新曲Butterでディスラプターからメインストリームへ(前編)〜BTSって全ての変化のシンボルな気がする・その3
全世界のARMY(BTSファンの愛称)が待ち望んだ新曲「Butter」がついに公開されました。YouTubeでは初速24時間で1.08億再生、最大同時ストリーム390万。spotifyで初日1,104万ストリーム。いずれも史上最高記録更新です。
Butterの作曲とプロデュースにはコロンビア・レコードのロン・ペリーCEO(!)やBlack Pinkをヒットさせたロブ・グリマルディが名を連ね「BTSをアメリカ市場で何がなんでもメジャーにする」という強烈な意志を感じます。(CEOが直接作曲やプロデュースに名を連ねるのはレアなことらしく米有力エンタメ情報サイトVarietyでも記事になっていました)
怒涛の新曲プロモーション~BTSは「作り込まれたアイドル」?
ButterのMVはメンバー7人の異なる魅力をアピール。
まるでアイドルグループの自己紹介のようなビデオに仕上がりました。
声の登場順に---
↓歌も踊りもパーフェクトな最年少のジョングク
↓世界で最もハンサムな男 マイペースなV (2017年1位・2020年2位)
↓整った顔立ちで美声なのにひょうきんな最年長のジン(ダンスは苦手)
↓美しいダンスに儚い声、セクシー&キュートのギャップ萌えジミン
↓リーダーでBTSの精神的音楽的支柱・ラッパーのRM
↓歌詞も声もパンチの効いた反骨ラッパーのSUGA
↓ダンス隊長で最高の笑顔・ポジティブラッパーのJ-HOPE。
3月に惜しくもグラミー賞を逃した前の英語シングル「Dynamite」発表時に比べ今回は徹底的にグローバル・マスに向けたマーケティングプロモーションを実施しているように見えます。ティザーコンテンツへの投資も半端なかった。
4/26深夜(アジア時間)にバターが溶けるアニメーションをYouTubeで突然ライブ配信し新曲スケジュールをサプライズ発表。
その後は数日置きに7人それぞれの新曲コンセプト映像と写真を出し続け…
5/5にはアメリカのラジオDJを集めた事前ツアーを組み、特別に聴いてもらい…
5/11、ビルボード・ミュージック・アワード2021 (5/23開催、日本時間5/24朝9時) での新曲の初ライブ計画を公表。
5/13、「世界最大のバンド」として世界的音楽誌「Rolling Stone」の表紙を飾り、新曲のコンセプトをリーダーのRMが「夏らしい、エネルギッシュな歌」と事前説明しました。
5/21、新曲発表15分前にメンバー7人揃ってのカウントダウンパーティ。
公開後はグローバル記者会見そして怒涛のインタビュー出演(AppleMusic, AmazonMusic, Billboardほか)、ファン向けのリラックスしたライブ配信(VLive)、MV撮影の裏側動画のYouTube配信(過去に例のないスピード投稿)…
5/23以降もビルボード・ミュージック・アワードを皮切りに米メディアのハシゴ出演が続きそうです。
よほどのファンでないと追いつけないほどの圧倒的な露出。
緻密なプロモーションの核となるMVでは、一流プロフェッショナルたちによるマーケティング戦略に乗っかって、BTSが今までファンに愛されてきた個性を分かりやすく定義しなおして演じているように見えました。文字通り完璧な「自己紹介」。
これほど用意周到に作り込まれたBTSを、見たことがありません。
「ARMY」を歌詞に入れたBTS
メンバーの個性、ありのままの7人からのメッセージ、authenticity(真実らしさ)を見せることで多くのARMY(ファン)の心をつかんできたBTS。
世界中のARMYが圧倒的熱量でSNSや音楽配信サービスを利用し続けたことが、BTSを今の世界的スターの地位に押し上げました。
今回の一連のプロモーションからは「それでは足りない、『熱心なファンが大勢いるKポップアイドル』から脱皮してアメリカ音楽業界のメインストリームに堂々と踊り出たい」。そんな事務所と彼らの強い意志を感じます。
世界有数のプロデューサーが参画した新曲Butterですが、後半のラップだけはリーダーのRMが手を入れています。
そのハイライトがこちら。「Got ARMY right behind us (僕たちのすぐ後ろにはARMYがいる)」。MVでは、メンバーたちが「ARMY」を人文字で表現します。
世界中のARMYは感涙。(私も鳥肌でした)
このあとRMは大声で「 Let's Go! 」と叫びます。
「作り込まれたように見えるかもしれないけれど、僕たちは変わっていない。ARMYのことが大切なんだ」
「一緒にメインストリームに行こう! ついてきて!!」
そんな風に聞こえました。
(後編はこちら↓)
過去シリーズのこちらも、よろしければご覧ください