[最終夜] 完結記念 ゆりぜんアフタートーク vol.3
vol.1は、こちら。
vol.2は、こちら。
◎簡単&ヘルシー! ゆりぜんレシピの裏話
くま ちょっと薬膳の話もしましょうか笑。
岡田 そうですね! ゆりぜんのぜんは薬膳のぜん……。
みそ 私が一番回数つくったのは、ゴーヤチャンプルとシナモン生姜ココアですね!
くま あのゴーヤーチャンプルは名作ですね! びっくりするほどおいしい。
岡田 ゴーヤチャンプルおいしいですよね~! 私も夏はよくつくりました。
みそ すっごくシンプルなのに、ゴーヤってこんなに食べやすくなるんだ! ってびっくりしました。
くま 薬膳的にも夏におすすめだそうで。
桃白 そうですね、ゴーヤの苦味は熱をさまします。
岡田 あと、ゆりぜんを担当するようになって、コーラを控えるようになりましたね。
みそ 岡田さん、コーラの消費量すごかったんですよね、確か笑。
岡田 砂糖摂りまくり人生だったんですけど……。
くま 白砂糖を控えると効果ありますよね。岡田さんは偏頭痛が治ったと言ってましたね。そんなふうに、ゆりぜんを読んだ人がすこし気づいて変わってくれるといいなあと思って書いていました。わたしも自分がからだを壊してぶっ倒れたのが薬膳に興味を持つきっかけでしたから。
岡田 ヒエ
くま 若いうちはいいのよ、若いうちは……。
桃白 やっぱり30歳を超えるといろいろ不調がでてきますよね。
くま だから、ゆりぜんキャラも30オーバーになるという。
くま シナモン生姜ココアは「えっ、これココア?」って味じゃなかったですか? わたし、初回にこれかーって、実はかなり採用を悩んだレシピです。おいしいかなこれ? って。
みそ 確かにそうですね! ココアというと甘くてクリーミーな飲み物のイメージだったので驚きましたが、スパイシーな感じが新鮮で私は好きでした! 元々チャイとか好きだったので。
くま ああ、チャイ的な感じですね、そういえば。甘くないチャイ。わたしは甘いココアが好きなので、桃白さんに「本当にこれでいいの?」「この味で正解?」って何回も聞いて。ほんとは別のメニューを提案してほしかったんだけど、「これでいい」って無慈悲にスルーされて笑。
桃白 シナモンは末端の毛細血管の血流をよくするし、からだもあたたまるから冬はおすすめですよ。
くま うん、薬効は確かだからね笑。みそ先生が気に入ってくれてよかった!
みそ はい、お気に入りです! 飲み物がないと仕事できないので。今年もそろそろ生姜ココアの季節ですね~。
岡田 生姜は「生」と「乾燥」で効果が違うというのもゆりぜんで得た知識ですね、そういえば!
桃白 生の生姜は体内の熱を体表まですばやく運ぶので、体表からさっと熱を逃す働きがあります。風邪のひき始めにいいですね。乾燥した生姜は、内臓をしっかりと温めるので、冷え性の人はそちらのほうが。
くま 奥が深いですよね。ゆりぜんには、そういう豆知識をいっぱい散りばめました。桃白さんと話してると、「へぇ〜!」と思うような中医学の知識がいっぱい出てくるんですよ。それをメモしておいて。実際にはいつももっとマニアックな話をされてまして、あれでもだいぶ簡略化してお伝えしています。
桃白 中医学的な説明をストーリーに混ぜ込めるの、すごいよね、くまこせんせい。
岡田 褒めがここで。胸アツ展開。
くま もっと褒めて!
みそ 説明が物語と一緒にすっと入ってくるので本当にすごいです!
くま ヤッターヾ(≧∇≦*)/ じつは結構苦労してるんです。一般的な百合小説を書くよりも、ものすごくむずかしいですね、わたしにとっては。カードノベルのフォーマット(ページ内の文字数制限)もハードだし。
ところで薬膳の話に戻りますが、鱈と山芋のあったかとろろ蒸し! あれも、わたしすごくびっくりしたんですよ。こんなに簡単に料亭みたいな薬膳がつくれるの!? って。桃白さんすごいなと思った回です。
桃白 あ、ほめられた。
岡田 すごくきれいなお料理ですよね~! 品がよくて。
くま そうなの。桃白さんの提案って、仕上がりのルックスも抜群なのがいいんですよ。わたしの中の薬膳のイメージを変えたというか、簡単にこれがつくれるならつくってみたいというか。
みそ まだお魚系をつくってみてないので挑戦してみます! 山芋、スーパーでよく見かけるようになってきたので。
桃白 山薬(山芋)は最強ですよ。「気」と「陰」を補うので、わたしたちのような女性には最適です。
くま わたしたちのような?
