクテーションが効果的と言われている理由

「英語を聞き続ける」というのは、それだけでも大変な作業です。

リスニングを勉強しようと思っても、何を言っているかわからないと眠くなってしまうもの。聞いているつもりでも、単なる雑音にしか聞こえなかったり。「一生懸命英語を聞こう!」とは思ったものの、つい集中力が切れてしまい、気が付けば全く聞いていない…なんて状況ありませんか?

こうした状況を避けるのに効果的なのがディクテーションです。

ディクテーションの練習では、聞こえてきた英語を一語一語書き取っていきます。

集中していなければ、聞こえた英語を書き取ることはできません。その意味で、ディクテーションを取り入れることで、効果の高いリスニング練習をすることができるのです。

ちなみに、「聞いているだけで英語が聞けるようになる」という宣伝がありますが、そんなのはありえません^^;ものすごく素質があって、そういうことができちゃう人がたまーにいるのかもしれませんが…。少なくとも、多くの人に当てはまる事実ではないでしょう。多くの人は、英語を聞き流しているだけではリスニング能力は上がらないと考えてください。

事実として、今多くの高校では、リスニング対策としてディクテーションが取り入れられています。「聞き流しでは効果が薄い」ということを実感しているからでしょう。定期テストでディクテーションが採用されているところもあります。有名な先生がこの方法を提唱していることが大きな原因になっていると思われるのですが、それもあって、ディクテーションは今のところ、リスニング学習の王道としての地位を占めていると言えます。

2. ディクテーションをやることのメリット・効果

では、ディクテーションをやると、何がいいのでしょうか。
先ほど、「集中して英語を聞くことができる」ということを上げましたが、それ以外のメリットとしては、自分の実力が把握できるということにあります。

英語を聞いていて、「ふんふん、わかったぞ」となんとなく英語を理解した気になってしまうことがあります。でも、実は内容を勘違いしてるとか、ある単語を別の単語に聞き間違えているとか、そういうことが結構あるのです。英語を書き取ることで、そういう「わかったつもり」を避けることができます。書き取ることに、ごまかしはききません。どれだけ聞き取れたのかがリアルにハッキリとわかりますからね。

もうひとつのメリットは、自分の弱点を分析できるということ。

例えば、ディクテーションをすることで、自分の苦手な発音を把握することができます。私の場合、thやlの発音の聞き取りが弱いということが浮き彫りになりました。そこで、これらの発音を集中練習することで、聞き取りを強化することができたわけです。

また、発音を勘違いして覚えている単語というのはよくあるものです。ディクテーションをすることで、その修正をすることもできます。例えば、私は以前、”episode”をカタカナ英語で「エピソード」と読むと思い込んでいました。でも実際は、「アパソー」に発音が近いわけです。これも、ディクテーションをすることで修正することができました。

また、発音というのも、音に幅があったりします。例えば、”talk”は人によって「トーク」ではなく、「ターク」と聞こえることもあります。こういったちがいを確認していくことができるのも、ディクテーションのメリットだと言えます。

実際に英語を書き取ってみると、意外なところに自分の弱点があることがわかります。みなさんも、自分の実力を把握し、弱点を分析する意味で、ぜひ一度ディクテーションをやってみるといいでしょう。

3. ディクテーションのタイプ


では次に、ディクテーションのタイプについて説明していきます。

ディクテーションのタイプには2つあります。ひとつめは、英文の一部だけを書き取る、穴埋めタイプのディクテーションと、英文1文1文をゼロからすべて書き取っていくスタイルがあります。

例:穴埋めタイプ
Let’s see ( ) they have in the ( ).

例:ゼロから書き取るタイプ
.音声を聞く→
(                  ).
答え→Let’s see what they have on the menu.

当然ですが、穴埋めタイプの方が簡単です。

ゼロから書き取るのはまだ難しいなと思ったら、穴埋めタイプのディクテーションから始めるようにしましょう。

聞いた英文を、ある程度覚えることができるようになってきたら、ゼロから書き取るタイプに挑戦してみましょう。

4. 効果的なディクテーションのやり方

4-1. やさしい素材を選ぼう

ディクテーションの素材としては、やさしいものを選ぶのがオススメです。英文を目で読んだら簡単に理解できるものであることはもちろん、特に初心者は、はっきり・丁寧に、そしてゆっくりめのスピードで発話されているものを選ぶようにしてください。

よく、英語の達人の方が映画やドラマなどを何本もディクテーションすることで英語力をモノにした、というエピソードを見かけます。しかし、初心者や中級者の人は真似しない方がいい、というのが私の意見です(耳によほど自信があるなら別です)。文法力や語彙力、そして発音の変化についての知識がない段階でこれを行っても、聞き取れないところだらけなので挫折してしまいがちだからです。

特に耳に自信がない場合は、まずはきれいな発話の英語を聞き取れるようになってから、徐々にカジュアルな発音に慣れていく、という方法が私個人の経験からのアドバイスです。

