見出し画像

『ライブラリー・オブ・ザ・イヤー選考委員長の日記』岡野裕行著(2024,散策舎)の感想

 9月25日(水)、筋トレを終えた14時過ぎくらいに岡野先生から「とどいたー!あとで渡します。」とLINEが来た。「ついにか!!!」と思って、メッセージをひらく。裏表の写真が添付されている。帯を見ると表の方に「私にできるのは言語化して問いかけることだけである。最終的な結果がどうなるかまったくわからない。」と書いてある。岡野先生らしいなと思った。まだ読んでないけど、この言葉はとても岡野先生らしい。裏を見ると「手品」の文字が目に飛び込む。なんと(笑)「手品」の2文字が入っているだけでうれしい。先生はよく「まいまいと出会ってから手品やマジック、奇術なんかの文字がよく目に入るようになったんだよね。」と笑っていた。

 ちょうど筋トレを終えて帰るところだったので「今から行ってもらえますか!」と返信する。「大丈夫!」と来たので「あと20分後くらいに行きます!」と返し、急いで大学へ向かう。案外すぐ着き、駐車場から急ぎ足で研究室へ。ドアは開いていた。


「来ましたー!」と入っていくと、段ボールが積み上げられていた。

「完成したよー、1冊あげる。献本第1号。」と言われた。


よっしゃぁぁぁぁ!!!第1号いただきましたーーー!ナイスタイミング!!


と思った。(もしかしたら口に出していたかもしれない。)


この日記本のことは前々から聞いていたので、できるだけ早く読みたかった。

あとなんとなく、第1号がよかった。

自慢じゃないけど、岡野先生の活動は、過去のゼミ生を合わせても1番追っていると思う。

というか、わたしの活動の先(もしくは延長線上)にいつも岡野先生がいる。

「岡村さんは岡野先生の一番弟子でしょ」と言われたことがある。

現役生のときは口が裂けても「そうです!」と言えなかった。(近くにいたから痛いほどわかる。あの人は果てしない。果てしなさすぎて「そんなことないです、まだ弟子だなんて言えません。師匠とも呼ぶのもおこがましくて岡野先生としかべません。」と返していた。)

2020年の情報組織化研究グループの研究例会報告で田窪直樹さんに「岡野さんはいい弟子を持ったね」「そうなんです、おもしろくて」と返していたのを聞いて、はじめて「弟子」を名乗っていいのかなと思った。ので、最近は「わたしの師匠が」みたいな言い方をしている。

と言いつつ、師弟関係にそんな執着しているわけではない。ただ関係性としておもしろいなと思っている。岡野先生には何百人という弟子がいるのだから。

連絡をもらってからちょっと遅くなってしまったから、現役の弟子に先を越されるかな……?と思っていたけど、1番でよかった。

岡野先生からは「こういうところのすばやさもまいまいらしい」と言われ笑った。


さて、日記本の話に戻そう。
いい写真が撮れたから見てくれ!!!

なんとなく「本に寄り添う文鎮」が
似合うなと思い置いてみた。
せっかくなのでわたしのページを開いてみた。


 まずサイズ感がいい。大きすぎず、小さすぎない。ちょうどいい。そしてカバー!散策舎カラーだ!肌触りも心地よい。タイトルも真ん中に上品に置かれている。文字の色も書体も実に岡野先生らしい。写真で見たとき、帯は普通のやつかと思ったら、なんかツルツルしている。すごくいい。なんかかっこいい本だ。

