見出し画像

ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険ⅩⅫ

「展望台から一つ下の階層は、図書館になっておりました。人口は定かではありませんが、決して大きくはない村に比べて、ずいぶん立派で蔵書も豊富にあるようでした。図書館には製紙屋と文具屋、写本屋が付いておりまして、子どもたちが勉強する時などは、ノートやペンを買っていくのでありました」

「村には学校はありませんでした。村長に尋ねたところ、村長が各家に声をかけて集めた子どもたちに、古老達が分担して読み書きや算術、法律の基礎などを教えるそうです。『法律を子どもが学ぶのですか』とわたくしが驚いて言いますと、シダー氏は『年長の子どもになると、子どもたちだけで外に出る機会が多くなるからね。社会のルールを知っておくことは、他の村との対立を避けるためにも必要なことだ』と当然のように話しておりました」

「図書館から幅の広い廊下が伸びておりました。道は緩やかなカーブを描き、螺旋状になって幹を降りていきます。居住区によく似た作りでしたが、ここでは家の代わりに、店が並んでおりました」

「木でできた山刀や斧、葉を丸めたランタン、蔦のロープなどを扱う野良仕事道具の店、弓矢や銛など、狩猟の道具を扱う店などが品物を広げておりました。面白いのは楽器屋であります。ところどころから葉のついた枝が伸びる、木製の弦楽器や管楽器のようなものが売られておりました」

「わたくしが帝国て使われている楽器のことを話すと、シダー氏は『昔は死んだ木を使っていたらしいけど、この店の楽器はデクなんだ。弦や管の振動をデクがとらえて、何倍にも増やして響かせるんだ』と話し、板に6本の弦が張られた楽器を借りてきました。楽器を優しく爪弾くと、大きな音になってデクのうろ穴からはき出されてくるのでありました」(続)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?