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怪獣と魔法と原付の世界

空は澄み渡り、空気がキラキラと輝いた
とても気持ちのいい日だった。
その日俺は近所のコンビニに原付で向かっていた。

「気持ちいいな、今日は法定速度日和だな」

そんなご機嫌な独り言を放った次の瞬間、眉間にデカめのカナブンが直撃し俺は息を引き取った。
どうやら即死だったようだ。

次の瞬間見たのは中世のヨーロッパの街並み様な光景で、大広場にいる真っ赤なドラゴンは空に向かって火を吹き、黒いマントを着た人間は水を自由自在に操って洗濯物をしていた。

そう俺は恐ろしい生物と魔法使いが共存する
「怪獣と魔法」の世界に転生してしまったのだ!

前世でアニメで見たような展開だ

しかし大冒険の予感とは裏腹に現実はとても世知辛いもので俺は今異世界で交通量調査のバイトで生計を立てている。

今日も異世界の交差点で板に張り付いたカウンターをカチカチと鳴らしている。

緋眼の翼竜が1匹   カチッ
虹翼の輝角馬が1匹  カチッ
原付が1台      カチッ

この世界にも原付はある。
むしろ原付1番が多いぐらいだ。

「怪獣と魔法と原付」の世界と言っても過言ではないだろう。

しかし今日はいつもより交通量が少ないな
いつもならもっと原付が通るはずなのに

あっそうか!
今日はこの世界の休日である
『モダン・アンティーク=グレムリンの日』だ
日本でいうところ『敬老の日』である。

だからみんな家で老魔法使いや老ドラゴンを
敬っているのだろう。

どおりで交通量が少ないわけだ。

それにしても暇だな。


爆炎を纏う獣王が1匹       カチッ
全てを飲み込む巨大オロチが1匹  カチッ
原付が1台            カチッ


やはり少ない。
いつもならこの倍、いや倍の倍原付が通る
まぁ、たまにはこんなに暇なのも良いな


俺はこの仕事が好きだ
嫌々始めたが今はこの仕事に誇りを持っている。

毒を操る神速の大蜘蛛が1匹  カチッ
原付が1台          カチッ
ムチムチのプリケツ紳士が53人、、、

「ムチムチのプリケツ紳士が53人!!!!」

現世でも見たことのないような変態が急に53人目の前を通り、俺は思わず叫んでしまった。

カイザードラゴンの寝息
又は
使い古した原付のエンジン音
ぐらい大きな声で叫んでしまった。

いや、それにしても困った
本部から支給されたカウンターはドラゴンとユニコーンとライオンと大蛇と蜘蛛と原付用のものしかない。

このムチムチのパンイチ紳士はどこに分類すればいいんだ!?

ムチムチのプリケツ紳士が93人

そう考えている間にも続々とムチムチのプリケツ紳士はやって来る。

「蜘蛛か?ライオンか?それともユニコーン?」

ムチムチのプリケツ紳士が152人

「だめだ!どこにも分類できない!!」

ムチムチのプリケツ紳士が7008人

「何が起こった!!??」

大量のプリケツの紳士がこぞって着用している
オレンジのミニスカートにより俺の視界は一瞬でオレンジに染まった。

こんなの現世で万引き犯に間違えられて真正面から顔面にカラーボールを投げつけられた時以来だ。

ムチムチのプリケツ紳士が7028人
ムチムチのプリケツ紳士が7048人
ムチムチのプリケツ紳士が7074人

だが数えることはやめない。
なぜなら俺はこの仕事に誇りを持っているから。

結局落ち着いたのは1時間後だった。

結局ムチムチのプリケツ紳士は全部で20365人通った。
数えたはいいものの、やはりどこに分類したらいいのか分からない
いやー、どうしようか、、、

悩んでいるとある男が現れた。

「すみません、竹田さん」

「あ、本部のダグラス=ペリエヌ・セピアさん」
「お疲れ様です!!」

「竹田さん、あなたにお願いがあります!!」
「今大量発生したムチムチでプリケツの紳士が世界を支配しようとしています!!」
「竹田さん、世界を救えるのはあなただけです!!」
「さぁ、行きましょう!!」

ドクンッ、ドクンッ

夢にまで見た異世界大冒険の予感に
胸の高鳴りを抑えることが出来ない。

「うわー今日かー。明日ならなー」
「すみません、行きたかったすわー!!」
「次誘ってください!」


俺はやんわり断って原付用のカウンターに20365を追加した。

俺はこの仕事に誇りを持っている。

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