シェア
Name
2023年10月27日 14:36
昼間にタイムスリップものの映画を観たからだろう。眠りの世界で私はタイムスリップしていた。少し遠くにいる彼女の顔が、私の瞳いっぱいに映る。まだ少し野暮ったい顔。笑っている。輝いている。好きだ、と思う。真新しい制服の人の波の中で、彼女の姿だけがはっきりと認識できる。まるで自ら光を発しているように明るい姿が、こちらに近づいてくる。瞳がぶつかる。彼女がゆっくりと私に笑いかけるあいだ、私は艶やかに濡れた
2022年4月21日 19:11
三月上旬のくせに、校門横の桜は満開だった。白い看板に『〇〇高校卒業式』の黒い文字。最後のホームルームで担任が「君らのために今年は早く咲いてくれたんじゃないかな」と嬉しそうに言っていた。枝が全く見えないほど満開の桜を見あげる。花びら一つ一つが全部同じ色をしている。光に透けて薄くもならないし、重なり合っているのに濃くもならない。べったりとしたピンク色。背景にある雲一つない空は、のっぺりとした青
2022年4月15日 05:07
その写真は、彼女と、それを撮ってくれた友達のスマホの中に、まだ眠っているのかもしれない。私は恋をしていなかった。皆がそう思っていた。私もそう言い続けていた。心の透きとおった人がその写真を見たら、きっと信じないだろう。その写真に写る私の顔は、恋をしていた。橙色の夕陽を受けて、頬を桃色に染めて、蕩けた笑顔で写る私。隣に写る彼女に顔を寄せて、でもくすぐったくて寄せきれなくて、照れている私。私