上手くできなくて悶々としちゃうものにこそ、素質があるのかも
2年ほど前のこと。コロナ禍で予定がなくなった私は暇を持て余し、「そうだ絵とか描いてみよう!」と思い立ちました。
手始めに、昔ノベルティとして手に入れたメモ帳の裏に、プロフィール写真を再現してみようとして・・・ものの10分かそこらで「あぁ、やっぱり私には絵の才能はないな」と気づきました。
気づいたというか、昔から知ってたというか。まぁコロナ禍の暇つぶしなので、頭から才能もなにも求めてなかったのですが。
何があったのか。
全然描けなかったのか?
いやそれが、するするっと描けたんですよ。10分もかからず。
できあがった絵が、ひどかったのか?
いや、むしろ逆で。割と満足いく仕上がりになったんですよ。
「意外と描けるじゃん、私」って。「それっぽくできてる」って。だってこれが海だってわかるし、砂浜だってこともわかる。人が文字書いてるのも伝わる。やるじゃん、私。
そして、思い知りました。あぁ、やっぱり私には、絵の素質はないなって。
なぜか。
中学の美術の授業以来まともに絵なんて描いてこなかった人が、思い立ってメモ帳の裏にささっと描いたものに、簡単に満足できてしまったから。
「どこに影を入れよう」なんて考えることもなければ、「どの青を使おう」なんて迷うこともなかった。
あわよくばね、「絵がめちゃくちゃ苦手な人がたくさん描いたらどれだけ上達するか」実験したら面白いかな、なーんて思ってたんですよ。ひどい状態から始まって、どんどんうまくなってく軌跡を記録して、「before after 比較!」って。
でもいざ描いてみたら、最初の1枚がそこまで「ひどい」とも思わなかったし、「次はここをこう変えてみたい」「こんな表現ができるようになりたい」みたいなモチベーションもわいてこない。
「たくさん描く」どころか1枚ですっかり満足して、さっさと投げ出してしまった。
ちなみにこちらがその絵。
こちらが、お手本として使ったプロフィール写真。
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「才能がある人」あるいは「素質がある人」とはおそらく、「自分が生み出したものに簡単に満足できない人」なのかな、と思います。
どうすればもっとよくなるのか、あれこれ試さずにいられない人。いちおうの完成をみた後でも、手を加えたくなってしまう人。
カメラであれば、構図を変え設定をいじり、同じ景色を何枚も撮ってしまう人。
料理であれば、似たような食材や調味料であっても、産地を変えいろんなメーカーを試し、ちょっとでもおいしいものを探してしまう人。
動画編集であれば、素材と素材のつなぎめをコンマ1秒単位で調整したくなる人。
「すごい人」のすごさがわかる人。自分が下手だったりダメだったりした時に、それを自覚できる人。「上手い人」と自分のギャップに気づき、時にその大きさに打ちのめされたりもする人。
いやもちろん、趣味を楽しむ分には素質だ才能だ気にする必要はないんですが。
ただ、例えば「え、毛玉が出てる?大げさだなぁ、そんな細かいこと誰も気にしなくない?」って思うなら、「普通自分の服くらい自分で買うでしょ」みたいな固定観念にとらわれず、コーディネートサービスに外注しちゃうのもありだし。
逆に踏み出せない理由、やめたい理由が「あの人もすごい、この人もすごい、追いつける気がしない」なら。
たぶん、やってみる価値はあるんじゃないかなと思うのです。
もしかしたら、その「追いつける気がしない」相手とは違うジャンルや切り口かも知れないけど。
でもきっとそこに、何かしらの芽が埋まってる、可能性はあると思うのです。