カバーを外して見るとまたなんとも岡野先生らしい。あと加藤さんみも感じる。ふたりでつくったんだなぁという感じがすごくする。

見返し(効き紙)の色も落ち着いたワインレッドみたいな、紫みたいな色でかっこいい。遊び紙も素晴らしく品がある。変に主張してこなくていい。


目次と本文の間にある、ピアス・バトラーのエピグラフもいい。知的で洒落てる。


ここからは、本の内容になってくるのであまり書けないけれど(と言いつついっぱい書いた)、気になった部分をいくつかピックアップしてみる。

良い図書館を良いと言ってもらう 自分だけが良いと言うのではなく、誰かに良いと言ってもらうための機会を整える/必要なのは言語化してもらう仕組みづくり

p.3

自分一人で実施することは不可能な活動なので、いろんな人に助けてほしいと思っている。

p.3

これはライブラリー・オブ・ザ・イヤーにかかわらず岡野先生がよく言っていることだなと思う。きっと経験からくる感覚でそういう役割がだいじなんだと思っていると思うし、わたし自身もそう思う。むかしargさんのメルマガにもそんなことを書いたような気がする。

私にできるのは言語化して問いかけることだけである。最終的な結果がどうなるかまったくわからない。

p.4

ほんとうにおもしろい文章だ。岡野先生そのもののような文書で笑った。そしてさらに、ここをメモしておいて本を読み終わって閉じたとき、帯に同じことが書いてあって笑った。やっぱりここは拾うよね。

こうして誰かがそういうお役目を引き受けていかないことには物事が動いていかないのである。

p.7

あんなに普段何ごともめんどくさそうに(真面目に)やっているのに、こういうところは真摯でほんとうにおもしろい。

p.22 その年の選考委員をどう選んでいるのかがわかって、おもしろい。審査員もこんなふうに選んでいるのだろうか?2020年にわたしも選んでいただいたので、ありがたいなぁという気持ちである。

p.27 『図書館情報学を通して図書館を知る』はほんとうにおもしろいからみんなに読んでほしい。岡野先生のこの日記がargさんのメルマガで配信されていたときに、」毎週感想を書いていたけれど、『図書館情報学を通して図書館を知る』が出てきたときに読み直して、書きたいこと多すぎて断念したのを思い出した。たしかここからわたしの更新は止まっているはずだ(笑)。「図書館体験を持たない図書館情報学者は珍しいかもしれません」という話はそうなんだ、と思う。みんなそんなに最初から図書館に興味があったんだといつも驚く。わたしも大学に入るまで図書館のことは全然知らなかった。

p.39 岡野先生、伊勢だいすきすぎてほんとおもろい。ここには書いてないけど「伊勢にはたい焼きが多いんだよ!しかも天然の!というかそもそも、たい焼きには天然と養殖があるの知ってる?」と目をキラキラさせて伊勢の話をしてきたのを思い出す。

p.43 島田さんにカステラ渡してるのおもしろい。情景が目に浮かぶ。わたしもよく島田さんとお菓子を交換していた。

p.48 わたしが出てくる。マジックを見に来てくれたのはうれしいけれど、絶妙に文学散歩に間に合っていないのおもしろすぎる。2行の間に「暑い」が3回も出てくるのウケる。相当暑がっているw

ときどき出てくる「散歩に行く」とか「髪を切りに行く」とか「歯医者に行く」みたいなのはいかにも日記らしくてかわいい。

自分の高校生の頃を振り返ってみても、特に胸を張って言えるようなことは何もしていなかったように思う。とても平凡な高校生である。それでもその年齢のときには今の自分につながるような何かを考えていたのだろうと思う。たまたま図書館情報学という学問があることを知って、それを自分の進路先に見据えたことは振り返ってみてもとても良かったのだと思える。

p.60-61

岡野先生が図書館情報学に出会ってくれて、ほんとうによかったなと思う。そもそも岡野先生が図書館学の授業を持ってなかったら、こんなに仲良くなっていないと思う。図書館学が岡野先生を伊勢に招き、わたしたちを出会わせてくれたんだな。そう思うと図書館学には感謝である。こんなに懐の深い学問に出会えてほんとうによかった。図書館学がいろんな縁を引き合わせてくれた。だからわたしは図書館学そのものがすきなんだと思う。

