初めての妊娠・流産
結婚から半年、そろそろ子どもが欲しいねと夫と話し合った矢先、妊娠が発覚した。特に体の変化も実感もなく、妊娠を表すものは妊娠検査薬だけ。自分のお腹の中に新たな命が宿っているなんて、夢のようだった。
数週間後、吐き気・食べ物の選り好みなど、つわりが始まった。つわりがあっても仕事に行かなければならないと思い込み、無理してでも出勤した。
つわりが始まり、あまりにも疲れやすく毎日ブルー。
子供の為にきちんと体調管理をしなければならないと思い、責任感で押しつぶされそうになる、また、自分なのに自分じゃない。入れ物になったような気持ちが渦巻き、一人でわんわん泣くことも多かった。
そして迎えた妊娠6週の検診、いやにエコーの時間が長く感じた。お医者さんの無言の時間が長かったからだと思う。エコーに映された赤ちゃんとなるものはとても小さく、心臓がピクピクと動いていたがゆっくりであった。
お医者さんから「心臓の鼓動が遅いので、最悪の場合流産になるかもしれません。次の検診まで様子をみましょう」と言われた。本当に現実?頭が真っ白になった。
それから次回検診までの2週間、とても長く、絶望に近い時間だった。なんで私の赤ちゃんが?仕事のストレス?それとも、つわりがしんどい妊娠辞めたいと少しでも思ったから?と自分を責めた。それでも一縷の望みをかけて何とかメンタルを保っていた。
検診日前日。明日が来てほしくないと思った。おそらく、赤ちゃんの心臓は止まっているとほぼ確信していた。夫は大丈夫と言うけども、不思議なことに、同じ身体を共有している私には確信に近いものがあった。夜、夫に気付かれないようにたくさん泣いた。たくさん泣いたら気持ちがすっきりして、その日はぐっすり眠った。
検診当日。エコーで確認すると赤ちゃんがいない。やっぱり心臓は止まっていた。でも不思議なことに、前回流産の可能性があると診断された時よりもショックは軽かった。恐らく、前回で流産はほぼ確定していたものの、母親の気持ちを整理させるため、お医者さんが2回に分けて診断をしてくれたのだろう。そう考えると、お医者さんにも感謝の気持ちが芽生えた。
私が経験した流産は、赤ちゃんの心臓は止まっており母体の症状はなく留まっている「稽留流産」という流産だったので、手術をするか自然排出を待つか決めてくださいと言われた。手術だと子宮に穴が開いたり、感染症にかかり高熱が出るリスクがあると説明を受け、次の妊娠のことも考え自然排出を選択した。
排出までの約2週間、つわりは続いた。赤ちゃんの心臓は止まっているのにつわりは続く、その理不尽さに腹が立った。何のためのつわりなのか、意味が見いだせない苦しみが一番辛かった。仕事もたくさん休んだ。会社の役職者には妊娠と流産のことを伝えていたので理解を示していただいたが、同僚には言えず辛かった。男女平等を掲げている社会だけど、やはり女性が男性と肩を並べて長く仕事を続けるのは、人間の構造として無理があると感じた。
無事に自然排出が終わり、残留物も無く手術の必要もなかったが、心はぽっかり穴が空いたようだった。流産からおよそ1か月経つが、それは今でも変わらない。恐らくこの感覚は一生続くし、一生寄り添っていくのだろう。それにしても流産から1か月経ち、自分の驚異的な回復力に驚く。つわりの間はあんなに毎日寝たきりだったのに、すっかり痛みや吐き気は無く、ジムでがっつり走っても大丈夫だし、毎日残業もしている。この数か月の体調の変化に戸惑い、感動もしている。
ぽっかり空いた穴は未だに埋まらず、ふとした時に広がってしまうこともあるけれど、自分の一部として抱きしめていきたい。
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