【2024年度】プレ企画-2「世界一幸せな国、デンマークの人づくりとは?」の様子(前半)をお届けします|北欧デンマーク流の探究学習を学び・実践する「なめりかわ未来学校(サマースクール)」
対話×体験で探究力を育むデンマーク流の学習を、異年齢で実践するサマースクール「なめりかわ未来学校」。
2023年に立ち上がった「なめりかわ未来学校」ですが、毎年試行錯誤しながらパワーアップした企画を用意しています。
2年目である2024年度の新たな取り組みとして、「なめりかわ未来学校」の特徴や大事にしていることをさらに多くのみなさんに知っていただく・体験いただく機会として、プレ企画を2回開催しました。
<2023年サマースクールの様子はこちら>
<2024年プレ企画第一弾はこちら>
世界一幸せな国、デンマークの人づくりとは?
今回は2024年5月22日(水)に開催されたプレ企画第二弾「世界一幸せな国、デンマークの人づくりとは?」(オンライン)の様子をお届けします。
「なめりかわ未来学校」の特徴のひとつにもなっている「北欧デンマーク流」を現地在住の針貝有佳さんのお話を交えて紐解いていきました。
針貝有佳(はりかい・ゆか)
早稲田大学大学院・社会科学研究科でデンマークの労働市場政策「フレキシキュリティ・モデル」について研究し、修士号取得。同大学・第二文学部卒。2009年12月に北欧のデンマークへ移住して、デンマーク情報の発信をスタート。首都コペンハーゲンに5年暮らした後、現在はコペンハーゲン郊外のロスキレ在住。著書に「デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか」
「なめりかわ未来学校」とは
まず、イベントのイントロダクションとして、なめりかわ未来学校協議会の一員である株式会社Laere(レア)外川綾音(以下、外川)から「なめりかわ未来学校」の紹介を行いました。
外川:「なめりかわ未来学校」は一言で表現するならば、「社会参画意識を育む学びと遊びの場」です。
主な対象は、小学校高学年と中学生で、学び・遊びながら滑川について知って考えてもらいたいということで始まりました。結果的に、そこに集まった大人や高大生も共に汗をかきながら一緒に地域を探索し、全員で対話と内省を繰り返しながら滑川の未来について考える場になっています。
住みよい滑川、よりよい滑川の未来を作っていくのは特定の誰かではなく、そこにいる一人一人に未来をつくっていく役割と力と声があると私たちは考えています。
外川:4日間のサマースクールでは、参加者のみなさんは企業見学や市内の主要施設の訪問、グループワークなどを通して自分の「志(こころざし)」を立て、滑川の未来を面白くするアイデアを提案しました。未来について語る時には大人も子どもも、役割に違いはなく、フラットに話すことが重要ということを体感しました。
「なめりかわ未来学校」のキーワードは、「志をもって動く」「異年齢での対話と協働」「地域での実践」「学ぶことを全力で楽しむ」などです。そして、これらの要素は北欧の教育で重要視されている要素であることもあり、「北欧デンマーク流」もキーワードのひとつとして挙げています。
チェックイン!
外川:「なめりかわ未来学校」では、一人一人の声を大切にしているため、お題に対して全員が思ったこと・感じたことを一言ずつ言う「チェックイン」を始まる時にしています。本日も「チェックイン」から始めていきます。
チェックインのお題は「今日のイベントで楽しみにしていることはなんですか?」。参加者のみなさんから思い思いの「チェックイン」がZoomのチャットに投稿されました。
また、この日に特別参加をしていた滑川市 柿沢昌宏副市長(以下、柿沢)、上田良美教育長(以下、上田)からも一言いただきました。
柿沢:みなさんご参加ありがとうございます。去年から始まった「なめりかわ未来学校」を楽しい学校だということを知ってもらいたいです。
上田:滑川の教育はとてもいい教育をしてもらっています。普通の学校もとても楽しいのですが、「なめりかわ未来学校」という特別な枠がひとつあるということで、子どもも保護者のみなさまも新しいことに挑戦できる場になることを願っています。いろいろな声をお聞かせください。
デンマークの人づくりとは?針貝有佳さんより現地レポート!
全員「チェックイン」をしたら、デンマーク文化研究家であり、現地で子育てもされている針貝有佳さん(以下、針貝)をお招きし、「デンマークの人づくりとは?」についてお話いただきました。
「なめりかわ未来学校」でも取り入れている「北欧デンマーク流」とはどんなものなのでしょうか? そして、私たちはそこからどんなことを学び、取り入れられるのでしょうか?
