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テープの質感

『V/H/S』シリーズは、面白さにムラがあるシリーズだ。しかし、あのビデオテープの質感だけは、回を追うごとに向上している。

あのビデオテープの質感さえあれば、どんなにつまらないエピソードでも楽しめてしまう。これは不思議な話……ではなく、単にあの画質を楽しんでいるからだ。

皮肉なことに昔はあんなに鬱陶しかったスイッチングノイズ(画面の下端にあるアレ)や音声のヒス、トラッキングの乱れ、ヘッド劣化の歪みが、妙に愛おしいのだ。

『V/H/S』シリーズのエピソードをバッキバキのUHD&HDRの画質にしたら、きっとつまらないんだろうなあ……。

テープの質感は、音楽を作る時も好んで使っている。特にディレイは大体テープエコー(の紛い物)を使っている。「ディレイってなんじゃ?」という方に説明すると、原音を繰り返しならす効果だ。”やまびこ”みたいものと思ってくれればいい。

テープエコーは、セットテープの要領で原音を録音し、繰り返し再生することで”やまびこ”を実現している。当然、カセットテープと同じなので、繰り返し使っているとテープが伸びて音がフニャフニャと歪んでくる。昔はテープ音の柔らかさだけが欲しく、歪みはいらないかった。でも今は、わざわざ歪むようセッティングして使っている。

ビデオの画質と同じで、聴覚と視覚に訴えてくる揺れる歪み。それが好きなのだ。

所要時間:13分
画像:『V/H/S 85』

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