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姿勢が悪くなると筋肉の機能が下がる⁉

直立二足歩行をする人間は、他の動物と違って、骨格の一番上に重い頭部を乗せるという不安定になりやすい骨格構造になっています。
しかも、進化の過程で大きな脳を維持するために筋肉量を減らすことを選択したため、骨格のバランスが崩れやすく、それは筋肉の機能に大きな影響を与るのです。

今回は、「骨格の構造」と「筋肉の機能」の親密な関係について少し掘り下げてお話ししさせていただきます。



筋肉と骨格の役割

体内には640個の筋肉がありますが、この筋肉は「骨格筋」「心筋」「平滑筋」の3つに分けることができます。
「骨格筋」は姿勢保持と運動、「心筋」は心臓を24時間動かす、「平滑筋」は血管や内臓の働きを担っています。

この中で身体能力に関係しているのは、筋肉の40%を占めている骨格筋。
ここでは「骨格筋」のことを「筋肉」と表現させていただきます。

骨格筋 / 心筋 / 平滑筋

一方、骨格の役割は、「カラダを動かす」「カラダを支える」「脳や内臓を守る」「血液をつくる」「カルシウムを貯める」の5つ。
この中で身体能力に関係しているのは、カラダを「支える」と「動かす」の2つです。

筋肉と骨格の役割を見ると分かりますが、どちらもカラダを支え(姿勢保持)、動かす(運動)という部分が共通しています。
互いにサポートしあうことで、この2つの役割を果たしている筋肉と骨格は、互いに影響を与え合う相関関係にあるのです。

筋肉と骨格は共通した役割を担っている

筋肉と骨格の親密な関係

悪い姿勢になると骨格を支えるために、特定の筋肉群に負荷がかかります。
筋肉は長く負荷がかかり続けると、血液のめぐりが悪くなり、酸素や栄養の欠乏するのと、老廃物の排出がされにくくなることで硬直を起こします。

硬直した筋肉はスムーズに動くことができなくなり、そのせいで、意識をして正しい姿勢を取ろうとしても、それをするのが難しくなります。

このように、筋肉と骨格は影響を与え合う相関関係にあるのです。

筋肉と骨格は影響し合う関係にある

特別な例外を除いて、骨格構造の崩れをきっかけにして、筋肉の機能低下と更なる骨格構造の崩れが起こっていきます。
そして、骨格構造が崩れると、筋肉と骨格に次のような影響が現れます。

骨格の崩れによる筋肉への意影響

では、ひとつずつ説明をさせていただきます。

①主動作筋の硬直

いきなり「主動作筋」という難しい言葉が出てきましたが、分かりやすくお話をしていきますのでご安心ください。
ある動きについて、直接的に動作を起こす筋肉を「主動作筋」と言います。

悪い姿勢をとると骨格構造が崩れます。
すると、骨格を支え、バランスを取るという動作をする筋肉群に負荷がかかる。この負荷がかかった筋肉群が主動作筋です。

悪い姿勢の状態が続き、筋肉群に継続してかかり続けるとずっと力を入れている状態になり、主動作筋は硬直して伸び縮みがスムーズにできなくなります。

負荷がかかり続けると筋肉は硬直する

②拮抗筋の緩み

拮抗金とは、主動作筋の反対の動きをする筋肉です。
筋肉は、伸びたり縮んだりするものだと勘違いしている人がいるかもしれませんが、筋肉は一方向に縮むことしかできません。

一方向にしか縮めないということは、いったん縮み切ってしまったら、それ以上筋肉は動けないということ。
しかし、それではカラダを動かすことができないので、それぞれの筋肉は必ず自分を伸ばす方向に縮むパートナーともいうべき対になる筋肉が存在しています。
これが拮抗筋(きっこうきん)と呼ばれる筋肉で、例えば、上腕二頭筋に対する上腕三頭筋や大腿四頭筋に対するハムストリングスなどです。

拮抗金とは、主動作筋の反対の方向に収縮する

主動作筋が硬直をして縮こまった状態になると、拮抗筋は伸ばされた状態が続きます。そうなると、伸ばし続けられたゴムのように緩んで力が入りづらくなり、上手く縮むことができなくなります。

③硬直と緩みの連鎖

特定の筋肉群が硬直すると、その部位の骨格構造は崩れた状態で固定されます。そうなると、カラダはバランスを取るために他の部分の骨格構造をずらして調整をします。

例えば、猫背になると、そのままでは重心が前にズレて不安定になります。そこでカラダは、骨盤を後ろ向きに倒して腰を丸め、軽く足を曲げることで重心を後ろにずらし、全身のバランスを取るのです。
また、この姿勢のままだと前が見づらいので視界を確保するために顔を上に向け、アゴを前方に突き出す姿勢をとります。その結果、首や肩の筋肉にはさらに負荷がかかり、硬直が強化されます。

カラダは常に重心のバランスを取ろうとする

このように、特定部位の筋肉群に硬直が起こると、悪い姿勢が固定化され、全体のバランスを取るために他の部位の骨格構造が崩れ、その周りの筋肉群に負荷がかかり新たな硬直が起こる…と言った具合に、筋肉の硬直は連鎖していきます。
そして、硬直が連鎖的に起こるということは、硬直をした筋肉の拮抗筋の緩みも同時に起こるのです。

④筋肉の連動性の低下

人間のカラダは複数の筋肉が連動することで複雑な動きをしています。
筋肉群に硬直が硬直すると、この連動がスムーズに行えなくなるのです。

イメージしやすいように、少し思考実験をしてみましょう。
ここに一本のロープがあったとします。そのロープの端を持って上下に素早く動かすと、ロープを波が伝わっていきます。

上下に動かすと紐を波が伝わっていく

では次に、太さの違うものを継ぎ合わせたロープで同じことをしたら、どうなるでしょうか?

下の図のようにロープの太い部分で波の伝わりが弱まってしまいます。

太い部分で波の流れは小さくなってしまう

筋肉の連動もこれによく似ています。
全身の筋肉に硬直が無ければスムーズに連動しますが、どこかに硬直があると、その部位とそれ以外の部位の筋肉の収縮に差が生まれるのでスムーズに連動することができません。
このようなメカニズムで、筋肉が硬直すると連動性が低下するのです。

まとめ

筋肉と骨格は相関関係にあるので、姿勢が崩れるとそれを切っ掛けに、ドミノ倒しのように「主動作筋の硬直⇒拮抗筋の緩み⇒硬直と緩みの連鎖⇒筋肉の連動性の低下」が起こり、運動能力は低下します。

トップトレーナーが、姿勢の重要性(骨格の構造の重要性)について語るのは、姿勢が運動能力と直結するものだからなのです。

筋肉と骨格は影響し合いながら運動能力を低下させる

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