生活保護の申請は役所に行かずに郵送しよう
生活保護を受給したいと考えているものの、いざ役所に行って申請を断られたり、水際作戦で嫌がらせをされたりすることを心配する人もいるだろう。
そんな人たちのために、役所に行かずに郵送で生活保護の申請をする方法を解説したいと思う。
そもそも水際作戦とは?
生活保護における「水際作戦」とは、申請しに来た市民に対し、
「ハローワークで仕事を見つけられないか?」
「扶養してくれる家族がいるのではないか?」
「貯金があるならまだ申請は受け付けない」
などなど、「相談」という体で生活保護の申請書類を出さない・受け取らないために行われている作業、というか「嫌がらせ」のことだ。
なぜ役所が水際作戦をしているかというと、「生活保護費の一部を自治体が負担しなくてはいけない」という制度が理由だ。
生活保護費は国が4分の3を、自治体が4分の1を負担しているため、どの自治体も生活保護受給者数を抑えたいという本音がある。というか、「生活保護受給者を少なくしよう」というインセンティブを自治体に与えるためにこういう制度になっているのだろう。
この水際対策だが、生活保護について調べた人なら様々なエピソードを知っていることだと思う。
「生活保護なんて受けて恥ずかしくないのか?」という罵倒や、DV被害を訴えているにも関わらず「配偶者に住所を伝えることになる」という半ば脅迫のようなもの、果ては「仕事がないなら風俗で働け」という信じられない言葉などなど...
こうしたエピソードを見聞きするだけで申請を躊躇う人も多いだろうし、それすらも行政側の狙いだろう。
しかし、郵送で申請書類を送りさえすればこのような水際対策は受けずに済む。申請書類さえ届いてしまえば、受給条件を満たしている限り申請を断ることはできないのだ。
それでは具体的なやり方を説明していこう。
郵送で申請する具体的な手順
最近ではスマホやパソコンで質問に答えていくだけで申請書を作成してくれる「フミダン」という便利なサービスがある。
完成した申請書のPDFをコンビニで印刷し、郵送すれば完了だ。
フミダンを利用すれば圧倒的に作業が楽になるが、フミダンのサービスが終了した場合や何らかの理由で使えないという人は以下の流れで作業してほしい。申請書自体は同じものを使っている。
①申請書を印刷
まずはこちらの申請書を印刷する。
家にプリンターがある人はもちろんそれを使えばいいが、無い人がほとんどだろうからUSBやスマホにダウンロードしたものをコンビニで印刷することになると思う。アプリストアで「PDF 印刷」などと検索すればコンビニで印刷するためのアプリがあるので、それを使えばOK。
サイズと色に関しては特に指定は無いのでA4白黒印刷で十分だ。
②書類に記入する
書類のほとんどの部分は名前や生年月日を書けばいいだけなので、記入に迷いそうなところだけ解説していく。
◎「生活保護申請書」
【宛先】
→「福祉事務所所長」と書いてあるが、自分が住んでる地域の役所の名前をとりあえず書いておけばOK。もちろん、この書類を送付する先もその役所だ。
【保護を受けたい理由】
→病気や怪我で働けないのであればそれを書けばいいし、単純に「失業中で生活費がない」でもいい。記入欄が数行になっているが、一言書くだけで十分。「思想上の理由(働きたくないため)」と書いても申請が通ったそうなので、この欄には嘘さえ書かなければ何を書いても大丈夫だ。
【援助者の状況(家族)】
→父、母、兄弟姉妹、配偶者や子供(成人)などの名前と住所、職業などを分かる範囲でいいので記入する。分からないところは「不明」と書いて問題ない。
記入欄が3つしかないので、最も関係が近い3人まで書けば十分だ。
なお、ここに記入した人たちに必ず扶養照会がされるとは限らない。扶養照会とは「あなたの家族が生活保護を申請していますが、援助できませんか?」と役所が親族に連絡することだが、実際に扶養に結びつくケースは非常に少ないため、役所の担当者としてもあまりやりたがらない傾向がある。
