通貨の価値は相場が決める


 まずお金や通貨について、書いてみようと思う。19世紀〜20世紀初頭まで、多くの国では『金本位制度』が採用されていた。

 これは通貨の価値を保証するため、各国の中央銀行が金を蓄え、通貨を金で交換できると約束する制度で、これによって通貨が国内で使われるようになっていった。当時、通貨はそれほど信用されていなかったんだね。

 しかし、金の価値には希少価値があるため、世界人口の増加に伴い、十分な金の蓄積が難しくなった。すると通貨供給量が人口に対して相対的に減少してしまったんだ。
 ここで重要な経済における原則がある。

・需要が増えると価格が上がり、減少すると価格が下がる。
・供給が増えると価格が下がり、減少すると価格が上がる。

 現在は、株式市場、債券市場、為替市場など、あらゆる市場で需要と供給(両方合わせて需給と呼ぶ)によって価格が変動している。もちろん、これは絶対的な法則ではなく、世界貿易の活発化により新たな需要や供給先が出現することもある。

 話を戻すと、金の蓄積が難しくなったことで新たな通貨の発行が制限され、相対的に通貨の価値が上がっていった。一方で貯金志向が強まり、同時に物が売れないため、物価は下がってしまう。

 これをデフレと呼ぶのだけれど、デフレが続くと経済が停滞する。通貨は本来、経済を活性化させるために作られたものなのに。つまり経済活動を行うには十分な通貨供給量が必要になるんだ。

 けれど単に通貨供給量を増やせば良いわけではない。供給量が過剰だと、通貨の相対的な価値が下がり、物価が上がる。通貨が信用されていない時代なら、価値が無くなってしまうかもしれないよね。

 そこで各国は、金のような保証がいらない代わりに、国が通貨の価格を管理しつつ、基本的には相場による価格変動を認めることにした。

 例えば人々が、通貨に十分な価値がないと感じれば、他の通貨や物に変えることができる。これによって通貨の価格が下落し、やがて適正価格になる。逆にある人が通貨に価値があると主張しても、市場価格を参考にして売買を行わなければならない。

 相場を健全に維持するためには、大切なポイントがある。それは売買取引が行われる絶対量があることだ。

 この事を市場の「流動性」と言うのだけれど、流動性が低い状況では、売り手や買い手が十分に存在しないため、売買契約の成立に時間がかかる。

 このことが原因で、少数の取引者が大きな取引を行うことで価格が大きく変動するかもしれない。一方、流動性が高い場合は、多くの売り手と買い手が存在するため、価格変動は抑えられ、市場価格はより安定するんだ。

 ちなみに「流動性」という言葉は通貨や労働人口など、市場に関わる言葉としてよく使われるので、覚えておいた方がいい。

 こうして通貨は、市場に価格を委ねることで、発行国の保証がなくても、信用できる価値を持つことになっていった。

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