美容室で二番目の汗っかき

今、行っている美容室はIさんという私と同い年(41歳)の男性が一人でやっているお店で、通い出してから数年は経つ。

マンションの一室を改装して出来たその空間は居心地が良く、Iさんだけしかいないので気を遣いすぎないで居られるところが気に入っている。

実際、普通の美容室では出来ないことがここでは許される。たとえば、ご飯の持ち込みとか、試したことはないがウーバーで出前を頼むとか。
私はお昼間に行くことが多いので、髪を染めている間にお昼ご飯を食べているのだが聞くところによるとそこの時間の使い方は人それぞれ。
パソコンを開いて仕事をする人や、Iさんとサッカーゲームをプレイする人もいるらしい。
Iさんは無類のサッカー好きなので、サッカーでわからないことがあれば訊くこともできる。

と、良いことだらけの美容室なのだが一つ難点をあげるとすれば、駅から徒歩10分かかること。
それの何が難点かというと、私は非常な汗っかきで寒い日でも歩いているうちに汗ばんできてしまうのだ。とくに顔汗。真夏は本当にヒドい。

Iさんは優しいし仕事なので「染料ぬると涼しくなるよ」と言ってくれるのだが、気になるのである時「こんなに汗っかきなのは私くらいなのでは?」と訊いてみた。
すると意外なことに、髪の長い女性は大抵、首のうしろが汗でびっしょりしているのだとか。
だが、私の汗かきっぷりは女性客で一番らしい。嬉しくない称号だ。
全体で一番の汗っかきは男性なんだとか。なので私はこの美容室二番目の汗っかきになる。
中途半端だな。

ところで私は昔から冷房で寒い思いをしたことがない。弱冷房車は避けて乗る。
真夏はタオルハンカチが欠かせない。電車に乗ると途端に汗が噴き出す。急いでタオルハンカチで汗を抑えながら周りを見渡すと、同じ事をしているのはオジさんだけ。
もしかして私はオジさんなのか……?
なんで世の女性は顔に汗をかかないんだろう。
かいているのかも知れないけれど私ほどではない(断言)。私は汗が滴るのだ。役所で書類を書いているときに顔汗が落ちてきた時は急いで拭った。病院に行ったほうがいいのかしら?
困ったものだ。

あるとき前髪を赤いインナーカラーにしたことがあった。季節は秋。
汗っかきの私は当然のことながら電車内で額に汗をかいていた。
タオルハンカチで拭うとうっすら赤い。
家族が地元の駅に迎えに来てくれていたので急いで行くと「大仁田厚の流血デスマッチみたいになってるよ」と姉に言われた。

これをIさんに話したところ、他のお客さんにも話す鉄板ネタになったらしい。

本気で病院行こうかな。

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