4-2. 自分にとってやりやすいタイプを選ぼう


先ほども書きましたが、ゼロから書き取るタイプのディクテーションを行うのには、とても時間がかかるので大変です。リスニングに慣れていない人だと、短い練習を行っても30分から1時間くらいはかかってしまいます。ですので、初心者の方は、穴埋めタイプの問題集から始めるといいでしょう。

穴埋めでディクテーション練習ができる素材としては、高校入試レベルの英文を扱ったハイパー英語教室中学英語長文 2(入試長文がすらすら読める編や、高校英語の文法を一緒に覚えられる総合英語Forest(7th Edition)音でトレーニングなどがあります。自分のレベルに合わせて適切なテキストを選びましょう。

英文をゼロから書き取っていく練習をするなら、中学の教科書を読み上げた音声を使うといいでしょう。また、NHKラジオ講座のNHK CD BOOK Enjoy Simple English Readers Short Stories (語学シリーズ) はやさしい英語ですし、かなりはっきり発話されているので、ディクテーション練習がしやすいと思います。

「これらの素材ではやさしくて物足りない」ということであれば、TOEICBridgeやTOEICのリスニングパートを使って練習するといいでしょう。短ければ10秒くらいですし、まとまった会話であっても30秒くらいの長さです。

ただ、TOEICはナチュラルスピードで話されていますので、リエゾンなど発音の変化が多くあります。このレベルになると、発音の変化についての知識がない状態でディクテーション練習するのはかなりきつくなってきます。

「スクリプトを見れば英文は理解できるのに、聞き取れない音が多い」という状態になったら、ディクテーション練習はいったんやめ、発音の変化を先に学ぶようにしましょう。


4-3. 実際の練習の仕方

実際の練習の仕方の流れは、以下の通りです。

音声を3~5回聞いて書き取る
スクリプトを見て書き取れなかったところを確認
なぜ聞き取れなかったのかを分析する
聞き取れなかった部分は発音を丸ごと覚える
数日たったら再度復習を行う
3で発覚した弱点を補強する学習を普段から行う(一番大事!)

1.音声を3~5回聞いて書き取る

音声を何回か繰り返し聞き、英文もしくは単語を書き取ります。最低3回から5回は聞きましょう。なるべくスクリプトに頼らないことが大事です。

2.スクリプトを見て書き取れなかったところを確認

「もうこれ以上聞き取れない!」というところまで来たら、スクリプトを見て英文を確認しましょう。

3.なぜ聞き取れなかったのかを分析する

次に、なぜ聞き取れなかったのかを分析してみてください。

知っている単語だけれど、スピードが速くて発音が変化していたから、単語や表現を知らないから、自分が思っていた発音と実際の発音がちがった…、など、いろんなことが見えてくると思います。それが自分の弱点になります。見つけた弱点はノートに書きとめておき、それを普段の勉強に生かすようにしましょう。

例えば、callが聞き取れなかったとしますね。

「コール」だと思っていたけど、実はalが「オー」の発音になっていた上、lが「ル」ではなく、実際は「ウ」に聞こえる結果、「コール」ではなく、「カーゥ」と聞こえた、ということがわかったとします。とすると、callは実は「コール」ではなくて、「カーウ」に近い音になることがあるということや、lの音の聞き取りに弱点があるということがわかります。

4.聞き取れなかった部分は発音を丸ごと覚える

表現や単語を知らないために聞き取れなかったのであれば、意味を調べて発音と合わせて丸ごと覚えるようにしましょう。一方、意味はわかるのに、音が聞き取れなかったという場合は、その部分を何回も聞き、その音をフレーズとしてそのまま覚えてしまいましょう。そして聞き取れなかった音をできるだけ忠実に真似て、発話練習をするようにしましょう。

6.数日たったら再度復習を行う

復習するのも忘れないようにしてください。

一度聞こえたと思っても、時間が経ったらまた聞こえなくなっていた、ということはよくあるものです。1日経ってからまた同じ素材で書き取り練習をしてみましょう。答えは覚えているかもしれませんが、耳で聞いてちゃんと聞こえるようになっていると感じれば、練習は完了です。

5.3で発覚した弱点を補強する学習を普段から行う

ここが一番大事なポイントです。

リスニング学習において大事なことは、ディクテーションをし続けることではありません。ディクテーションをすることで明確になった自分の弱点を補うことが大事なのです。そこで、ディクテーション以外のトレーニングを取り入れて学習することが必要になってきます。ここ、間違えないようにしてくださいね^^

これについて詳しくは、次の項目でお伝えしていきます。

5.ディクテーションばかりをやるのはNG!


