
人生に折り合いをつける
時間だけは誰にも公平・平等。
だから、自分が歳を重ねてしまうことは、仕方のないことだ。そして、人生はカードゲームみたいなもので、いわゆる「ブタ」、つまり悪いカードを引き当ててしまうこともある。
自分が良かれと思ったカードが悪かった経験は誰にもあるだろう。
そしてそれが結果的に悪くなかったと思えることもあるだろう。
いつかは、自分で選んだ人生の選択に折り合いをつけなくちゃならない。
でも、そんなの無理だ。
人生は何度だってやり直せる?
嘘だ。
私は何も持ってない。資格はあるけれどたいした資格じゃない。オードリーにも、アインシュタインにも、トランプにも、なれない。
つまり「普通」ということ。
その何が悪いの?他人にはそういうだろう。それでも私はあなたが好きだと、いくらだって前向きに声をかけることはできるだろう。それは嘘じゃない。
努力してるじゃないの、他人にはそう言えるだろう。いいところをいくらでも言えるだろう。でも、自分にはそんな声をかけてあげられない。
あなたは頑張った、自分にうわべの言葉を言えても、二の句を継ぐことはできない。
結果が、すべてだ。
ハガキ一枚の重みと軽さ。
「お前はいらない」
明確な意思。ミラクルは起きないから奇跡なのだ。ウルトラCは、試験においては出ないのだ。
人生をやり直したかった。
次は、ない。年齢制限にかかるからだ。
試験の点数が足りなかったんだろうか。噂ではもっと低くても通ったってさ・初回ボーナスがあるらしい・戻ってくるのは無理だよ・コネも使えばよかったんだろうか、でもそんなの正しくない・一緒に仕事したかった・頑張ったのに・なんで・私を採らないなんて・なんで
なんで
なんで
なんで
ただただ、頭を駆け巡る言葉。
わかってるよ、中学受験をしたあの日から、滑り込んだ先に違和感を覚えながら、何度、この問いかけをして来ただろう。それでも、何度も何度も未来を信じた。自分を奮い立たせ、涙を拭い、歯を食いしばり、時に命の軽さを思い、それでも。なりたい私になるために、乗り越えてきた。
壁にぶつかれば、迂回した。穴に落ちれば這い上がった。そうやって大人になった。泣かない、そう思いながら何度も泣いた。神に祈り、星に願い、強くなったはずだった。
これから何度も私は癒えない傷から血を流すだろう。何者にもなれなかった自分を受け入れたふりをして。
悲しみとともに、見えない未来を、消え去った夢をいつまでも想うだろう。
十人並みの悲しみだとわかっていても、それでも、届かなかった想いを抱え続けるだろう。
できることがあるとすれば、ただ眠ることだけだ。眠り続けて、涙が枯れたのならば、同じように悲しむ人のそばに寄り添おう。
祈りなんて、届かない。神も仏も助けてくれたことなんてないし、正しく生きていたって報われない。割りを食う、損をする。
でも、私は生きている。正しく生きていたい。そうやって生きているから、いつかは、私は私自身を未来に連れて行けるだろう。どんなに辛くても、悲しくても、誰も見ていなくても、報われなくても、何も変わらなくても、それでも、明日は私の目の前に。