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「彼女」と「私」

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155cmの「彼女」への、170cmの「私」の片想い短編集。時系列順不同。
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四月

四月

昼間にタイムスリップものの映画を観たからだろう。眠りの世界で私はタイムスリップしていた。

少し遠くにいる彼女の顔が、私の瞳いっぱいに映る。まだ少し野暮ったい顔。笑っている。輝いている。好きだ、と思う。真新しい制服の人の波の中で、彼女の姿だけがはっきりと認識できる。まるで自ら光を発しているように明るい姿が、こちらに近づいてくる。瞳がぶつかる。彼女がゆっくりと私に笑いかけるあいだ、私は艶やかに濡れた

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桜

三月上旬のくせに、校門横の桜は満開だった。白い看板に『〇〇高校卒業式』の黒い文字。最後のホームルームで担任が
「君らのために今年は早く咲いてくれたんじゃないかな」
と嬉しそうに言っていた。

枝が全く見えないほど満開の桜を見あげる。花びら一つ一つが全部同じ色をしている。光に透けて薄くもならないし、重なり合っているのに濃くもならない。べったりとしたピンク色。背景にある雲一つない空は、のっぺりとした青

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その写真

その写真

その写真は、彼女と、それを撮ってくれた友達のスマホの中に、まだ眠っているのかもしれない。

私は恋をしていなかった。皆がそう思っていた。私もそう言い続けていた。心の透きとおった人がその写真を見たら、きっと信じないだろう。

その写真に写る私の顔は、恋をしていた。橙色の夕陽を受けて、頬を桃色に染めて、蕩けた笑顔で写る私。隣に写る彼女に顔を寄せて、でもくすぐったくて寄せきれなくて、照れている私。

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