ディクテーションは、自分が音を聞き失うポイントがある程度わかるまで行うのがポイントです。

ある程度わかったら、ディクテーション練習はそこでとりあえず終えてください。繰り返しますが、ディクテーションだけではリスニングはできるようになるとは限りません。

ディクテーションは、決して万能の方法ではありません。これさえやっていればリスニング力が上がるというものではないのです。

むしろ、やり続けることのデメリットもあるくらいです。

5-1. ディクテーションのデメリット

ディクテーションにはデメリットもあります。それは、(英語の音の性質を学んでいない状態で)やりすぎると、「一語一語聞き取ろう」という意識を強めてしまうというところにあります。結果、リスニングが伸び悩んでしまうことがあるのです。

みなさんは、「リエゾン」を知っていますか。”Check it out!”は「チェック・イット・アウト」ではなく、「チェキラ」と読まれますよね。このように、単語と単語がつながることをリエゾンと言います。しかし、英語においてリエゾンは特別な現象ではありません(ネイティブにとってあまりにも当たり前なので、アメリカ人の英語の先生の中には、リエゾンを意識していない人もいるくらいなのです!)。

英語は、単語ごとに区切らず、単語と単語をつなげるように読むのが普通です。ディクテーションをやりすぎると、「ひとつひとつの英単語を書き取ろう」と頑張ってしまうあまりに、このリエゾンに意識が向きにくくなるのです。

ディクテーションを一度でもやったことのある人は、覚えがあるはずです。inやatなどの前置詞が聞き取れないとか、aやtheが聞き取れないとか。リエゾンを丸ごと聞き落とすとか。「弱く発音される単語を、どうしたら聞き取れるようになるのか」って思ったことありませんか?

これはまさに、「一語一語書き取らなければならない」というワナにはまっているのです。私はひそかにこれを「ディクテーションの呪縛」と呼んでおります^^;

5-2. ディクテーションの伸び悩みを解決するカギは?

ディクテーションをすること以上に大事なことは、自分の弱点を取り除くべく練習をすることだとお伝えしました。

前置詞のatやin、冠詞のaやtheなどがいつまで経っても聞こえるようにならないとします。これは、弱発音に意識が向いていないからです。この場合の原因は、英語のリズムを認識した上で英語を聞くことができていないことにあるのです。

やさしい単語が聞き取れないとします。例えば、familyの発音が「ファムリ」に、cottonの発音が「カヌン」になったらわからなくなってしまう。これは、発音の変化のルールを学習していないことが原因です。

また、英語が聞き取れないのは文法力が弱いせいである可能性もあります。

私の生徒さんで、”I’ve been to Paris.”を”I’ve been to parents.”と聞き間違えた人がいます。これは明らかに、文法が身に付いていないことが原因です。音だけ聞くと、確かにParisとparentsは響きが似ているのです。どちらも2音節の単語ですからね。でも、”I have been to…”の構文を知っている人なら、toのあとにくるのは「場所」ですから、そう構えていれば、絶対にparentsには聞こえないはずです!

できないことには原因があります。それを無視してただ書き取りの練習ばかりやっていてもできるようにならないということがおわかりいただけたでしょうか。

6. 様々な学習法を組み合わせ、リスニング学習をより効果的にしよう!


ということで、ディクテーションだけをリスニング学習の方法にすることは、私はオススメしていません

私自身、ディクテーションばかりをやっていた頃は、逆にリスニング力が伸びませんでした

一生懸命やりすぎて、むしろその呪縛にかかっていたのです…。
ディクテーションをやめて別の練習をするようにしたところ、結果としてディクテーションが楽にできるようになったのです。

以前は書き取るのに30分かかっていた音声が、今では10分足らずで書き取ることができるようになりました。TOEICリスニング程度の難易度の音声であれば、90%くらいの正答率で書き取ることができます。

ポイントは、ひとつだけの学習法にこだわらないことです。

その方法が効果的な人もいるのかもしれませんが、そうでない人も多いのではないでしょうか?自分の状況に合わせて、リズム学習、発音、フォニックスなど、様々な学習法を組み合わせましょう。

そうすることで、より効果的に実力を上げることができます。

もちろん、ディクテーションは、自分の弱点を知るには確実にいい方法です。ですから、学習の補助として行うのにはオススメです。発音の変化や英語の強弱リズムを学んだあとで、もう一度ディクテーションをやってみましょう。今までより、聞き取れるようになっているはずですよ!

ちなみに、私がディクテーションを制覇できるようになったのは、リズム音読のおかげです。リズム音読を実践するようになってから、英語の聞き取り力がぐーんと伸びたのです!!

7.聞き取り力をグーンと伸ばすために


・「スクリプトを見たらやさしい英文なのに聞き取れない!」という人は音の聞き取りができていないことが原因です。対策を知るためには、以下の記事をご覧ください。日本人の耳の弱点がバッチリわかります^^

無料講座「英語が聞き取れないなんてもう言わせない!」(準備中)

・リズム音読を実践することで、英語のリズムを習得できます。英語の音が聞き取れなくて困っている…という人は、以下の記事を読んでみてください。

英語のリスニングができないのは○○○を知らないから!|なみのリズム英語|note

まとめ
ディクテーションのメリットは、自分の実力と弱点を把握できること
ディクテーションをやるならやさしい素材を選ぼう
ディクテーションばかりやってもリスニング力は上がるとは限らない
聞き取り能力を上げるためには、発音の変化のルールを知ることが大事
リズム音読がディクテーションの伸び悩みを解決するカギになる
ディクテーションだけでなく、さまざまな学習法を組み合わせてリスニング力をUPさせよう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?