針貝さんが「デンマーク文化研究家」になるまで
針貝:北欧・デンマークからお届けします! こちらは青空で、気持ちのいい気候です。
私は、もともと大学院でデンマークの労働市場政策について研究をしていました。ただ、その時は研究したことが消化不良に終わってしまい、理論はわかったのですが、実際のところはよくわからないという感覚が残りました。そのあと、デンマークに移住して、頭にあったことと実際が繋がった感覚がありました。それからデンマーク文化研究家として、現地情報を発信しています。現在は在住15年目。家族はデンマーク人の夫、小学生の子どもが2人います。
2023年の11月に「デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか」という本を出版しました。デンマークは国際競争力が2年連続1位になりましたが、彼ら・彼女らは4時に帰ります。「なぜそのようなことが実現できるのか?」ということを書いています。
いくつかポイントをご紹介します。
ひとつは大切な時間を死守してワークライフバランスを取ることです。
また、デンマークの職場文化として、どんどん挑戦して、どんどん軌道修正していくというスタイルがあります。
それから、信頼ベースのマクロマネジメント。これは細かく従業員を管理するのではなく、一人一人に任せるマネジメント方法です。社会全体としては、適材適所ができていると感じています。何のプロフェッショナルになるのかということを考えながら、それを目指して教育期間、そしてキャリアを積んでいる人が多いです。
もうひとつは、デンマーク人の仕事観が競争力に繋がっています。デンマークでは、仕事は自分のアイデンティティと直結しています。自己紹介の時にどんな仕事をしているのかということを必ず聞かれます。それは、その人の関心があることを仕事にしているということを前提にしているからです。
本を書き終わって感じたことは、「デンマーク人の働き方のマインドの根っこはデンマークの教育で作られている」ということです。
デンマーク子育て驚きエピソード
ここから少しずつイベントのテーマであるデンマークの教育にお話が移っていきます。
本題の前に針貝さんがデンマークで小学生のお子さんの子育てをしていて驚いたエピソードを紹介いただきました。
針貝:学校での保護者面談の内容は、勉強の状況よりも、「安心して楽しく通っているかどうか」「友達との関係」を中心に話します。
また、デンマークには塾はありません。サッカー、歌、ダンスなど勉強ではないことを習い事としてやっています。
保育園・幼稚園では、木登りをしたり、小刀を使ったりします。危ないことを遠ざけるのはなく、「正しい使い方をすれば安全」ということを教え、「やりたい!」という気持ちを最大限に尊重し、その子が試行錯誤をするプロセスを応援します。
一番驚いたことは、子どもが小学校に入学して最初の保護者会で言われたことです。「これから文字を勉強しますが、スペルミスを直さないでください」と保護者全員に対して言われました。なぜかというと、字を書き始める時に「文字、言葉、文章を書きたい!」という気持ちが一番大切で、正しく書けるかどうかは二の次、三の次。間違いを指摘すると、「やりたい!」気持ちが一気になくなってしまうという理由でした。間違いだらけでも書き続けていれば、そのうち本人が自分で気がついて、自然に直っていくので大丈夫だと言われました。
デンマークの人づくり、そのエッセンスとは?
針貝:失敗してもいいから「やりたい!」気持ちを大切にどんどんやってみる。この考え方が小学校だけでなく、ずっと続いていくのがデンマークの教育スタイルです。それが働き方にも反映されているのです。
デンマークにあるデザインスクール・コリングの校長先生にインタビューをした際に「外国からの留学生がまず知らなければいけないことは、『私たちは自由である』ということです。ついつい『正解』があるのではないかと考え、次は何をしたらいいかを聞いてしまいます。しかし、デンマーク人学生は自分でどんどんプロジェクトを進め、わからないことがあったら先生に聞くスタイルなのです」とおっしゃっていました。
その学校の学生であるエミリーさんは「デンマークの自由で失敗をしてもいい環境が創造性を伸ばしてくれた」とコメントをしていました。
デンマークの教育のスタイルとして、勉強をガツガツ頑張るというよりは、バランス重視でいろいろな体験をする。机に向かうというよりは、体験、対話、議論を通して学ぶことを重視します。
知識を暗記することよりも、知識をどのように使うのかを自分で考える力を大切にします。アウトプットするために、インプットがあるという印象があります。ですので、授業も受け身だけではなく、参加型、グループワークが非常に多いです。
その中で、他の人と比較・競争するのではなく、その子自身の成長プロセスを見ていきます。減点方式というよりは、その子の得意を伸ばしていきます。不安を煽るのではなく、安心できる環境の中でどんどん挑戦できるようにしていきます。
教育のプログラムの中で、インターンや企業とのコラボレーションが多く入っています。その実践を経ながら、いま自分が学んでいることがどのように使えるのかということを体験していきます。ですので、教育期間から将来働いている時のイメージがしやすくなります。そういう意味で、教育と働くこと、社会が密接に繋がっています。
「北欧デンマーク流」、日本で取り入れられることは?
現地での子育てエピソードを交えつつ、デンマーク教育の特徴を共有してくださった針貝さん。では、日本の教育のいいところもある中で、私たちはどのような点を取り入れられるのでしょうか?
針貝:日本の持っている素質や気質に、デンマークマインドがかけ合わさったところにいい人材が育つのではないかと考えています。
日本の強みは、基礎知識が高い水準にあるところだと思います。オールラウンドにさまざまな知識がしっかり身に付きます。デンマークは、本人の意思に任せている分、基礎が抜け落ちていて穴がある部分もあると感じます。聞いている保護者の方で、悩んでいる方がいらっしゃれば、日本の中で勉強が遅れているということは全く気にしなくていいと個人的には思います。なぜなら日本では求めているレベルがとても高いからです。
それから、日本人は勤勉で真面目です。誠実さや真面目さは、どんな国の人にもすごく信頼されます。また、とても探究心があると思います。職人気質で、やり始めるとそれを極める力が強いです。そのようなことをベースに持ちながら、語学力を伸ばし、世界の人とコミュニケーションができるようになり、デンマークマインドを持つとどこでも活躍できる人材が育つのではないでしょうか。
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前半はここまでになります。
後半では、滑川市柿沢副市長、上田教育長も交えた対談セッションの様子をお届けします。お楽しみに!
テキスト:なめりかわ未来学校協議会 /
株式会社Laere 外川綾音
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