土日はNPOの方の仕事です
あけましておめでとうございます。
年が明けて振り返ってみると、2021年はいろいろ良いことがあったなと思います。
ひとつには、一昨年は全く観ることのできなかったこども向けの舞台作品の公演が徐々に再開されたこと。
大好きな「人形劇団ココン」さんや、私が人形劇にささやかながらも関わることになったきっかけのような気がする「ひぽぽたあむ」のみなさんに会うこともできたのでした。
ココンさんの舞台が始まる直前、真っ暗な部屋の中に「人形劇団ココン」と書かれたフリップが照明に照らされているのを見たときにブワっと何かがこみ上げたのを感じて、これが足りていなかったんだなと気づきました。
私が10年前にNPO法人こども未来ネットワークのアートスタートに関わることになったのは徒然なるまま成り行きだけど、確かにあの時救われたんだよな、と思います。
不思議だけど。
こどもたちが、人形劇やお芝居や歌や音楽を聴いて観て、ふふふと笑っちゃったり、そわそわしたり、後ろを振り返ったり、踊り出したり。感性が揺らめいている。いい作品と、安心してその場に居られる環境と、こどもたちと全部が揃って成り立っています。その30分とか1時間とかのために、演者は一生懸命いい作品を作るし、こども未来ネットワークなどの大人は細部に注意して安心を守る。こどもはこどものままでいる。
そんな中でこどもたちがふふふと笑っているのを観て、なんだかわからないけど救われたんですよね。思いも寄らないところで人って救われるんだなぁと思ったものです。
「細部に注意して安心を守る」って、こども未来ネットワークは一体何をしているんだろうということなのですが。それがいつもうまく言葉にできない。
こども未来ネットワークでアートスターに関わる人には3種類くらいの仕事をしている人がいます。
まずはコーディネーター。こどもたちの年齢とかどんな集団だとか時期とかを考慮して作品を提案します。上演が決まったら劇団や公演主体との調整に入ります。調整内容は料金や会場や日程やもろもろです。作品を提案するためには作品情報を集める必要があるのですが、それはこども未来メンバーの観劇の蓄積や子ども劇場からの情報、演劇祭での情報収集などで決めていきます。作品情報収集はもはやメンバーのライフワーク。
次に公演当日のメイン担当者。当日の公演には一人で現地入りすることもあるし、他のこども未来メンバーがスタッフとして一緒に入ることもあります。主に劇団や主催施設(保育園・幼稚園や市町村、公共ホールなどなど)との当日の調整と運営です。会場のどこに舞台を設営するかとか、打ち合わせの進行とか、食事の心配とか。
最後に、こども未来ネットワークが主催する舞台公演などでスタッフとして動く人たち。会場設営、舞台設営の手伝い、片付けの手伝い、受付、お金の管理、会場係、記録撮影、食事の手配、場合によっては人や荷物の移動などなど。これらのことをその日のメンバーで阿吽の呼吸で行なっています。
ちなみに会場係だと、開場のタイミングを受付と演者さんと打ち合わせて参加者の集まり状況に合わせて時間ずらしたり、会場に入ってきた親子に次の行動を何気なくお知らせしたり(こっちに進んで荷物は良かったらあちらに置いてね。携帯はマナーにしてね。靴はここで脱いでね。とか)、作品によって前に小さい子がいた方が良かったり大きい子がいた方が良かったりするのでこちらも何気なく誘導したり、遅れてきた人にゆっくりで大丈夫だからねと伝えたり、万が一舞台に上がってしまう子がいたらふんわりと制止したり、泣き出したりして外に出たくなった親子と一緒に外に出てちょっぴり寄り添ったりします。もしも地震があったときに照明器具が倒れてこないようにその場を死守する役割も。そんなことをしながら、あとは作品と子どもたちの反応を楽しみます。
3種類くらいの仕事、と書いたけれど、「仕事」の範囲がどこまでなのかわからずいます。この場合は有償無償かかわらずの「仕事」です。
私は給料をもらう仕事を他にしていて、「土日はNPOの方の仕事です」と言うことがありますが、副業しているわけではないのです。「土日は趣味です」と言った方が近いのかな。「土日はボランティアです」は違う気がするのです。どんな言葉がしっくりくるのか探しあぐねています。
給料をもらう方の仕事も、このNPOの仕事が出発点にあります。「誰がいつどこで誰に何に救われるかわからないから、NPO的活動はいろいろたくさんあった方がいいと思う」というのがわたしの唯一の仕事のモチベーションであり信念です。
子どものいない私が子ども向け公演のお手伝いをしていることへの不思議さもたまに感じます。ある意味マイノリティのようだけど、そんなことも気にならないくらい、こども未来ネットワークのメンバーの特殊さがすごいです。
なんと言うか、とてもいい人で働き者で個性的な人たちです。
12月25日26日、クリスマスに公演のお手伝いをした「民俗芸能アンサンブル 若駒」さんのベイビーシアターも素晴らしかった。
わたしは万里子車に同乗させてもらって24日のお昼過ぎに鳥取の会場着。準備のために朝9時から会場入りしていた木村さんと合流。その後森本さん、永原さん、しおりちゃん、萬治さん、藤内さんと合流して受付スペースなど準備しながら劇団の到着を待ちました。大阪から車で到着した劇団のみなさんを迎えつつ、すぐに荷物を車から降ろして台車で会場に運びます。設営場所を相談して荷物を解いて会場設営。目処がたったところで劇団はホテルにチェックイン。木村さん森本さんは頼んでおいてくれた夕食を取りに。この日はクリスマスイブで、木村さんはこの日から数日ホテル滞在で家に帰れないしおりちゃんやわたしたちのためにケーキやシャンメリーまで準備していてくれた。その後ホテルの部屋でみんなでケーキ食べたりして思いがけず楽しいクリスマス。ご馳走さまでした。
