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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険Ⅺ

「木々を眺めておりますと、腹の虫がぐう、と鳴りました。青年はわたくしを見てから、テーブルの上に置かれた布の包みを開けました。中には木の葉の包みがあり、更にそれを開きますと、太い木の根を輪切りにして、炙って焼き目をつけたようなものが入っておりました」

「青年は1個手に取り、そのままがぶりとかじりつきました。そうしてもう1個をわたくしに持たせたのであります。わたくしも青年を真似て、そのままかじりつきました」

「見た目に反して柔らかく、ほくほくした食感で土臭さは全くありませんでした。塩味とでんぷん質の甘さを感じ、後味にかすかな動物質の脂のような風味がありました」

「わたくしは差し出されるまま、4切れ続けて食べました。そのあと手に持った5切れ目を指さし、『これは何ですか?』と尋ねてみました。もちろん、青年にこちらの言葉は通じているようには見えませんでしたが、かの人はわたくしを見て少し考えた後、わたくしの手の先にあるものを一緒に指さし、『芋』と答えてくれました」

「わたくしが『芋』と言って手に持った芋を口に入れると、青年は嬉しそうな顔をしていました。そうして次に、昨夜出してくれたものと同じジョッキを出し、指さして『茶』と言いました。芋をのみ込んだわたくしも『茶』と言ってジョッキを受けとり、茶を飲みました」

「わたくしも青年も、交流への手がかりを持ったような心持ちでありました。その後わたくしは部屋の中にあるものを次々に指さし、名前を尋ねました。青年は一つ一つ、わかりやすい発音で教えてくれました」(続)


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