もちろん、親族が資産家だったりしたらこの限りではないし、そうでなくても担当者次第で扶養照会がされることは覚悟しておいた方がいいだろう。
ただ、DVや関係の悪さなどの事情があって扶養照会をどうしてもしてほしくない場合は、欄外にその旨を記入すれば考慮した対応をしてくれるはずだ。
◎「資産申告書」
【不動産】
→「自己の居住用宅地」に賃貸は含まれないので注意。持ち家がある人だけが「有」にマルをつければいい。
また、「延面積」などは賃貸の契約書などを見ながら記入する。ここが一番面倒な作業かもしれないが、役所で「相談」するよりは遥かに気持ちが楽だと思うので頑張ろう。
なお、「生活保護を受けるなら絶対に家を手放さなくてはならない」という誤解がよくあるが、家を売却する必要があるかどうかはケースワーカーに相談しないと分からない。売却価値が高い物件でもない限り、居住用の不動産は所有を認められることが結構あるので、持ち家がある人も生活に困っているならとりあえず申請書を郵送しよう。
【現金・預貯金・有価証券】
→持っている銀行・証券口座はすべて記入しよう。預金がない口座を記入し忘れても特にトラブルにならないが、預金がある口座を記入してないと不正受給を疑われかねないので、念のため全部の口座を書いておこう。とはいえ、記入漏れくらいで即・不正受給認定や警察への通報などにはならいので、心配はいらない。
【負債】
→絶対に隠さないこと。クレジットカードのキャッシングも含めて全て申告すること。なお、通常のクレジットカード利用の未引き落とし分は「負債」として申告しなくて大丈夫。
◎「収入・無収入申告書」
【収入申告】
→障害年金を受給しながら働いていた人などは記入するところが多くて大変だろうが、分かる範囲を全て書けばOK。ここも意図的に隠すのは許されないが、ちょっと計算ミスや記入漏れがあったくらいで大ごとにはならないので、神経質になる必要はない。
【無収入申告】
→【収入申告】のところに何も書くことがない人だけ書けばOK。
収入がない理由については病気や怪我などの事情があればそれを書けばいいが、嘘の病気や怪我は絶対書かないように。この欄に記入した内容で受給の可否を決めるわけではないので、「失業中のため」で十分。
◎一時金支給申請書
持ち家も賃貸もない人、つまりホームレスやネットカフェ難民の人がアパートをこれから借りる場合だけ書けばいい。すでに賃貸を借りている人は書かなくてOK。
③郵送する
記入が終わったら封筒に入れて郵送すれば作業は完了。役所に届いた段階で「申請書が役所に受理された」という状態になり、生活保護の対象かどうかの審査が始まる。役所は申請書を受理した日から原則2週間以内に保護の可否を通達する必要があり、保護が決定された場合は申請日に遡って保護費が支給される。
郵送された申請書を「そんな書類は届いていない」とシラを切られるのでは?と不安に思う人もいるかもしれない。そんなことはまずあり得ない話ではあるが、どうしても心配なら、少しお金はかかってしまうが簡易書留で送ればいい。簡易書留なら受け取りの記録が残るため、役所は届いた書類を破棄したり無視したり出来なくなる。もしもそんなことをすれば、「市民から送られた書類を紛失した」という不祥事になるからだ。基本的にここまでする必要はないが、どうしても心配ならこの方法を使おう。
なお、身分証や預金通帳などの確認作業があるため、自分が役所に出向いたり担当者に家庭訪問をされたりして、対面でのやり取りは必ず発生してしまう。しかし、その時点ではもう水際対策はされない段階にいるので不安になる必要は全くない。受給条件さえ満たしていれば必ず生活保護の受給が決定する。
まとめ
近年はメディアの批判もあって改善されつつあると思うが、それでもまだ悪質な水際対策をしている自治体や職員はいるだろう。
生活保護は「資産と収入が基準以下」なら必ず受給できるので、水際対策など受けずに郵送で申請書を送ってしまおう。
この記事があなたの申請をストレスなく進める助けになれば幸いだ。
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