桃白 年齢を重ねた熟女的な。
くま 桃白さん、お二人はまだ若いのよ?笑
桃白 でもどっちかというとこっち側に近いはず。
くま いや〜、みぃこちゃん側じゃない?
桃白 まあ、でも女性は血とか潤いとか失いがちなので、日頃からそういうものを補っていくことはとっても大事なのです。
くま そうですね、若いうちから。魚といえば、杏樹さんがつくった魚の蒸し物、白身魚の清蒸。あれも簡単で、おいしくて、すごく見栄えのするレシピですよ。
みそ おしゃれなレシピでしたよね! 華やかで杏樹さんらしいというか。
岡田 あれめちゃくちゃおいしそうでした! いつかつくる!!!という気持ちはメラメラしています!
くま あのレシピ、本当は丸の白身魚を一匹使う予定だったんです。それで金目鯛を買ってきて桃白さんと試作してみたら、蒸篭(せいろ)に入らない! これは家庭では無理だとなって切り身に変更しました。試作は大事ですね。
みそ 確かに切り身のほうが挑戦しやすい気がします!
くま そうなんです。杏樹さんの性格的には「どーんと丸ごと一匹いくわよ〜!」って感じなんですけど、そのようにご家庭でつくりやすいレシピとなっています。
みそ 初心者にとってほんとうにありがたいことです。
桃白 これが最初の試作。せいろからはみ出る金目鯛。
岡田 立派だ……!
みそ これはこれでなんだか縁起がいい見た目ですね笑。
岡田 確かに杏樹さんぽい。
くま 探しまわってやっと見つけたお高い金目鯛ちゃんがボツになっちゃって笑(※金目鯛は高級魚です)。ゆりぜんの原稿締切は配信の2ヶ月前だったので、試作時に旬のものを入手するのが大変で……。裏でそんな苦労もしています笑。
桃白 青蜜柑もなかったですね、スーパーには。
くま そういうマニアックな食材を提案するのが悪い。
桃白 桃白わるくない。薬効があるから仕方ない。
くま でも、柚子とかすだちでもいいんじゃないの? だめ?
桃白 あれは青い温州みかん(青蜜柑)にしかない効能なんですよ。あの時期の摘果みかんにしか。
くま そうだった、試作のときもそう言われて却下されたんだった。(そして探しまわる)
みそ 確かに旬を先取りして試作となると大変ですよね。おかげで配信時には、読んですぐ試せるようになってるわけですが。
くま 配信月には、旬まっさかりですから(^^)。旬とは関係なくマニアックな食材もけっこう登場したのですが、熱心に探してつくってくださる読者さんもいて嬉しかったですね。棗(なつめ)とか、当帰(とうき)とか。
岡田 ほぼ毎回つくってくださる方いらっしゃいましたよね! ありがたいやらすごいやら!
くま 漢方薬寄りの生薬はなるべく避けたのですが、当帰くらいならいいかな〜と。読者さんから時々TwitterのDMにお問い合わせがきました。どこに売ってますかとか。薬膳なつめ茶のなつめがなかなかとけないと苦心されているツイートを見かけたり。
桃白 なつめはかなりコトコト煮ないとね。
岡田 なつめ、確かになかなかとけなくてびっくりしました。
くま ゆりぜんレシピはどれも簡単ですけど、時短レシピはないんです。あえて入れなかった。
みそ たまにはのんびり煮るのも大事ということで。
くま そうそう。そういう時間をもってもらいたいという気持ちがあって。いま、みなさん忙しいから、ゆりぜんはずいぶんのんきな作品に見えるでしょうけど、でも薬膳って食べればすぐ効くというものではなく、どちらかというと生き方の提案なんですよね、と私は思う。
桃白 くまこせんせい、すばらしい。
くま 白百合先生は生き方を提案している。からだを壊したみぃこはそのことに気づき、食養生を通じて豊かな時間にも気づいていく。
みそ ゆりぜんはそういう作品ですよね、刹那的に萌え! とかじゃなくて、ゆっくり心とからだを育んでいくというか。
くま それです! 百合作品で、そういうテーマを表現したかった。
桃白 みそせんせい、すばらしい。
みそ シニア百合は150キロの剛速球じゃないかもしれないけど、絶対いつかじわじわ届くと思うんです。
くま シニア百合は違う意味で剛速球な気もしますがw
みそ www
くま でも、そうですね、じわじわ届くといいな。いま、百花繚乱、さまざまな百合作品が出てきていますが、ゆりぜんが描いたテーマは色褪せるものではないし、骨のある取り組みを必ず高く評価してくださる人たちが出てくると思う。
岡田 歴史の1ページが。
みそ 開墾ですよ開墾。
くま このチームで開墾しました。ものすごく手間ひまかけて!
