初心者がつまづきやすい!木造の構造設計ポイント
2025年4月から、木造戸建住宅の構造計算などの基準が一部変わります。
この機会に、木造の構造設計にチャレンジする意匠設計者も多いのではないでしょうか?
または、最近の木造ブームにより、RC造やS造の構造設計者が、木造の設計するケースも多いかもしれません。
設計、計算方法や考え方については、さまざまな解説書が書店にあります。
ここでは、そんな教科書には大きく書かれていないけれど、意外とつまづきやすいポイントについて解説したいと思います。
モジュールは、910mm(900,1000)が基本
普段から木造に関わっている人なら当たり前のこと。当たり前すぎて解説本にも書かれていないかもしれません。でも初心者の方をみていると、最初につまづくところなのかなと思います。
基本の「き」ですが、柱間隔や、部屋の大きさは、910mm(900,1000)の倍数で設定しましょう。部屋なら、3640mm×3640mm(8畳)などの大きさにするということです。
なぜなら、材料(壁や床の下地材、合板)が、910×1820、910×2730など、モジュールを基本に生産されているからです。ここで、もし部屋の大きさを4100mm×4100mmにしたとすると、例えば床に910mmの幅の合板を貼っていくと、4100-910x4=460mmの端数が出てしまいます。端数分は、合板を切らないといけません。
プラン上、どうしてもそのとおりにいかない部分も出てくると思いますが、できるだけモジュールどおりにした方が、施工手間や材料の面からみて経済的になります。
また、モジュールを910mmにするか、または900mm、1000mmにするかは、地域性や工務店の仕様などもありますので、施工会社に確認するのがいいかと思います。
(私の地元では910が基本です。都会では900の場合もあるようです。)
使用できる材種、サイズ、長さを確認しよう
木材は天然の材料なので、鉄骨やコンクリートのように自由なサイズ、強度で作ることはできません。
どんなに安全な構造設計をしても、現実に存在しない材料の設計では意味がありません。
一般に出まわっているのは、国産材ならスギやヒノキ、輸入材ならベイマツなどです。
梁の幅は105mmまたは120mm。梁せいは150、180、210、と30mm刻みずつUPしていって、390mmくらいが最大でしょうか。それより大きいサイズは集成材になります。
また、集成材についても、設計者が自由に強度を指定できるわけではなく、市場にある規格は限られています。
一番注意が必要なのは長さです。例えば車庫など、大きめのスパンの架構にしたくても、その長さの材料がなければ不可能です。一般には長さの規格は4m~6m程度、集成材であっても可能な長さは限られています。
使用できる材種やサイズは、地域や工務店、プレカット工場によって異なるので、施工会社に確認することがベストです。施工会社が決まっていない場合でも、その地域で入手できる材料を調べておくことが必要です。
木造は壁式構造
これは、RC、S造設計者も勘違いしやすいのですが、
木造はラーメン構造ではありません。壁式構造が基本です。
(中大規模木造では、木造でラーメン架構をつくることはありますが)
なので、地震や風に抵抗できるのは、壁だけです。単純に、壁の多い建物が、地震に強い建物になります。(だから「壁量計算」するんですよね)
けれどそれを忘れて、柱と梁だけで壁のない(または少ない)架構をつくってしまいがちです。
そのあたりのことは、この記事で図解しています。
ということで、「壁」を意識した設計が重要です。
木造はピン接合
住宅など小規模な木造では、柱、梁の端部はすべてピン接合になります。
これが、RC、S造と大きく違うところです。
なので、地震力によって、柱、梁に曲げ応力は発生しません。
RC、S造に慣れていると、ここであれ?と思ってしまうのですが。
地震力を負担するのは「壁」だけです。
ピン接合なので、もちろん、柱、梁端部の曲げモーメントはゼロとなります。主に曲げの検討を行うのは、長期荷重により梁中央に曲げモーメントが生じる時です。
木造は、柱、梁、壁、床部材が、積み木のように積み上がっていいて、部材端部は軽く留め付けてあるだけ、というイメージが近いのかもしれません。
接合部、仕口に注意
他の構造でも同じですが、柱と梁、梁と梁の接合部に注意しながら設計します。小さな梁で大きな梁を受けることはできませんし、高さ方向に段差が生じる場合は、おさまるように工夫が必要です。
組み立てる順番を想像しながら、構造部材を決めていきます。
また、上図のように、仕口部分は、柱や梁の断面が「ほぞ」など木組みのために欠損します。なので、例えば梁は120mm×240mmの100%の断面で計算するのではなく、設計者判断にもよりますが、90~70%に断面を低減して計算することが一般的です。
バルコニーや庇
バルコニーや庇は、片持ちで梁を出すことになりますが、木造は基本ピン接合なので、RC造やS造ほど自由な場所に出せるわけではありません。
木造で片持ち梁を出す場合は、下図のようになります。
直行梁や柱の上に、天秤のように跳ね出すことになります。
直行梁を下げることになるので、その段差をどう処理するか、考えなければいけません。
庇や軒(のき)部分は、上図のように垂木や母屋を持ち出すことになります。
片持ち部分の注意点は、部材サイズは、許容応力度より、たわみで決まることが多い、ということです。庇やバルコニーは、たわんでいると、外部からも見えやすいので気をつけましょう。
また、特に屋根は、長期応力より、吹き上げの風圧力の方が大きくなる場合もあるので、風圧力で断面サイズが決まることも多いです。
さいごに
他にも木造設計の注意点はいろいろありますが、キリがないのでこれくらいにしておきます。
解説本も多く出ていると思いますが、私が実務を勉強する時にお世話になった本は、これです。
この本の順番どおりに伏図をトレースしていくと、木造の考え方がわかります。
スパン表や、片持ち梁の考え方についても書いてあります。
いろいろ書いてきましたが、これは私が木造を始めたときにつまづいたことです。
仕事を始めた当初は、RCやS造の構造設計をしていたので、
「RCやSと同じように設計すればいいや」
と思っていたのですが、
「あれ? 全然ちがうやん!」
と思ったのが、上記のことでした。
おせっかいですが、この記事が誰かの役に立てばいいなと思います。
質問やご意見あれば、コメント欄によろしくお願いします。