p.64 またわたしが出てきた。岡野先生とのトークイベントの回だ。なつかしい。加藤さんのも来てくれている。思い返してみると、この3人はよく集まっているなと思う。人生で初初めて散策舎さんに訪れたとき(当時は加藤さんのご両親がお店番をしている時代だった)岡野先生の本棚みを感じたことを思い出す。すごく心地よかった記憶がある。岡野先生曰く、わたしたちは歴代のゼミ生の中でツートップの変な子だったらしい。学年もバラバラだし、時代も被っていないけれど、こうして元ゼミ生というだけで仲良くなれるのは愉快なことである。

p.66 UDフォントの話、岡野先生らしすぎる。岡野先生からこういう話を聞きすぎたので、わたしもいちいち気になるようになってしまった。良い悪影響である。

p.70 子どもを川遊びに連れて行くのほほえましい。

p.72 「夏休みらしい過ごし方」ってなんなんだろう。もし「だらだらすること」をそう表現しているのならめっちゃいい表現だなと思う。

p.79-83 読んでて緊張する。

p.90  このへん歯切れがいい。リズミカルである。

p.91-92 ここの校正めっちゃ岡野先生っぽい。

p.93-94 運動会と子育てほっこりする。

p.96-97 何を評価したのか/されたのかはだいじ。

歴代のふみくら倶楽部の部長はそれぞれ何かしらの機会に発表している。ほんとうに頼もしく思える。

p.120

これまじで全部岡野先生のせいだからっ!ねぇ、ふみくら倶楽部のみんなぁっ!!!

p.105-108 伊勢河崎一箱古本市!なつかしい。出店者側になった!いろんな人に会えてほんとたのしいイベントである。

p.122-125 ふみくら倶楽部をつくったひかりさんと大きくした三木さんに、まじ感謝!

p.129-130 ライブラリー・オブ・ザ・イヤーの投票の仕方が変わっててびっくり!知らなかった!

p.132 目まぐるしすぎて笑う。めっちゃ想像できる。笑笑

p.152-153 『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』なつかしい。ほんとにいい映画だったと思う。東京に行って、ホームレスを見るとよく思い出す。

「図書館とは何か」という問いはずっと持っていてほしいと思う。

p.153

いい言葉だな。

「ライブラリー・オブ・ザ・イヤーの運営は何を考えていたのか」を知るための記録資料

p.155

読んでいて、まさにその通りだと思いました。個人的な日記が公的な記録になったなと思いました。

「選考委員長は私でなくても良かったはずなのに」という思いはありながらも、それでも実際に選考委員長の立場にいた者として、個人的な日記という記録が持つ力を信じてみたいと考えました。

p.158

すごくすてき。

宇宙,日本,東京,神田駿河台,キハラ社屋

p.176

なんかいい。

今はこの事業を終わらせずにできるだけ続けていく、この活動をしっかりと未来に継承していくことが大事である。

p.178

なんだかんだで、気になるところを拾っていったらここまでで4,000文字以上になってしまった。全体の感想としては、めっちゃ岡野先生っぽい本だなです。

ただ、岡野先生っぽくないところもいくつかあり、普段なら「私」や「良い」「人」などの漢字を「わたし」「いい」「ひと」のようにひらくのに、漢字になっていたのは読んでいて新鮮でした。ライブラリー・オブ・ザ・イヤーの「良い図書館を良いと言う」に倣って漢字にしたのだと思います。

ほぼ全員の顔も名前もお店も土地もわかるので、読んでいてめちゃくちゃおもしろかったです。

見れば見るほど、読めば読むほど、味わい深い作品だなと思いました。

そして、あまりにもおもしろすぎたので、『ライブラリー・オブ・ザ・イヤー選考委員長の日記』刊行記念イベントをやることにしました。みなさんぜひ遊びにきてください。

日時:10月10日(木)18:00~19:30(17:30開場) 

場所:FOLK FOLK coffee

参加費:500円+1ドリンク

登壇者:岡野裕行・加藤優・岡村真衣

詳しくはこちらのリンクから!

『ライブラリー・オブ・ザ・イヤー選考委員長の日記 二〇二二年』岡野裕行(2024,散策舎)もこちらからご購入いただけます。


いいなと思ったら応援しよう!