岡田 でも本当に生き方の話だと思いますし、みんな命ある限りは生き方に悩むわけですから。いつか誰かの助けになると思っているので、広く届けるためにもいっぱい売ります!
みそ 人生のお供になる作品だと思います。レシピも一緒に何度も読み返して。
くま 桃白さんのおかげで、専門家が読んでも納得の内容ですよ。
桃白 体質や体調、食べるもので、人の性格って変わってきますが、ゆりぜんはそれもうまくキャラクターの性格にとりいれてましたよね。
くま 桃白さんから症例によって出てきやすい性格や言動、顔色、仕草などまで教えてもらって、そこからキャラクターをつくっていました。たとえば、美咲さんは気虚なので細身で青白く、いつも憂鬱そうな気配がある。そこが儚げで美しいのですが、思考がどうしてもネガティブになってしまう。そうした中医学的なアドバイスがあったからこそ、そのキャラクターらしいせりふや行動、ひいてはストーリーにつながっているんです。
岡田 今日、あらためていろいろ伺って桃白さんの知識のすごさがわかりました……。
くま 単なる変な女ではないのよw
桃白 ほめられたんだよね?
岡田 褒めです!!!!!!! 桃白さんはすごいという!! 褒めです!!
くま みんなやさしいね、桃白さん。
桃白 ありがとう。やさしくされて生きていける。
岡田 それを物語に落とし込むくまこさんも、バチっとハマるイラストを描いてくださるみそ先生もすごいです!
みそ ほめられた! ありがとうございます。
岡田 生きているだけで偉いのに、その上クリエイティブなことをするなんて。
くま 岡田さんも大変だったでしょ。レシピつきだから他のカードノベルとフォーマットも違うし、いきなり更年期の話とかぶち込まれて、これどうやって売るんだよって感じよね笑。途中で『いば庭』書きたいとか言い出すし、それ不倫百合やん! みたいなw よくぞまあ、2年間書かせていただきました。編集さんがいなければ商業作は生まれないので、岡田さんが要なんですよ。
岡田 ヤッター!
みそ 編集さんのGOがないと、金の卵が孵化できないですもんね。
くま そう。でも岡田さんって百合マスターだから、けっこうキワキワを攻めても「いいっすね」って言ってくれるw
みそ 岡田さんの声でいいっすねが聞こえてきたw
くま このメンバー、誰も止めないんですよ笑。さえさくらで盛り上がってるし。
岡田 いつも良い百合を見せていただいてありがたい限りです(^^*)
みそ 可能性の芽はつぶさないで、みんなで水をやるのがチームゆりぜんということで笑。
◎挿画のこだわりとチャイナドレスの秘密
くま 実際、岡田さんにはすごく感謝してます。こんなマニアックな作品も書かせてもらえたし、みそ先生というあらゆる意味ですばらしい方と組ませていただいて。
みそ 私も料理だけじゃなくいろんな年齢の女性や背景を描くことに挑戦できて楽しかったですし、勉強になりました! 自分の考えた漫画だと、やっぱり表現が似通ってしまうので……。ゆりぜんのおかげで新しいことをいっぱい吸収して放出できました!
くま ありがとうございます! わたしとしては、ゆりぜん第二弾とかゆりぜんSSの野望を捨てていないわけですが、もし岡田さんの百合パワーを持ってしても編集部内を説得できなければ、コミティアがんばりましょう!笑
みそ サークル名はチームゆりぜんで笑。
岡田 ゆりぜんとみそ先生をマッチングできたのは我ながら超いい仕事したなと思ってます。社内を百合の業火で焼き尽くせるように励みます!!!
くま すばらしい野望です! ところで、みそ先生にお聞きしたいのですが、ゆりぜんが進んでいく中で、とくにキャラクターの表情の表現がけっこう変わってきた印象があって。
みそ ええ…!? そうなんですか…!? なんでしょう。
くま わたしの作風に合わせてかなり微細に表情の変化を描き分けてくださっていて、それがすごいなと。ご自身の作品よりも苦労されていたのではないでしょうか。
みそ そうですね。やっぱり小説って、地の文を読んでる間に読者さんの頭にその人のゆりぜんが出来上がってくじゃないですか。そこで出てきた絵が地の文とちがう表情してたら小説にのめりこんでいたのがスッと現実に引き戻されてしまうんじゃないか? と思っていて。
くま そうですよね。
みそ くまこ先生の文にはくまこ先生の色があるので、それにどうしても近づきたいと思っていて。なので、自分の漫画とはまた違う表情の使い方になってるかもしれません。
くま そのことをすごく感じました。すごく寄せてきてくださってるなと。
みそ 私の解釈を乗せすぎるのも良くないけど、余白に遊びは入れさせてもらって笑。毎回本当に楽しかったです。
くま そうでしたか、よかった! ちなみに、個人的な興味できくのですけど、わたしの色ってどんな色ですか?
