【手品師10人に取材してみた!あなたの40分をわたしにください。No.10森下洋平さん】


【手品師10人に取材してみた!あなたの40分をわたしにください。No.10森下洋平さん】


この企画は、いま気になっている手品師さん10人に、好きなモノやコトなど知りたいことをLINEのチャットで40分間取材するものです。


今回は、手品史の研究をしている森下洋平さんを取材しました。


【森下洋平さんプロフィール】
Twitter:https://twitter.com/jugemu3
森下洋平さん作品集:http://nise-gallery.com/
武蔵野美術大学造形学部卒。手品史研究者。1903~04年の松旭斎天一一座の欧州巡業の実態と演目を現地に残る新聞記事等を掘り起こし、第一回奇術史研究会で登壇。
また、「架空」のニュースや地図、選手名鑑、寄席芸人を作成。リトルプレスとして「B&B」(下北沢)、「百年」(吉祥寺)、「ジュンク堂」(池袋本店)など全国の書店等で販売中。



(岡村)​では、よろしくお願いします!

(森下さん) よろしくお願いします!

(岡村) Twitterで見た森下さんのプロフィールに「手品史研究」と書かれていて興味を持ったのが始まりなのですが、そこから森下さんを調べていくうちに大学卒業論文「手品という虚構表現 娯楽と視覚芸術の比較から」を見つけまして。読みたいのですが、どうも探しきれなくって...。読んだ人の感想は公開されてたんですけど、なかなか本文に辿り着けなくって。読みたすぎてくらくらしてるんですけど、どこかで公開してたりしますか?

(森下さん) かなり昔のやつですね...。前は和泉圭祐さんのブログで配布していただいていましたが、いまはないと思います。

(岡村) ですですー、そのサイト見ましたー!すっごく面白そうで!2011年に発表されたんですか?

(森下さん) 2010年度に書いて、提出が2011年でした。

(岡村) なるほどー!

(森下さん) いま思い返すともの凄く恥ずかしいエッセイみたいな感じです...。いくつかの先行研究を読んで、それをまとめ直すと言う作業を「論文を書くことだ」と勘違いしていた節があります。

(岡村) もう公開はされないんですか?

(森下さん) 今はしてないですね...。データを探してみて、見つかればお送りします。

(岡村) やったあー!ありがとうございます。

(森下さん) 内容は期待しないでください!

(岡村)​楽しみです~!えっと、手品に興味を持ち始めたはなぜですか?

(森下さん) きっかけはテンヨーでした。

(岡村) 天下のテンヨーさま!

(森下さん) おもちゃ屋さんで「バイオショック」を見かけて。

(岡村) ふむふむ。

(森下さん) お年玉で買う皆さんと同じパターンで...。

(岡村)​へへへ、あのわくわく感いいですよね(笑)

(森下さん)  いいですよねー。それきっかけで、毎日図書館に通って手品の本を探していました。

(岡村)​なるほど〜!手品史を研究しようと思ったのはなぜですかー?

(森下さん) 松田道弘さんの本や『ターベルコース』が図書館にあって、そこに歴史について詳しく書かれていたのがきっかけです。

(岡村)​なるほど〜!図書館きっかけなんですね!

(森下さん) あと、前川道介さんの『アブラカダブラ奇術の世界史』という本ですね。

(岡村) へー!いいですね!

(森下さん) 元々歴史が好きだったので、いろいろ探して読みました。大学でデザインと博物館学を学んだことと、自分が「演者としてはあまり才能がないな...、でも手品に長く関わりたいな」というのも理由でした。

(岡村) なるほどー!手品本を探すコツとかってありますかー?

(森下さん) やはりいまは検索ですかね。デジタルアーカイブや目録を徹底的に探します。

(岡村) どういったキーワードで探しますか?

(森下さん) 手品について書かれた本は「手品」と入力すればすぐ見つかるのですが、広く演芸や演劇に関するものに以外と関係の深いものが多いです。例えば寄席とか。

(岡村)  なるほど〜!図書館的にいうと7類ですね!わたし図書館がすきで。「図書館と手品」がすきなんです。

(森下さん)  Twitterからものすごく伝わってきます(笑)

(岡村) お恥ずかしいです〜(笑)図書館と手品の共通点ってなんだと思いますか?

(森下さん) 変な答えかもしれませんが、「いろいろな角度から楽しめる」ところでしょうか。

(岡村) 例えばどんな角度がありますか?

(森下さん) 入り口といったほうがいいかもしれません。「歴史」もあり、「トリック」もあり、「演出」もあり...いろいろな入り方・探し方があって、それぞれを行き来することもできる。例えば図書館で本を探していて、たまたま隣の本棚を見て興味が移ったり、意外な著者同士が知り合いだったりしますが、手品も同じで、カードとステージで似た技法や歴史に気づいて関心が広がっていくのは、すごく感覚的に似ている気がします。

(岡村) なるほど〜!面白いですね!手品の歴史を研究するときに役に立った本とかってありますか?

