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罪悪感抱くくらいならもらっとけよ

 仕事を終えた。

 私は学校を出るとすぐ両耳にイヤホンをして、クリープハイプの「チロルとポルノ」を何回も繰り返して聞いていた。

 歌詞考察を読んでいると、バスが駅に着いた。

 バスを降りると、選挙活動をしている方がチラシを配っていた。

 チラシを私の前に差し出してきた人が、なんて言ったのかも分からなかった。

 なんなら、何か言ったのかどうかも分からなかった。なんなら、おじさんだったかおばさんだったかも分からなかった。

 私は顔も上げずに、軽く会釈をして、通り過ぎた。「私疲れてるんで」とでも言うように。

 でもその数秒後には、「通り過ぎてしまった」に変わった。罪悪感に襲われた。

 いま私は、あの人を傷つけやしなかっただろうか。

 迷惑をかけられたわけでも、嫌な思いをさせられたわけでもなく、なんなら私たちのため、この国のために立ってくれている人に対して、私は顔も上げずに無視をしたなぁ。

 振り返ると、後ろを歩いてくる人でチラシを手にしている人はいない。

 自分だったらどう思うだろうか。

 本当にこの国の人間は政治に興味がない、こんなに課題があるのに、自分たちの国なのに、平和ボケしやがって、自分たちだけ頑張ったってどうにもならないのに、、、クソ国民が。

 これくらいは思ってしまうだろう。

 それともあの人たちは、それくらいは当たり前だと割り切れるほどに強いのだろうか。

 なんて、こんなこと考えるまで後悔するなら、もういっそ最初から、受け取ればよかったんじゃないか。

 興味があるとかないとか関係なく、その人に少しでも嫌な思いをさせないため、という目的で。

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