ピンク

佐治のさば寿司は知ってるさば寿司と違うよ

先月、梨あめの話を聞かせてくれた方が、「次はさば寿司を作るよ」「見られるのは一生に一度だよ」「これもご縁だから見においで」と言われたので素直に見に行って来ました。

鳥取県佐治町。国内最大級の大型望遠鏡のあるさじアストロパークや佐治谷豆腐、佐治谷ばなしで有名な佐治です。用瀬インターで高速を降りて用瀬を抜け、山に向かいます。美しい川沿いに車を走らせると、佐治に着きます。

元小学校の分校が今は町の調理室として活用されています。言われたとおりの時間に到着したときにはすでにおばあちゃんたちはせっせと働いていました。大量の鷹の爪をハサミで輪切りにしているおばあちゃん、大量の柚子のみじん切りをしているおばあちゃん、冷凍した大量の山椒を解凍しているおばあちゃん、大量の米を炊くおばあちゃん。調理台の上には150本の塩さばの開いたのと頭。窓際に並んでいるのは見たこともないような大きな炊飯ジャー。

さば寿司作りには3日間必要だそうで、この日は最終日。最終工程。

港町で生まれた私はさば寿司といえばシメサバの押し寿司のことだったけれど、佐治のさば寿司は違いました。

炊いた米に麹を混ぜ、そこに輪切りにした鷹の爪や山椒、柚子、塩を入れて混ぜます。これがとってもいい香り。食べても美味しい。そしてそれらを開いた塩さばに挟み、ビニール袋を敷いた桶に並べていきます。この時に中に挟んだ米と麹をさらにまくようにかけていきます。1層並んだら隙間にさばの頭も並べます。頭を入れることで、味が出て風味が増すのだそうです。それを何層にも重ねます。上まで並べられたらおしまい。ビニール袋で密閉し、蓋を閉めて約1ヶ月発酵させます。年末には出来上がりです。

さば寿司は佐治ではお正月に欠かせない料理。完成したさば寿司を食べやすい大きさにスライスして盛り付け、まずは神棚にお供えします。神棚には海のものと山のものをお供えします。さば寿司は海のもの。他にもたくさんのお供え物をします。12切れずつお供えするのが伝統的なのだそうです。

さば寿司を作りながら、同時進行しているのは昼食作り。この日のメニューは里芋の炊いたの、ずいきの炊いたの、柚子の炊いたの、柚子のはちみつ漬け、きゅうりの漬物、シイラの味噌漬け焼き、お味噌汁、よもぎもち(あんこ入り)、そして新米。

あー、美味しい。なんかもう、天国。

ところで、佐治のさば寿司は、お正月に各家庭で食べられるものとのことなのです。作るところは見せてもらいましたが、完成したさば寿司を食べることは叶いますかどうか。

今もまだ幻の佐治のさば寿司です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?