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『シチリア・サマー』を観て

オレは恋愛映画が嫌いだ。いがみ合う2人が、何故か好き同士になって、恋人になり、喧嘩あるいは避けがたい障害があられるも、解決して元の鞘……。クリシェまみれなのはホラー映画も一緒だが、どこに面白さを見いだして良いのかさっぱりわからんのだ。でも『シチリア・サマー』は面白かった。だって黒かったんだもん。

『シチリア・サマー』は、少年同士の恋愛映画だ。40年前のイタリアを舞台に、同性愛に対する偏見をネチネチを描いている。一方、少年達の清々しさと南イタリアの陽光が映画から「ドス黒いヘイト」を取り去っている。

同性愛者2人が殺害されたジャッレ事件を基にしているため、2人が死んでしまうことが予測できる。とはいえ、大筋は恋愛映画のクリシェをなぞる。

しかし、前述したとおりドス黒い雰囲気が見え隠れして、いい味付けになっているのだ。特に母親と甥っ子が同性愛に走る息子と彼に、ひたすら嫉妬を向ける様子がたまらん。実際、2人を殺したのは甥っ子。劇中では、まったく明言されないが、事件を知らなくても勘の良い人なら分かるように出来ている。

加えて、性描写もキスだけに抑えたのもいい。明確なセックス描写はホラー映画やの味付けに使う程度が一番おもしろいのだ。恋愛映画でそれをやっちゃうとただのエロティックなにがし映画になってしまう。やることやっても構わないが、それはオフシーンでやってくれと。

最後の同性愛者の活動云々というテロップはいらんなぁと思いつつ、苦労している人々が未だに沢山いるのだから仕方がないか……などど感じたのでした。

所用時間:10分
画像:ジャッレ事件の新聞記事

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