25日はベイビー向けと小学生以上向けの2ステージ。
午前中の「はるなつあきふゆ あそぼあそぼ」は0〜2歳向けのベイビー向けの作品。つげくわえさんが構成・演出をされています。三味線や笛などの様々な楽器とわらべうたがちりばめられていて、とても楽しい。ねずみとねこのやりとりと舞台の木が季節によって変化する様子で、「はるなつあきふゆ あそぼあそぼ」というタイトルにああ、なるほど、と。じんわりきます。
午後の「でべそ版ずっこけ狂言 でんでんむしむし48」は、狂言の演目「いろは」「蝸牛」をこどもたちにもわかりやすいようアレンジして、さらに狂言の体験を加えた作品です。こども向けとはいえ、大人でも十分面白い。小学生くらいの子どもがクスクスと笑いをこらえきれなくなったのを皮切りに、会場のこどもも大人も笑いが止まらなくなりました。
公演の準備と片付けの間には、藤内さんが持ってきたorihimeを通りすがりのこどもたちや大人のみなさんに体験してもらったり、出展されていた山陰三ツ星マーケットのお店を巡ったり。この日は鳥の劇場さんが事務局をされて開催された「ライブエール」のイベント内でのアートスタート公演だったのです。会場となったとりぎん文化会館の他のスペースでは、tuperatuperaさんがこどもたちと「トットラ」を作るワークショップをしていたり、とりたんの学生さんが人形劇をされていたりもちろん鳥の劇場が公演をされていたりしました。
26日は雪。前日までの暖かさが嘘みたい。予報通りだったので、私たちは前日までとは違う厚手の上着を着て、雪用のブーツを履いて会場入り。大阪から来た若駒のみなさんにとっては何もかも珍しかったみたいです。雪かき用のスコップも、雪下ろし用のワイパーも、雪用のブーツも。
雪のせいか、クリスマスのせいか、広報不足のせいか、せっかくの公演なのに参加者が少なくてもったいないので急遽公演前に若駒さんが会場の外で呼び込みをすることに。いきなりなのにやっぱりプロ。一瞬でこどもたち釘付けです。素敵。わたしもチラシを持って声かけ作戦。tuperatuperaさんが直前3分前のお誘いにもかかわらず来てくれました。そして終演後「面白かった!」と感想を伝えてくださいました。嬉しい。参加人数は少なかったけど、こどもたち一人一人が楽しそうで嬉しそうでとてもいい公演でした。
こども未来ネットワーク、いい仕事してると思うんだけどな。なんだかうまく伝わらない気がするのです。自己満足なのかしら。否、そんなことはないはず。
8年前にアートスタート全国フォーラムをしたときに小泉先生が講演でお話しされていた中に「本物について」のお話がありました。生花と造花の違いは何か。どんなに精巧に造花が作られていても私たちは本物を見分けることができる。じゃあ、その本物って何かというと、「情報量の多さ」なのだそうです。生花は造花とは比べものにならない情報量を持っている。それは目に見えなくてもわたしたちにはわかるのだと。アートスタート公演も同じだと思います。30分間の公演に目に見えない情報がどれだけ詰まっているか。プロがその表現力で作品を作り、いい作品を探しているコーディネーターがそれを選び、こどもたちが全身でそれを体験できるような環境を精一杯作る。その30分間のためにどれだけ大人が時間やスキルを注いだか。それが本物かどうかの違いなんだろうと思います。本物がいいとか悪いとかではなくて、わたしたちにはその違いがわかるということ。こどもたちにもわかるということ。
なんだかアートスタート(こども向けの舞台公演)について熱く書いてしまいました。2022年もいい作品をたくさん観られるといいな。
それから2021年は「サバT」を作りました。異動先の職場の隣の席の方が休憩時間にいつも色鉛筆で描いている魚の絵が上手で、いつかこれをTシャツにしたいと数ヶ月間タイミングを狙っていたのです。「今だ」という普通のタイミングで「Tシャツにしてもいいですか?」と切り出してみたところ、「どうぞ」とのことだったので、色鉛筆画を写真に撮って加工してTシャツにして画伯にあげました。それを画伯が気に入ってくれて、職場でいつも着てくれていたところ、職場の周りの人たちも欲しいということでsuzuriで買えるようにしました。そうしたら、せっかくだからもっとたくさんの人に買ってもらって、売り上げを寄付しようよ、という人が出てきて、上司の許可取りや注文の取りまとめなど面倒なことを一切合切引き受けてくださいました。そうしたところ、たくさんの人が買ってくれて着てくれています。今のところ250個くらい売れているみたいです。びっくりです。
10年以上毎年続けていたドマーケットは2020年にはいつもどおりには開催できなくなりドマTVとして配信してもらったのですが、2021年はこれまでで一番縮小して久しぶりに開催(?)しました。今年オープンしたミカさんのお店「豆ひとつぶ」の土間で。置いたのは30cmくらいの小さな机にQRコードを載せたはがきを10枚くらい。QRコードの先はオンラインでサバTが買えるサイトです。サンプルも置かず出店しようとしていることを知って、職場の人が見本に自分のサバTやトートバッグを持ってきてくれたりしたの、嬉しかったな。
そんな感じでやりたいことをやっていたら、「おかげで楽しい夏だったわ。ありがとう」とか「楽しく過ごせたわ。ありがとう」とか言ってもらうことが増えました。びっくりです。自分らしくいることが、一番いいんですね。こちらこそありがとうございます。
2022年も良い年になりますように。
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