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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険ⅩⅩⅥ

「早めの夕食を済ませると昇降機に乗り、村長と一緒にデクの厩舎に向かいました。これまで入ったことのない『チウガタ四』と書かれた扉を開き、中に入りました」

「シバテンやツチグモよりも倍近く大きな六本脚のデクが一体、部屋の中央に立っておりました。足は短く、胴体は長細く、蛇かミミズのような印象を持ちました。頭の部分には乗り手が入るためのうろ穴があり、胴の部分にもいくつか穴が空いておりました。尻尾の先からは葉の繁る枝が無数に伸びておりました」

「わたくしがそのデクをまじまじと見ておりますと、シダー氏が『これはイヅナという、中型のデクだ。これに乗って都に向かう』と説明しました。都に着くまでどれくらいの時間がかかるのかと尋ねると、日中進んで夜は休み、ひと月ほどかかるとのことでした」

「今回は村長は直接イヅナを操ることはしないようでした。シダー氏はわたくしを促してデクの背中にある穴に座らせました。トランクの確認をした後、シダー氏もデクの背中の穴に入りました。作業を終えた頃、イヅナを操る役の初老の男性が部屋に入ってきました。男性は自らのトランクをデクの背中に載せ、部屋の中を見回して指さし、確認を済ませると、イヅナの頭に乗りました」

「デクがぶるり、と身震いすると、樹の外に向かう扉が大きく開きました。扉から森が見え、夕陽が射して木々の葉がきらめいておりました。私たちを乗せたイヅナは村から顔を出すと、滑るように森の中に入っていきました」(続)

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