古民家の耐震補強をはじめて設計した話~1/(全4回)【耐震設計にとりかかったが、壁にぶち当たる・・】
はじめに
2019年~2022年にかけて、古民家の耐震補強を2物件設計しました。
今まで、木造の構造計算はしていたのですが、既存住宅の耐震補強設計は経験がなく、まして、このような古民家の改修設計は初めてでした。
その中で、今まで知らなかったこと、気づかなかったことを得ることができたので、ここにその経験を4回に分けて書こうと思います。
一般的な耐震診断・耐震補強法とは
最初の物件は昭和39年に建てられた2階建て住宅でした。(古民家というか、少し古めの住宅です。)はじめは、他の方が担当していたのですが、途中から私も加わりました。
耐震診断・耐震補強の計算をするには、一般社団法人 日本建築防災協会が発行しているテキスト「木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づいてするのが一般的です。自治体から耐震補強工事の補助を受けようとすると、その基準にそった設計をするのが基本です。
いざ耐震診断してみると・・
ということで、その基準で設計してみると・・・大部分の壁を補強しなければいけない、という結果になってしまいました。
壁を補強するということは、一旦その壁を壊して新しくやり替えるということ。6割以上の壁にそれをするとなると・・
新築並みの費用がかかる! 予算オーバー!
また、地震に対して倒壊しないように、リビングの真ん中に壁を入れたり、窓をつぶして壁にしなければいけない。これでは、地震に強い家になったとしても、かなり住みにくい家になってしまう・・
お客様になんと説明しよう・・
何度計算しなおしても、同じ結果です。頭を抱えてしまいました。
限界耐力計算法
そこで、限界耐力計算法で、補強設計したらどうか?という案が浮上しました。一般的な耐震診断法より、さらに手間や専門知識が必要な計算方法です。どうやら、古民家には、限界耐力計算法の方が適しているらしい、ということです。
その計算法はやったことがなかったのですが、一度地元で講習会を受けたことがありました。そのテキストを開き、見よう見まねでやってみることにしました。
そうすると、最初の設計よりも補強壁を減らすことができ、リビングの真ん中の壁も不要になり、予算もプランも現実的な案になってきました。
補助金をもらうには
これで、OK! 問題解決! といきたいところですが、まだ問題がありました。
地元の自治体から耐震補強工事の補助金をもらうには、第三者機関で、その設計が問題ないことを証明してもらわないといけません。
一般的な耐震診断法であれば、県内の審査機関で審査してもらえます。
しかし、限界耐力計算の審査をしてもらえるところは、なかなかありません。
ネットで検索し、あちこちの審査機関に電話をして、みてもらえそうなところを探しました。
(次回へ続く↓)