みそ ピンクですね、オレンジに近い……、けど白い背景でも読みやすいというか。かわいらしいのに読みやすい、芯がある、イメージです。
くま ピンク! 意外でした。
みそ コーラルっぽい感じですね! 珊瑚色。
くま あー、なるほど。なかなか色気もありますね笑。
みそ そうですそうです。
くま すごい、漫画家さんらしい喩え!
岡田 確かに暖色系のイメージはありますね。オレンジとか、そんなイメージです。表面はやわらかく、芯が赤く燃えているというか。
くま あっ、いいね、芯が赤く燃えている!
みそ そう! 芯に濃い色がある感じで。
岡田 わぁ暖かそう! と思って触ったら「??? 案外熱いな???」となって驚くような。
くま 嬉しいなー! 今日はよく眠れそう笑。
みそ 私も今日はよく眠れそうです!笑
岡田 そういう意味でも、ゆりぜんは意外な感じがあった気がしますね。『くちびるピアニシモ』『囁きのキス』『蜜月』はけっこうトーンが近い色というか、『聖クロス女学院物語』ともまた違ったような。
くま ゆりぜんは、とくに百合ファンではない幅広い層の大人の女性が読むことも想定していて、やや落ち着いたトーンで淡々と書こうとはしていました。いば庭で、結局くまこフルパワーMAXになっていましたがw
岡田 そうですね笑。
くま 百合波動砲、どーん! って感じでしたw
みそ www
くま わたしはみそ先生の作風って、ややコミカルで明るいイメージだったんですよ。ところが、ものすごくしっとりしたシーンも素敵だったのでびっくりしたんです。
みそ わたしとても根が暗いので…!! 漫画をかくとコミカルになりがちなんですけど。
くま 美咲さんが窓辺に佇むシーンとか、「憂い」をとても的確に表現されていてグッときました。
みそ いやでもそれはやはり、くまこ先生の地の文になぞっていったのも大きいと思います。この色気、このバストアップ一枚で表現してみせる! みたいな。
くま このカットもとても驚いたシーンです。わたしにも浮かんでいなかった二人の表情をお描きになった。ああ、そう、こんな表情……! って、大好きなカットです。
みそ この白百合先生、いろいろと予想して、すこし悲しみを持ってると思ったので、モノトーンのチャイナワンピを選んでいます。
くま そういう意図が!!!
みそ みぃこちゃんはあんまり衣類がブレないんですけど、白百合先生は季節、あるいは感情にちょっと添えるイメージの色を着てる感じです。杏樹さんと杏子さんの出発の時は落ち込んでいたけど、出発を祝うために赤いワンピースです。
桃白 なるほど! すごい!
くま あらためて白百合先生のチャイナドレスに注目ですね! 先生のファッションショーも見てみたい!
みそ そういう面でも、ゆりぜんを読み返して楽しんでいただきたいですね笑。
◎ゆりぜん、これからもご愛読ください!
岡田 みなさん、今日はありがとうございました。あっという間の3時間でした。
みそ 次はぜひ薬膳を囲みつつやりたいですね~。コロナが落ち着いたら。
桃白 みんな偉大すぎてすごかった。またチームゆりぜんで横浜中華街に行けたらいいなー。
くま そうだ、ゆりぜんは最初にこのメンバーで、ゆりぜんの舞台となる横浜中華街や元町商店街、坂を登って港の見える丘公園のあたりまでぐるぐる歩いてロケハンしたんですよね。横浜出身のyomuco編集長にご案内いただいて、薬膳の人気店も桃白さんにご紹介いただいて、みんなで食べてみて。
桃白 まずは薬膳を経験していただきましょうということで。
くま みそ先生が、パチパチ写真を撮ってました。お料理も景色も。
みそ あのとき中華街や周辺を巡ったことで「ゆりぜんの舞台」が想像しやすくて、厚みのある絵にできたかなと思います!
くま おそらく電子配信の作品でここまで綿密に下準備をしてチーム制作している作品は少ないと思います。予算が限られてる中でわたしがだーいぶ我儘を言わせてもらって、岡田さんは社内の調整が大変だったと思いますが……ありがとう!
岡田 いえいえ、また行きましょう~!
みそ 亜里沙ちゃんのくだりを描いてるとき、また行きたいな~ってずっと思ってました笑。
くま 亜里沙ちゃん! 杏樹さんの単推しから杏杏コンビのカップル推しになってて面白かった!笑
くま あー、話がつきませんね。これ、またやりましょう!
みそ はい!! ぜひ!!
岡田 ぜひぜひ~! みなさま、おつかれさまでした!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ゆりぜん、ご愛読ありがとうございました!
これからもちょくちょく読み返して、ゆりぜんレシピを暮らしに役立ててくださいね。