品質工学研究発表大会2023
人は専門領域の掛け合わせで誰しもオンリーワンな存在になれる。そのとおりだと思う。でもそれは、ナンバーワンになることを諦めた言い訳なような気もする。
自分の場合は、品質工学×化学工学×組織開発×音楽理論×…という掛け合わせなのだが、一番希少性が高いものが品質工学なのではないかと考えていて。
この品質工学の普及活動に携わる方々なるコミュニティには達観した姿勢で世の中をみている方々が多い。そしてそれぞれが独自の切り口でスキームを作り出している。この人達に囲まれていると、自分なんてまだまだひよっこであると思わずにはいられない。
久々に丸一にスケジュールをブロックして、道中は予稿集を楽しみながら品質工学研究発表会に訪れている。
かつて感銘を受けた技術開発スキームを、その指導にあたったコンサルタントのもとで別の企業でも実践して成功させている事例があった。スキームの再現性の高さを感じる。
他方で、お金(コスト)に変わる指標で技術開発をマネジメントする提案がなされていた。エネルギー効率を指標にとるのことで普遍性が増すという。筋は通っているし、計測方法まで明示されているので納得性が高い。
また、宇宙開発を担うJAXAでは品質工学をベースとした新しい設計支援ツールの開発が進められており、なるほどシミュレーションと組み合わせる場合にはこのように技術が拡張されていくのかと、驚くばかりである。セットベースデザインといい、 多領域のパラメータの範囲集合を定義し、設計の進捗に合わせて結果を反映しながら絞り込むことで最適設計を行う。自社の生産技術部の計算部隊にも役立ちそうな手法であると思う。
品質工学の研究発表論文の特徴として、その紹介されるスキームの適用範囲の広さがあると思う。現実の職場に戻ると、過去の慣習で行われている評価法や開発の進め方が存在するが、そのあり方を見直すよい機会とアイデアを提供してくれる。
もう一点大事なこととして、経済活動における課題と対峙していることの大切さに気付かせてくれる。研究事例は、そこに困りごとやムダがあるから見出せるわけで、それを発表者の方々のように1つ抽象度を高めて捉えて問題を再定義することで、同じような問題に悩まされている方々に還元できる楽しみがある。
…さて、研究大会参加費は年会費1万円で会員になれば1万円で、それを実務に活かせば十分すぎるほど元を回収できるのだけど、なかなか周囲の人は会員にはならない。確かに、学会から提供される情報を活かすにはそれなりの実践経験が必要なのだけれど…
最近思うのは、みなそれぞれが違う専門領域で”張って”いるから、他の分野はその価値はわかっているけど距離を置くみたいなことが起きているのかなと。自分自身にもそういうところはあるかも。だとすると、どうするか。
そんなこんなの思考のループに陥り、冒頭の書き出しとなった。
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