(森下さん) 松山光伸さんの『実証・日本の手品史』と河合勝さん・長野栄俊さんの『日本奇術文化史』は必読だと思います!日本に関してはこれだけ読めば十分とも言えるくらい重要な本です。

(岡村)​なるほど、いいですね!

(森下さん) それ以前の手品史に関する本も優れたものは多いのですが、中には間違いや検証のないものが多く...。

(岡村) ふむふむ。

(森下さん) 一次史料にきちんと当たって検証している点で、この二冊は衝撃的でした。

(岡村) あー、確かにー。すごくわかりやすい説明!!!

(森下さん) 手品史に関しては、芸能史の倉田喜弘さんの本がかなり参考になります。

(岡村)​読んでみます!

(森下さん) あと川添裕さん、神山彰さん。

(岡村)​ふむふむ。どんどん出てきて面白いです〜!楽しい(笑)

(森下さん) それと最近は長谷正人さん、草原真知子さん、大久保遼さんといったメディア研究している人ですね。幻灯機と手品の関係とか、かなり面白いのでおすすめです。

(岡村)​ほう!面白そう!手品と相性良さそうですね(笑)

(森下さん) 明治時代のマジシャンが寄席で映画を見せたり、マルコ・テンペストのような映像と組み合わせた手品を大正時代にやっていたり、今見ても面白い時代だったようです。

(岡村)​はーーーー、すごく興味深いです!

(森下さん) いまそのあたりは長野栄俊さん、河合勝さんと一緒に本に書いているので、完成したらぜひ読んで見てください。

(岡村) わぁ!買いますー!すごく面白そうです!

(岡村) 手品史研究を始めて、なにか自分の中で手品について変化したこととかありますか?手品に対する印象とか...。

(森下さん) シンブルや四つ玉、いろんな手順がいつ日本に入って誰の影響を受けて、というのがわかると、いま演じている人の演技がより面白く見えるようになりました。

(岡村)​ふむふむ。

(森下さん) どうしても自分含めてタネをメインにマジシャンは語りがちですが、「手品が芸能としてどう観客に受け入れられてきたか」を歴史から知ると、ますます手品が好きになるというか。

(岡村) お客さんとして、どういう手品の見方をしてますか?手品を見るときの着眼点のようなものがあればお聞きしたいです!

(森下さん) お客さんとしては単純に騙されてます!

(岡村) へへへ、楽しいですね!

(森下さん) 海外だとトミー・ワンダーと、あとカール・クロティエという人が好きで、何回見ても楽しいです。

(岡村) あー!いいですねー!

(森下さん) いいですよね!あとは使う道具を見てしまいます。

(岡村)​ほうー、使う道具ですか?

(森下さん) 「カップ・アンド・ボール」も、日本だとお椀だったり、茶碗だったりしますが、海外だと豪華な銀製だったり...。

(岡村) ふむふむ。

(森下さん) 地域性や時代性をついつい見てしまいます。

(岡村)​面白いですねー!

(森下さん) いまだと紙コップとかスタバのカップだったりしますし。

(岡村) たしかにー!

(森下さん) 時代と文化が見えるのが楽しいです。

(岡村) なるほどー!「その手品の背景にあるもの」って感じがして面白いですー!

(森下さん) まさに手品の歴史から発展して、「手品の文化史」というのがこれから研究していきたいところです。

(岡村)​わぁー!すごく面白そうですー!いいですねー!手品に広がりが見えますー!

(森下さん)  いいですよねえ。江戸時代から続くリンキング・リングが今も地域の奉納芸に息づいているとか、これは大道芸の研究者が発見したのですが、そういうのも楽しいです!最近、藤山新太郎さんもブログに書いてらっしゃいましたね。

(岡村)​あー!いいですねー!とっても面白そうです〜!

(森下さん) まだまだわからないことだらけです…!

(岡村) へへへ〜!そろそろ時間なので終わってしまうのですが、お話聞けてとっても楽しかったです!ありがとうございました!

(森下さん) ありがとうございました。

(岡村) いえいえ、とんでもございませんっ!すごく面白かったですー!

(森下さん) 面白かったです!



【森下洋平さんを取材してみて】

「手品史を研究している」という方はいったいどれくらいいらっしゃるのでしょうか。数少ないであろう研究者の方に直接お話を伺えて本当にうれしかったです。どのお話も面白かったのですが、特に手品に関する著書紹介や歴史のお話は興味深かったです。わたしも手品を俯瞰し、大きな歴史の1つとして研究したいと思いました。もしまた機会があれば「現代手品師をどう見るか」というテーマでお話を伺いたいなと思います。後日送っていただいた「手品という虚構表現 娯楽と視覚芸術の比較から」は後世に残したい手品研究だと思いました。(図々しくお願いしてほんとに良かった!)
森下さんの作品集「二瀬画廊」(http://nise-gallery.com/)も必見です。

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